中国では、「永久基本農地」は国家の食糧安全保障における最後の防衛線と位置づけられ、「耕地のレッドライン」として法律により厳格に保護されています。いかなる状況でも、この土地の用途を変更したり、地力を損なったりすることは許されていません。

 しかし最近の調査により、湖南省湘潭市や江西省萍郷市などで、本来保護されるべき永久基本農地が、建設廃棄物や生活ごみ、さらには工業廃棄物の不法投棄場として利用されている実態が明らかになりました。これは国家法に対する深刻な違反であり、目を覆いたくなるような状況です。

 2024年11月、湘潭市雨湖区(うこく)長城乡(ちょうせいしょう)の黒家湾社区(こっかわんしゃく)では、永久基本農地に大量の建設廃棄物が埋め立てられている様子が地元メディアにより報道されました。表面には一見きれいな土がかぶせられているものの、その下にはコンクリートや鉄筋が密集しており、耕作は不可能な状態となっていました。

 当時、地元政府は「即時是正」を表明しましたが、実際には「覆土のみ」という形式的な対応にとどまり、廃棄物の撤去は行われていませんでした。これに対し、住民たちは「是正なんて、ただの目隠しだ!」と強い憤りを示しています。こうした声は、基層行政における管理の形骸化を浮き彫りにしています。

 湘潭県易俗河鎮の水竹湾村でも、村道沿いに十数か所の建設廃棄物が放置されており、コンクリートやレンガ、プラスチック、生活ごみなどが混在した状態で無造作に積まれています。分類や浸透防止措置は一切講じられておらず、周辺の環境を深刻に汚染しています。

 また、湘潭市雨湖区の潭州大道の分岐点では、浸透防止処理が施されていないごみが自然の中に直接さらされていました。雨天時には、浸出液が池や農地に流れ込み、長期的な環境リスクを引き起こしています。

 専門家によると、こうした浸出液には重金属や揮発性有機化合物などの有害物質が含まれている可能性があり、地下水に浸透した場合、住民や家畜の飲用水源を汚染する深刻な事態となり得ます。

 このような実態は、江西省萍郷市湘東区でも深刻な問題となっています。2021年以降、ここでは高さ10メートルを超える不法なごみの山が形成され、面積にして数百ムー(※1ムー=約666平方メートル)に及びます。現地に積まれている56万トン以上の工業廃棄物には、鋼滓や炉灰などの有害成分も含まれており、深刻な環境汚染を引き起こしています。

 住民によれば、雨が降るたびに灰の山から汚れた廃液が流れ出し、あたり一面に刺激臭が立ち込めるといいます。中には、営業許可を取り消された「萍郷市軒宇陶瓷公司(けんうとうじこうし)」の旧工場が鋼滓の投棄場所となっていた事例もあり、「德旺绿色环保科技公司(とくおう・りょくせい・かんきょう・ぎじゅつ・こうし)」が巨源村に大量の炉灰を投棄し、「灰の斜面」が形成されている状況も確認されています。

 このような問題を受けて、湘潭市では2024年に「三連単」制度を導入しました。これは、建設廃棄物の発生から運搬、処理に至るまでの全過程を追跡管理する制度で、不法投棄の抑止を目的としています。しかし調査の結果、この制度が現場では十分に機能していないことが判明しました。

 例えば、すでに営業停止となっているごみ処理企業が引き続き業務を請け負っていたり、未分類の建設ごみがそのまま潭州大道沿いのごみ山に運び込まれていたりする実態が明らかになっています。湘潭市の城管局(都市管理局)も、「現在の処理能力では再利用可能なごみしか対応できず、大量の廃棄物が行き場を失っている」と現状の限界を認めています。

 コスト削減を図る企業が、無許可の運搬業者と手を組んで、違法な廃棄物処理の「グレーな産業チェーン」を形成しており、監督の届かない「空白地帯」が生まれています。

 こうした事態を受け、湘潭市では5月19日から緊急の是正措置を開始しました。ごみの撤去作業が始まり、一部地域では土壌調査や環境修復作業も同時に進められています。ただし、市民の間では「今回も形だけで終わるのではないか」という懸念の声が広がっています。

 インターネット上では、「衝撃的な実態。こうした報道が農地保護への意識を高めてほしい」「土地は誰の所有物でもない。しっかりと責任を問うべき」「もうこれ以上、形ばかりの是正では通用しない」といった声が相次いでいます。

 専門家は、自然資源局、環境保護局、農業部門、公安などの関係機関が連携し、違法行為を行った企業や職務を怠った公務員に対して厳正な処分を行うべきだと強調しています。また、建設ごみや工業廃棄物の資源化・再利用を進め、発生源から不法投棄の抑制を図る必要があります。

 さらに、永久基本農地の監視には、リモートセンシングやビッグデータなどの先端技術を活用し、リアルタイムでの監視体制を強化すべきとの意見もあります。住民による通報制度を整備し、社会全体で耕地を守る仕組み作りが求められています。

 永久基本農地の保護は、食糧安全保障や生態系の維持、そして将来世代の生存基盤に直結する重要課題です。湘潭や萍郷で相次いだ違法投棄の問題は、地方行政の監督機能の不全を浮き彫りにするとともに、経済発展と環境保護のバランスを見直す必要性を改めて突き付けています。

 もはや形式的な是正で済ませる段階ではありません。本気の制度改革と厳格な運用こそが、未来の「食の安全」と「大地」を守る唯一の道なのです。

(翻訳・吉原木子)