近年、中国では極端な天候が頻発しており、高温、豪雨、鉄砲水、雹、強風、砂嵐などが立て続けに発生しています。南北で異なる災害が交互に起こり、洪水と干ばつが同時に進行する状況となっています。人的被害や物的損失は深刻化し、国民の生活と安全に大きな脅威をもたらしています。
5月23日未明、広西チワン族自治区桂林市の龍勝各族自治県で、突如として鉄砲水による土石流災害が発生し、10軒の住宅が流されました。現地は典型的な渓谷地形で、山の起伏が激しく傾斜も急であるため、水流は非常に速く、洪水は巨大な岩や倒木を巻き込んで下流へと襲いかかり、沿線の道路はほぼすべて寸断されました。5月25日18時時点で、行方不明となっていた8人のうち6人の死亡が確認され、残る2人の捜索が続けられています。
災害発生時、住民たちはまさに生死を分ける一夜を過ごしました。住民の周さんは、当時2階で母親と寝ていたと振り返ります。突然の濁流により1階は一瞬で破壊され、2階部分も数秒のうちに約20メートル下流に流されました。彼女は別の部屋で軽傷を負った母親を見つけました。室内には割れたガラスが散乱しており、身動きが取れず、夜が明けるまでその場で救助を待つしかありませんでした。午前5時過ぎ、ようやく救助隊が到着し、2人は無事救出されました。近所の住民は、懐中電灯で外の様子を確認した際、周さんの家が一瞬で濁流にのまれ目前に迫ってくる様子を目の当たりにし、あまりの急激な展開に言葉を失ったと語っています。
また、中国西北部の甘粛省蘭州市では、5月24日午後に激しい強風と砂嵐に見舞われました。現地気象台は15時58分に雷雨・突風に対する注意報(黄色警報)を発表しました。複数の動画によると、蘭州市内および周辺地域は黄砂を伴った突風に包まれ、建物のトタン屋根が吹き飛ばされ、自転車や大型テントが空中を舞い、大木さえも根こそぎ倒れるなど、街全体が混乱状態に陥りました。
市内の西固区 寺児溝住宅区では被害が特に深刻で、マンションの外壁が剥がれ、下に停めておいた車に落下し破壊しました。映像には、白い乗用車のボンネットとフロントガラスが破損している様子が映っており、幸いにも車内には人はおらず、負傷者は出ませんでした。現地の警察もこの事故を確認しています。
5月22日には、湖北省 武漢市が突発的な豪雨に見舞われ、市内各所で冠水が発生しました。中国公式メディアの報道によると、複数の道路が最大70センチ以上の浸水によって交通麻痺し、武漢市気象台は暴雨に対して特別警報(赤色警報)を発令しました。武昌駅周辺では道路がほぼ水没し、一部の保護者は子どもを迎えに行くため、ゴムボートで幼稚園まで向かうという異常な光景も見られました。
同日、貴州省畢節市大方県 果瓦郷 慶陽村では山体崩壊が発生し、8世帯19人が土砂に巻き込まれました。救助隊は当日夜、2人を救出しましたが、いずれも命を落としていました。
一方、安徽省阜陽市では、5月22日に「50年に一度」とされる記録的な大雨が降り、最大降水量は242.8ミリに達しました。
中国気象網の最新予測によると、広西チワン族自治区では今後3日間、雨が断続的に続く見通しです。局地的には雨〜大雨となる可能性もあります。一方で、中央気象台は5月25日18時に干ばつに対する注意報(黄色警報)を発令しました。陝西省、河南省、甘粛省などの地域では重度以上の気象干ばつが進行中であり、今後もその状態が続くと見られています。
南方の洪水と北方の干ばつが交互に発生するという異常気象は、中国全土で深刻な災害の連鎖を引き起こしています。暴雨、山崩れ、強風、砂嵐、干ばつなどが次々と起こる中、自然災害への対応体制が強く問われています。政府の緊急対応能力だけでなく、住民一人ひとりの防災意識や準備も今後ますます重要になってくるでしょう。
気候変動が進む中、こうした災害はもはや突発的な異常ではなく、新たな常態として捉える必要があります。今後の災害に備えるには、予警報システムの高度化、インフラの強靭化、教育と啓発の強化など、多角的かつ継続的な対策が不可欠です。
(翻訳・吉原木子)
