最近、中国本土で新型コロナウイルスの感染が再び拡大しています。複数の省や市では感染者数が急増し、多くの病院が患者で溢れかえり、SNS上では、「この感染、実は止まったことがなかった」と嘆くネットユーザーも少なくありません。中国疾病予防管理センターが発表したデータによると、3月31日から5月4日までの間、全国の指定医療機関の外来・救急におけるインフルエンザ疾患のうち、新型コロナ陽性率は7.5%から16.2%に急増しました。入院を要する重症急性呼吸器感染症患者における陽性率も3.3%から6.3%に上昇し、3週連続で、新型コロナがインフルエンザ様症状の主要ウイルスとなっています。
北京市朝陽区疾病予防管理センターは5月上旬に健康警告を出し、現在、同区では新型コロナウイルスの活動が明確に増加傾向にあると指摘しました。主に流行しているのはNB.1系統の分枝で、これはオミクロン株(Omicron)のXDV変異株に属しています。ウイルス学者の常栄山氏は、この系統が今後中国国内の主要株になる可能性があると警告しています。
首都医科大学附属北京友安病院の感染症総合科主任・李侗曾医師は、「今回の感染拡大は3月から始まり、すでに3カ月以上が経過している。現時点で明らかな減少傾向は見られない。5月下旬にピークを迎えると予測されている。その理由として、(1)前回の多くの人の感染後から、半年〜1年以上が経過した為、自然感染による抗体が減少または消失している。(2)ウイルスが継続的に変異を繰り返しており、特にNB.1系統は免疫逃避能力(免疫システムによる抗原から逃れる性質)が高まっている。(3)大型連休における大きなな人の流れが感染拡大を加速させた。」と説明しています。
各地の病院からは深刻な混雑状況が報告されています。「抖音」では、北京、江西、広東などの病院が混雑し、患者が廊下にまで溢れている様子が多数投稿されました。江西省では「本日、地元の学校は全て休校になった」との報告があり、広東省では「5月31日から全域で全面的に休校される」との通知も出ているといいます。黒竜江省では、ある保護者が「子供が高熱と咳で4日間自宅療養していたが、今日やっと登園した。しかし、クラス32人中出席したのは22人だけだった」と書き込みました。
感染者自身の声も深刻です。「10回以上陽性になった」「今回の症状はこれまでよりひどい。喉がナイフで切られるように痛い。咳と嘔吐が止まらない」「ブルフェンを飲んでも頭痛が取れない」「家族全員が感染した」「発症してから10日間苦しんでいる」といった体験談が溢れています。あるユーザーは「今年41歳だが、定年まで生きられる気がしない」との投稿もありました。
中でも広東省の感染状況は特に深刻です。広東省疾病予防管理局によれば、4月の新型コロナ発症数は23,188件に達し、3月の3,548件と比べて5倍以上の急増となりました。南方医科大学南方病院の感染内科副主任・彭劼医師は、「3月の陽性率は約7〜8%、4月は15%、5月は20〜30%に上昇している」と述べました。総受診者数は大きく変わらないものの、新型コロナの陽性者数は着実に増えているとしています。
重症化リスクの高い人としては、(1)60歳以上の高齢者、(2)糖尿病、高血圧、COPD、がんなどの基礎疾患を持つ人、(3)放射線治療中や臓器移植後の免疫抑制状態にある人が挙げられます。これらの人々は感染した場合、重篤化しやすく、注意が必要です。
しかし一方で、当局のデータに対する疑念も根強く、「検査すらしていないのに、どこから陽性者数が出てきたのか?」「専門家が話し始めると、すべて作り話に思えてくる」といったコメントも多く見られました。あるネットユーザーは「感染の波が本当に来ているなら、なぜ何の防疫対策も取られないのか?」と疑問を呈し、「新型コロナは止まったことがない。ただ隠されていただけだ」と断言する声もあります。
実際、2022年11月に感染した経験のある女性が動画で、「今回が再感染の9日目だが、以前よりも毒性が強いと感じる。皆さんも人混みを避けて、十分に注意してほしい」と呼びかけています。
こうした中で、中国本土では「新型コロナはすでに日常化しており、誰も真剣に取り合わなくなった」との空気も漂っています。しかし、ウイルスは確実に広がり続けており、感染力と免疫逃避性を強めた変異株が再び社会に影響を及ぼしていることは否定できません。専門家の予測では、今回の感染ピークは5月下旬まで続き、全体として6〜8週間程度持続する見込みです。ただし、実際にどれほどの期間で収束するかは、今後の状況次第です。
いずれにしても、個人としてできる対策、マスクの着用、こまめな手洗い、体調不良時の外出自粛などを怠らず、引き続き警戒を維持することが重要です。
(翻訳・吉原木子)