最近、ロシアの諜報機関の背景を持つSNSアカウント「GeneralSvr(ジェネラルエスブイアール)」が、中国の政治情勢に関する情報を連続して発信しています。6月9日に習近平の重病説を報じたのに続き、6月12日には中国にすでに新たな指導者が誕生している可能性があると投稿しました。一方、中国共産党(以下、中共)の公式メディア「新華社通信」が相次いで過去の日付の文書を発表し、異常な動きが注目されています。
ロシア発の暴露:中共最高指導部がすでに交代した可能性
6月12日、ロシア情報機関系のアカウント「GeneralSvr」がX(旧Twitter)に投稿し、「クレムリンは米・イラン核合意を破壊しようとしている、ポスト習近平時代の中国」と題した内容を公開しました。その中で、プーチン大統領が米・イラン双方を操作する目的で核合意を崩そうとしており、その背後で中国とロシアが密かに連携し、イランに対してトランプ政権の交渉条件を拒否するよう促していると述べています。
GeneralSvrは「プーチンの政策は成果を挙げたが、習近平の健康状態がこの陰謀の中で最も脆弱な部分だ」とし、ロシア政府に提出予定の報告書の内容として「中国では権力交代が起こる可能性があり、新たな指導者は習近平らよりも自由主義的である可能性が高い」と記しています。
この新指導層は、重要な国際問題において西側諸国と合意に達する可能性があり、ロシアやイランの利益を損なう恐れがあるとしています。
これに先立ち、General Svrは6月9日に、「ロシア対外情報庁が受け取った報告によれば、習近平は5月25日から26日の夜にかけて心臓発作を起こし、6月の第1週には2度にわたり狭心症を発症した」と暴露しました。また「中国の一部指導層はすでに習近平の罷免を決定している」とも伝えられています。
新たな中国指導者は親西側をロシアが懸念
この暴露の背景は中東情勢の悪化です。AFP通信によると、アメリカがイラン核合意に対して信頼を失いつつあるなか、イランは紛争が起きれば米軍基地を攻撃すると警告しています。米国防総省は、バーレーンの海軍基地に駐留する兵士の家族に対し、自主的に撤収することを認めました。
時事評論家の唐靖遠(とう・せいえん)は、「中東における混乱をイランに引き起こさせ、アメリカとイスラエルの注意をそらすこと」は中露の戦略的協力の重要な一環だと分析しています。リークの内容から、ロシア側は、新たな中国指導者の過去の言動や政策から見て、親西側でロシアから距離を置く可能性があると判断しているとのことです。
「中露関係や中イラン関係には大きな変化が起きる可能性がある。なぜならこの新たな指導者は極めて親西側的であるからだ」と唐靖遠は述べました。
今回の暴露では新指導者の名前は明かされていないものの、改革開放路線、すなわち団派や鄧小平路線に近い人物ではないかと推測されています。「この暴露は、習近平退任・汪洋登用という噂を裏付けるものだ」とする声もあります。
新華社通信の異常な動き 改革派が再び優勢に?
米国のシンクタンクの専門家である章家敦(しょう・かとん)は、最近のインタビューで「中国政府内部で何らかの出来事が起き、習近平がすでに権力を喪失しているのではないかと懸念している」と述べました。
新華社通信は、最近「中共中央」および「国務院」の名義で、過去日付の政策文書を相次いで発表しています。6月10日には、「深セン総合改革試験の深化、改革と開放の推進に関する意見」と題した文書を掲載しました。日付は「2024年8月30日」となっていました。
この文書では「新たな改革措置の導入、革新的試みの実施、開放政策の深化」を掲げ、「複製可能・普及可能な新たな経験の創出」を強調しています。
評論家の鐘原(しょう・げん)は、「この文書は2024年の三中全会後に策定されたものである可能性が高く、当時の習近平の独裁志向とは一致していない」と指摘しています。
実際、2024年8月29日に習近平は党中央改革委員会の会議で「党中央による改革の集中統一指導を堅持し、報告制度を厳守する必要がある」と強調していました。
鐘原は、「長らく棚上げにされていた文書が突如発表されたのは、改革派が党内闘争で優勢に立った証であり、中共の上層部で重大な権力交代が起きた可能性がある」と分析しています。
民間企業「規制緩和」か? 実態は引き続き統制強化
新華社通信はまた、5月26日に「中国特色の現代企業制度の改善に関する意見」という別の文書を発表しました。この文書の日付は「2024年9月21日」とされており、次のような方針が示されています。
「党委委員による重大事項の討議・決定の境界を明確にする」「党が幹部や人材を管理することと市場メカニズムとの融合モデルを模索する」「非公有制企業における党の建設を強化する」などが明記されており、党組織と企業の経営陣の間で「意思疎通や協議、懇談」を実施するよう提案しています。
鐘原は、「この新たな文書は一見すると民営企業への規制緩和を示唆しているように見えるが、実際には文中の内容が矛盾に満ちており、中国経済が抱える問題に対する中南海の新たな指導層の苦悩と限界を浮き彫りにしている」と指摘しています。
鐘原はまた、「習近平氏の統治理念と相反する内容の『過去の日付』の文書が集中的に発表されていることは、中共の新たな指導層が政策転換のシグナルを意図的に発している可能性を示している」と述べました。しかし「中共政権が存続する限り、国有企業への統制を本当に解くことはあり得ず、誰が党のトップになっても根本的な変化は望めない」とも強調しました。
軍報の微妙な表現 「政権交代」示唆の可能性も
6月2日には、中共軍報が「革命軍人の忠誠心を磨け」と題した記事を発表しました。記事全体は軍の忠誠に関する内容でしたが、「軍委主席責任制」や習近平の名前は一切登場せず、コメント欄には短文の「水田に苗を植える、時機に応じて行動せよ」といった内容の補足が掲載されました。
唐靖遠は、「中共の宣伝メディアは『上下呼応』の表現技法をよく用いる」とし、この記事では「軍人の忠誠心も時流に合わせて調整すべき」と暗示していると分析しました。
「かつては習主席に対する忠誠が求められたが、今後は『植え替え』を行うべきという含意だ」と唐靖遠は指摘しています。
陝西省で550人が連名 習近平政権下での冤罪急増を告発
6月9日には、中国の人権団体「維権網(いけんもう)」が「陝西省の請願者による前国家指導者胡錦濤(こ・きんとう)、汪洋宛ての連名書簡」を公開しました。この書簡には550人の陝西省住民の署名があり、習近平政権下で同省が「法の及ばぬ地」と化し、冤罪が激増していると訴えています。
書簡では、「2013年以降、当局に通報し続けてすでに10年以上が経過したが、いまだに一件も立件されていない。通報者は逆に報復を受け、軽い場合は公職追放・給与差し止め、重い場合はでっち上げの罪で投獄され、負傷・後遺症・死亡に至る例すらある」と記されています。
胡錦濤や汪洋はいずれもすでに引退した中共の元高官であり、習近平とはまったく異なる統治思想を持つ人物です。
この事件は改めて、習近平がすでに政権を退いたのではないかという外部からの疑念を呼び起こし、その失脚をめぐる臆測を裏付ける材料ともなっています。
(翻訳・藍彧)