先週、中国各地で大規模な集団抗議が相次いで発生しました。わずか4日間で少なくとも21件の抗議行動が確認され、その対象は賃金の未払い、土地の権利を巡るトラブル、強制立ち退き、通学区域の不公平、医療・社会保障制度の不備など多岐にわたります。こうした動きは、低所得層を中心とする不満や焦燥感が自発的なメディアやネット動画を通じて広がっており、中国社会が抱える深層的な矛盾を浮き彫りにしています。
抗議の記録をまとめているSNSアカウント「昨日」および「李老師不是你老師(以下、李先生)」によれば、今回の抗議の波は6月16日以降、広東、福建、湖南、山東、陝西、山西、河北、江蘇、貴州、青海、甘粛、湖北、北京、上海など、10以上の省市に拡大しています。
記者の集計によると、抗議行動の多くは企業による賃金未払い、福利厚生の削減、住宅の権利保護、強制立ち退きへの反発、さらには陳情活動への弾圧などが発端となっています。広東省在住の劉姓の弁護士は6月23日、「4日間で20件を超える大規模な抗議が相次ぐのは異例の事態です。これらの動きは現在の経済悪化を背景としており、特に農民工の収入や権利が深刻に搾取されていること、労働者の生活が著しく圧迫されている現実を反映しています」と述べました。
福建省福清市では、30年以上の歴史を持つ香港系企業「祥興カバン会社」が10か月にわたり賃金を支払っておらず、6月17日から19日にかけて数百人の女性労働者が連日ストライキを行いました。SNSに投稿された映像では、労働者たちがスローガンを叫びながら福清市政府の前で集団で陳情する様子が確認されました。会社側は最終的に抗議の圧力を受け、1か月分の給与を先に支払うと約束しました。
同様の事例は、山東省青島市の造船所、陝西省西咸新区の物流施設、湖南省祁陽市のホテル、山東省の建設会社、陝西省興平市の倉庫、広東省潮陽区の農村地域、山東省東営市のホテルなど各地で確認されています。多くのケースで3か月以上にわたって賃金の未払いが続いており、影響を受けた労働者の数は数十人から数百人にのぼります。
深圳市出身で元NGOメンバーの王さんは「6月以降、東莞、中山、佛山などの都市でも、労働者による権利主張の動きが相次いでいます。例えば、長安鎮の労働仲介業者が派遣労働者の給与の半額近くを中抜きしていた件や、錦輝プラスチック工場で長期にわたり給与未払いが放置され、行政が介入を拒んだケースもあります」と語りました。
医療分野でも不満が噴出しています。6月17日には、陝西省渭南市の第二病院に勤務する職員がSNS上で、「病院から3か月間給与が支払われていないうえ、社会保険や住宅積立金も支給されていない」と告発。非正規職員が財政的に切り捨てられる実態が大きな共感と議論を呼びました。
さらに、土地や住宅を巡る抗議行動も激化しています。6月中旬、河北省邢台市平郷県の複数の村では、住民が「政府が何の通知も出さずに家屋を強制的に取り壊した」と主張。中には建設途中の家屋や100万元(約2000万円)以上を投資した新築物件もあり、住民の怒りは頂点に達しました。ある家族は重機の前に立ちはだかって作業を止めようとしましたが、安全への懸念から最終的に撤退を余儀なくされました。
6月19日夜には、山西省太原市の住宅地「富力天禧公館」の住民が、不動産証の未交付、予定されていた学校の建設中止、そして消防設備の不備などに抗議し、道路を封鎖しました。現場は警察によって厳重に封鎖され、住民の一人は「何年も声を上げ続けてきたが、開発業者は何度も約束を反故にし、政府も取り合おうとしない」と訴えました。
広州市白雲区の夏茅村でも、6月16日に強制立ち退きを巡る住民と警察の衝突で負傷者が出ました。陝西省咸陽市の住宅団地では、学区割り当てに不満を持つ保護者たちが道路を封鎖して抗議し、複数人が暴行を受けて拘束されました。
抗議者の中には制度の枠内での解決を目指した人もいましたが、多くが警備員や警察による強硬な対応に直面しています。6月16日、上海市の就業促進センター前では、「外来人口総合保険」に加入していた市民が、制度変更に伴う保障縮小に抗議しました。現場では警備員による暴力行為が確認されました。また、上海市の建設現場では労働者たちがバケツを叩いて賃金の支払いを訴え、杭州では屋台を警察に強制撤去された映像がSNSに投稿されています。
江蘇省南通市では6月13日、高校2年生の男子生徒が教師の暴言に耐えかねて自殺を図り、遺族が校門前で3日間にわたり抗議を続けました。15日には警察が現場を強制排除し、複数人が拘束。生徒の祖父母と地元住民は同日夜に町役場を訪れましたが、誰も責任ある対応を示しませんでした。
こうした情報は、多くがWeChatや小紅書(RED)、抖音(Douyin)といったSNSに動画として投稿されたものです。投稿はすぐに削除されることが多いものの、「昨日」や「李先生」などのアカウントによって再投稿され、情報の流通は絶えません。6月19日には、貴陽市で都市管理職員が物売りに「当たり屋」行為を仕掛け、逆に地面に引きずられる様子が話題となり、「ネット世論の操作も意味をなさなくなっている」と皮肉る声も上がりました。
西安市の元テレビ局記者、董舒氏は取材に対し、「多くの人々はすでに制度的なルートを試した上で、最後の手段として公開抗議を選ばざるを得ない状況にある」と指摘し、「このような背景では、かつての楊佳事件のような過激な行動が再び起こりかねません」と警鐘を鳴らしました。さらに、「わずか4日間で21件もの中〜大規模な抗議行動が発生する事態は、単なる偶発的な問題ではありません。経済の停滞、法の形骸化、言論の制限といった複合的な要因の中で、草の根社会に蓄積された不満が臨界点に達しつつあります。中国の強権的な統治モデルは、かつてない試練に直面しているのです」と語りました。
(翻訳・吉原木子)
