最近、中国各地で「目の充血」「異常な分泌物」「視界のぼやけ」などの症状を訴える国民が急増し、新型コロナウイルスによる新たな感染形態ではないかとの不安が広がっています。中国当局からの公式発表はないものの、SNSでは感染を訴える国民や医師の投稿が相次ぎ、あるネットユーザーは「これは新しい変異株の兆候だ」と指摘しています。都市部の病院はすでに患者であふれ返っており、専門家からは「ウイルスの感染力が再び高まっている」との警告も出されています。
各地で共通症状の患者が急増
中国の動画共有アプリ「ティックトック」などのSNSには、4月下旬以降、「喉の痛みと結膜炎のような症状が同時に出た」との投稿が急増しています。
甘粛省(かんしゅくしょう)のネットユーザー「小七(しょう・しち)」は、4月29日に投稿した動画で「27日から左目に黄色い分泌物が出始め、翌日には目が赤く腫れあがった。29日には右目にも同様の症状が出て、喉も激しく痛む。夜になると症状が悪化して、本当につらい」と訴えています。
彼が病院に行ったところ、「待合室にいたほとんどの人が同じような症状だった」といいます。コメント欄には「私も同じ」「うちの家族も」といった声が相次ぎ、症例が全国的に広がっていることがうかがえます。
河北省のネットユーザーは、「息子が最初に喉を痛がり、目が腫れて開かなくなった。しばらくして自分も同じ症状に。これは確実にウイルスだ」と書き込みました。抗生物質も点眼薬も効果がなく、CT検査では肺に結節が確認されたといいます。
河南省のあるネットユーザーは、「喉の痛み、目の赤み、分泌物が多く、右目から始まって数日後には左目にも広がった。もう1か月も繰り返している」と述べています。山東省の住民からは「家族4人全員が順番に発症した。最初は子どもが緑色の目やにと咳、次に親が喉の痛みと鼻づまり、最後には生後数か月の赤ちゃんまで感染した」と語られています。
陝西省の別のネットユーザーは、「発症して4〜5日目に目が赤くなり、まるでウサギの目のよう。喉の痛みはまるで刃物を飲み込んだようだ」と記しています。
湖南省のある母親は、切迫した様子で「私と2歳の息子が喉の痛みと結膜炎にかかっている。朝は目が目やにで固まって開かない」と訴えています。
北京、浙江省、広東省、山西省など他の地域からも類似の報告が後を絶ちません。「症状の出る順番はだいたい同じ。喉が痛くなってから目に来る」という共通点を挙げる人もおり、河北省のネットユーザーは「これはただの風邪ではない。明らかにウイルスの変異だ」と疑念を口にしています。
医師が警告「新型コロナは眼にも症状を引き起こす」
5月23日、河北医科大学第二病院の眼科で主治医を務める崔莉(さい・り)医師は、ティックトックで動画を投稿し、「最近、いわゆる『新型コロナ眼病』の患者が急増しており、従来の細菌性結膜炎とは明らかに異なる」と警鐘を鳴らしました。
崔医師によれば、このようなウイルス性の目の病気は新型コロナウイルスの感染によって引き起こされるもので、結膜炎や角膜炎、網膜の障害などを招くこともあるといいます。彼女は動画の中で、「目の充血、かゆみ、涙目、分泌物は水や米のとぎ汁のような状態、視界のぼやけや目のけいれんといった症状が現れ、重症化すれば急性網膜神経障害(AMN)に至るケースもある」と述べました。
また、これらのウイルス性眼病は、しばしば発熱・喉の痛み・咳といった上気道感染症の症状を伴うため、細菌性と見分けがつきにくいことも指摘しています。「自己判断で薬を使うのではなく、早めに医療機関を受診してほしい」と注意を呼びかけました。
情報規制の中で不安広がる、国民はSNSでしか知る術なく
2022年に中国が「ゼロコロナ政策」を解除して以降、新型コロナウイルスに関する情報公開は次第に抑制されるようになりました。特に2024年後半には、ノロウイルス、デング熱ウイルス、そして新型コロナウイルスなど、さまざまな感染症が同時に流行しました。
2025年に入ってからも、オミクロン株を含む新型コロナウイルスの変異株、マイコプラズマ肺炎、A型インフルエンザ、人に感染する鳥インフルエンザ(H5N1)など、複数の呼吸器疾患が同時に拡大し、医療現場に重くのしかかっています。
中でも今年2月には、A型インフルエンザが猛威を振るいました。北京や上海など主要都市を含む各地の病院には患者が殺到し、待合室は常に満杯の状態が続いています。SNS上には火葬場の前に長い列ができているという報告もあり、河北省石家荘市では棺の品薄や価格高騰も伝えられています。
しかしながら、中国当局は、ウイルスの感染状況や特徴、重症化率といった重要な情報について、いまだに公表を控えています。特に、4月下旬以降に複数の省で報告されている「眼の症状を伴う新型コロナ変異株」について、中国当局からは一切の情報発信がありません。そのため、国民はネット上の口コミや自身の経験から感染症の兆候を察知するしかない状況に追い込まれています。
この情報隠蔽に対して、国民からは不満と不安の声が高まっています。あるネットユーザーは「ただの結膜炎で家族全員に感染するなんてありえない。明らかに異常だ」と書き込みました。
北京のある市民は、「今はもう病院に行くより、ティックトックで病気の知識を学んだ方が早い。病院に4時間並んでも、出されるのは消炎薬だけ。症状はまったく良くならない」と投稿しています。
専門家も変異の可能性を警告「感染範囲は呼吸器だけにとどまらず」
中国工程院(ちゅうごくこうていいん)の院士である李蘭娟(り・らんけん)氏は、2023年の時点で「新型コロナウイルスは依然として世界的に流行しており、変異の可能性も十分にある」と指摘していました。
医療界でも、新型コロナウイルスの影響が呼吸器にとどまらず、眼や神経系、心血管系にも及ぶ可能性があるとの認識が広がっています。2022年に中国の『中華眼科雑誌』に掲載された研究では、新型コロナウイルスが涙液や結膜を介して眼組織に侵入し、ウイルス性結膜炎を引き起こすことが確認されました。この見解は国際的な医学論文でも裏付けられています。
SNS上に投稿された写真や動画では、各都市の大規模な総合病院の外来受付が患者であふれている様子が映し出されています。とりわけ、呼吸器や眼に関わる症状が集中しており、眼科、耳鼻咽喉科、発熱外来には長蛇の列ができています。
このような現状に対し、医師たちは「国民の多くが症状を軽視しがちだが、ウイルス性結膜炎は感染性が強く、早期治療が重要だ」と警鐘を鳴らしています。
(翻訳・藍彧)
