中国の太陽光関連産業、いわゆる「光伏(こうふく)」産業が、過去最悪レベルの決算期を迎えています。現在は2024年の通期決算および2025年第一四半期決算の発表が相次ぐ時期ですが、中国の業界大手6社の2025年第1四半期における合計損失額は100億元(約2000億円)を超えました。

 さらに、2024年通期では、6社合計で300億元(約6000億円)以上の赤字となり、複数の企業が上場以来最も大きな損失を被っています。

 大手6社とは、隆基(ロンジ)グリーンエネルギー、トリナ・ソーラー(天合光能)、トンウェイ(通威股份)、ジンコソーラー(晶科能源)、JAソーラー(晶澳太陽能)、そしてTCL中環です。

 専門家の分析によると、中国の太陽光関連産業は現在、国内と国外の2重の打撃に直面しています。国内では、中国当局が政府補助金制度を段階的に打ち切っている状態であり、国外ではアメリカをはじめとする諸外国が中国製品に高関税を課しています。このまま需要が冷え込めば、2025年の第3四半期には市場の「空白期」が到来し、損失はさらに拡大する見通しです。

中国太陽光産業、最悪の決算期迎える

 2024年4月29日、中国の太陽光パネル大手・隆基グリーンエネルギーが決算を発表しました。それによると、2024年の売上高は825億8200万元、日本円にしておよそ1兆6688億円で、前年比36.2%の減少となりました。最終損益は86億1800万元、約1740億円の赤字に転落し、前年に比べて180%以上のマイナスとなっています。さらに、同時に公表された2025年第1四半期の損失も14億3600万元(約300億円)にのぼり、厳しい業績が続いていることが明らかになりました。

 TCL中環も4月26日に決算を発表し、2024年の売上高は前年比52%減の284億1900万元(約5740億円)、最終損益は98億1800万元(約1980億円)の赤字となりました。業績は過去最悪で、2025年第一四半期にも19億600万元(約385億円)の赤字を計上しています。

 隆基グリーンエネルギーの会長・鐘宝申氏は、財務報告の中で「2024年は、売上が大きく減少し、純損失も拡大した。上場以来、もっとも困難な一年だった」と述べました。

 その要因として同社は、業界全体での供給過剰と過熱した価格競争を挙げており、2023年に比べて製品価格と利益率が大幅に下落したと指摘しています。これにより、営業収入・営業利益・投資収益のすべてが減少し、経営に深刻な影響を及ぼしたとのことです。

かつての輝き失う太陽光産業

 かつて輝かしい成長を遂げた中国の太陽光関連産業は、現在、かつてない苦境に直面しています。かつてこの分野は再生可能エネルギーとして国の保護を受け、発電すれば国家が優先的に電力を買い取り、企業は多額の補助金を受け取ることができました。

 この点について、米国在住の経済学者・黄大衛氏は、「中国の太陽光関連産業は、政府の補助金ありきで経営してきた。そのため、コストを下げる努力を考えてこなかった」と指摘しました。

 しかし2018年以降、補助制度は徐々に縮小され始めました。電力価格の自由化は太陽光発電にも波及し、現在では電力現物市場への完全統合が目前に迫っています。こうした政策転換により、かつての優遇措置は次第に姿を消しています。

 こうした市場化の流れに加え、2024年には太陽光発電業界内での過剰競争が激化し、供給量の急増により供給価格が下落しました。結果として、業界全体にわたり大規模な経営赤字が広がる事態となっています。

 黄大衛氏は、「欧米諸国が中国製品に対するアンチダンピング措置を開始する一方で、中国国内では政府補助金が縮小されている。別の角度から見れば、負担すべき関税が、中国政府からの補助金を上回っている状況だ。こうした中で赤字が発生するのは、避けられない結果だと言える」と述べました。

八方塞がりの中国企業

 中国の太陽光関連産業は、これまでアメリカ市場への輸出に大きく依存してきました。しかし現在、その戦略自体が大きな打撃を受けつつあります。

 アメリカ商務省の統計によれば、2023年にアメリカが輸入した太陽光モジュールのうち77%は東南アジア4か国、すなわちカンボジア、タイ、ベトナム、マレーシアからのもので、その総額は約129億ドル(約1.8兆円)でした。そして、シェアのうちの8割以上を占めるのは、中国企業が東南アジアに設けた生産拠点での製品であり、いわば「迂回輸出」という形でアメリカに製品を供給してきたものと見られています。

 2024年4月、韓国企業Hanwha Q Cellsやアメリカの大手メーカーFirst Solarはアメリカ政府に対し、中国企業の不公正な輸出慣行について訴えました。中国企業が中国当局から補助金を受け取りつつ、原価を下回る価格で太陽光パネルをアメリカ市場に供給し、アメリカの国内産業に深刻な損害を与えていると主張しました。

 約1年にわたる調査を経て、アメリカ商務省は2025年4月21日、カンボジア・タイ・ベトナム・マレーシアの4か国を対象に、太陽光パネルおよび電池セルに対し高い関税を課す方針を発表しました。これは、中国が東南アジアを経由して実質的に輸出を継続している実態に対抗する措置です。

 関税率は極めて高く、たとえばマレーシアに工場を持つジンコソーラーには40.30%、タイのトリナ・ソーラーには375.19%、そしてカンボジアのHounen SolarおよびJintek Photovoltaicには、実に3,521.14%という驚異的な水準が設定されています。

 この措置が正式に発効するには、6月初旬までに予定されている米国際貿易委員会(ITC)の投票で、ダンピング(不当廉売)と補助金によって米国の産業が大きな被害を受けていると認定される必要があります。なお、すでに初期の段階から「米国内産業に実害あり」との判断が出ているとの情報があり、米国企業も中国の迂回輸出にかねてから苦言を呈してきた経緯から、関税が発効する可能性は高いと考えられています。

 中国企業を標的とした高率の関税に加え、トランプ政権は5月初旬、東南アジア諸国に対して「相互関税」を発動しました。
こうした一連の政策により、東南アジアを経由してアメリカ市場に製品を流通させようとする中国企業の迂回輸出戦略は、事実上、封じ込められた形となっています。

諸外国へ転進する中国企業

 東南アジア4か国に生産拠点を構えている中国の太陽光パネルメーカーの幹部は、経済メディア『第一財経』の取材に応じ、次のように語りました。

 「東南アジアでの生産能力の大部分はすでに撤退した。新たな拠点への移転もほぼ完了し、従業員の研修も順調に進んでいる。」

 同社が最初に選んだ移転先は、インドネシアとラオスです。実は、2024年12月の段階で、別の工場の責任者も『第一財経』の取材に対し、こう証言していました。

 「インドネシアとラオスは、まだアメリカの関税対象には含まれていない。」

 太陽光パネルメーカー「Elite Solar」の市場戦略管理センター責任者である庄英宏(しょうえいこう)氏は、『第一財経』のインタビューで、「我が社はエジプトに工場を建てることにした。生産品の多くはアメリカに輸出し、残りはヨーロッパや中東・アフリカに回すつもりだ」と話しました。

 ナスダックに上場するカナディアン・ソーラー(阿特斯陽光電力)の子会社・CSI Solarは4月28日に「より関税が低い地域への生産移転を進めている」と発表しました。

 JAソーラーも同月初めに、「グローバルな生産体制の強化を加速させる。オマーンに新たな工場を設ける計画も進めている」と発表しました。

(翻訳・唐木 衛)