最近、中国で感染状況が再び深刻化しており、社会全体に不安が広がっています。公式に発表されたデータやネット上の数々の証言から、今回の感染拡大は、想像以上に深刻であることが、明らかになりつつあります。「新型コロナ再流行」や「陽性率の急上昇」といった話題が、検索ランキングの上位を占めている一方で、人々をより恐怖に陥れているのは、急死の報告が全国的に相次いでいることです。葬儀場は混雑し、棺桶が品薄になるなど、死を取り巻く異常な現象が、各地で発生しています。
中国疾病予防管理センター(CDC)の発表によると、4月末から5月初旬にかけての第18週、全国の定点医療機関におけるインフルエンザ様症状の患者のうち、新型コロナの陽性率は16.2%に達しました。これは、4月初めの7.5%と比べて2倍以上の増加です。また、入院している重症急性呼吸器感染症の患者の中でも、新型コロナ陽性率は3.3%から6.3%に上昇しました。3週連続で、新型コロナがインフルエンザ様症状による外来患者数の最多を占めています。
しかし、多くの市民や専門家は、こうした公式データの信頼性に疑問を抱いています。その理由は、近年多くの病院で新型コロナの検査が行われなくなっており、実際の感染者数が公表されている数値よりもはるかに多いと見られているからです。
北京佑安病院の感染症科主任・李侗曾(り・とうそう)氏は、「今回の感染拡大は3月から始まり、すでに3か月近く続いています。これは周期的な波の一つと考えられます」と述べた上で、「過去数年の状況を見ても、おおよそ半年から1年ごとに感染のピークが訪れる傾向があり、今回の流行も5月下旬にピークを迎える見通しです」と語りました。
また、中国工程院の院士である鐘南山(しょう・なんざん)氏も、南方系メディア「南方Plus」とのインタビューの中で、「現在流行しているXDV変異株は感染力が非常に強いが、重症化のリスクは比較的低い」と述べました。そのうえで、「新型コロナウイルスが完全に消えることはなく、今回の流行も6月末までには収束する可能性が高い」との見方を示しました。
こうした専門家の見解とは裏腹に、民間でははるかに深刻な実態が語られています。SNSでは「一家全員が感染した」「眠っている間に亡くなった」「街を歩いていて突然倒れた」といった声があふれており、特に“突然死”が全国で広がっているという報告が多く見られます。
動画共有プラットフォーム「干净世界」の人気アカウント「第三の目」は、中国本土のある人口30万人未満の県で、葬儀場の15の遺体安置室がすべて満杯になっていた様子を紹介しました。ある男性は「湖南省長沙から155キロの国道を運転している間に、17か所の家で葬儀が行われていた」と語り、多くのネットユーザーが「中国はすでに“死亡ピーク”に入っている」とコメントしています。
また、河北省石家荘市の住民は「以前は4000元だった棺桶が、今では1万2000元にまで高騰しており、それでも在庫が不足している」と話しています。浙江省の棺桶工場の作業員も「最近は非常に忙しく、残業も必要だし、新しい作業員も雇っています。中年層も若者も、多くの人が亡くなっているのです」と証言しました。
こうした異常な死亡の増加は、中国全土で広がっており、特に注目されているのが死亡者の若年化です。遼寧省大連市の王さんは、「20代から50代まで、あらゆる年齢層で突然死が相次いでいます。私の親族でも2~3人が立て続けに亡くなりました」と語っています。また、「職場の同僚だけでも4〜5人が亡くなっており、特に新型コロナワクチンを接種した人たちに重い影響が出ています」と述べ、同僚たちの親族も次々と亡くなり、忌引きのために職場を離れる人が絶えないといいます。
吉林省桦甸市(かつでんし)の曹さんも、知人が次々に亡くなっている現状を証言しています。たとえば、53歳の友人は前夜まで健康で、翌朝冷たくなって発見されました。また、長距離トラックの運転手だった56歳の知人も突然亡くなりました。さらに、40歳前後の「小さな兄弟」と呼ぶ知人は、酒を飲んだ翌日に頭痛を訴えて実家へ向かう途中で突然倒れて亡くなったといいます。
彼の村でも、30代後半の男性が作業中に突然倒れ、そのまま命を落とすという事例があったそうです。「ここ数年、本当に多くの人が亡くなっています。葬儀業は最も儲かっている産業のひとつです。火葬にもグレードがあり、高級火葬炉は非常に高額で、庶民には手が出ません」と曹さんは語りました。
また、遺体の多くは無縁墓地にまとめて埋葬されており、そうした場所は年々拡大し、密度も増しています。葬儀場自体も拡張されており、「以前とはまるで別物です」と彼は話します。「小さな町や農村では、人影がまったく見えなくなりました。10~20年前は人であふれていたのに、今では高齢者しか残っていません」。
吉林省四平市の蘇さんも、「この冬は突然死が非常に多く、50代が特に多かった」と証言しています。普段元気に働いていた人が、ある日突然倒れて亡くなるケースも多く、「いなくなる人が本当に多いです」と話しました。こうした遺体は廃棄地のような場所に次々と埋葬され、無名墓地が急速に広がっているといいます。
感染や死亡の広がりと並行して、現在でも発熱・咳・嘔吐・下痢などの症状を訴える人は多く、子どもも大人も例外ではありません。大連の王さんによれば、「声がかすれる人、咳が止まらない人など、多様な症状が見られます」。また、曹さんは「妻が深夜に突然高熱を出して、嘔吐と下痢が止まりませんでした。どんなウイルスなのかまったくわかりません」と話しました。
こうした現象は、中国本土の主要メディアでは一切報道されておらず、インターネット上の情報も次々と削除されています。中共当局は今回も、情報を封じ込め、世論の拡大を抑える姿勢を変えていません。
突然死の多発、棺桶の品切れ、火葬場の混雑――これらの出来事は、明らかに何かが起きていることを示しています。しかし、正確な情報は発信されず、現実を知るすべは民間の証言や体験談しかありません。静かに、しかし確実に進行する“見えない危機”に、多くの人が恐れと疑念を抱いています。
このような状況下で命を失う人々は、統計にすら残らず、声を上げることもできないまま消えていきます。けれども、残された人々の悲しみや怒りは、いずれ何らかのかたちで噴き出すかもしれません。そして人々は今、密かに問いかけています――「本当の感染状況はどうなっているのか?」「命を守る術はどこにあるのか?」と。
(翻訳・吉原木子)