日本の神話には、八岐大蛇という恐ろしい怪物がいます。

 それは八つの頭と尾を持ち、体は谷を八つ渡るほど巨大で、体にはコケや杉が生え、腹にはいつも血がにじみ、ほおずきのような赤い目をしている化け物です。

 八岐大蛇は毎年出雲国にやってきては、若い娘を喰っていくだけでなく、川の氾濫を起こし、甚大な水害をもたらすと伝えられています。

 世界各国の神話にも、八岐大蛇と似たような複数の頭を持つ巨体な怪物が登場します。例えば、ギリシャ神話のヒュドラー、中国神話の相柳(しょうりゅう)、聖書に書かれた七つの頭の赤い竜、また、ケニアやカンボジアなどの国々でも、そのような伝説が語られています。

 世界各国の神話には、なぜこれだけ巨大な多頭の怪物が存在し、しかも全て悪の象徴として捉えられているのか、それは単なる偶然なのか、それとも他に理由があるのか。その疑問を深掘りして考えたいと思います。

一、日本神話の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)

 八岐大蛇は、『古事記』や『日本書紀』に登場する、たくさんの頭が胴体からぐるりと出ている巨体な怪物です。

 八岐大蛇の姿について、頭と尾がそれぞれ八つあるというのが一般的な定説ですが、もし「ヤマタ」は八つ股があるという意味ならば、頭は九つあるのではないかという意見もあり、また、「大蛇」は通常の意味での「蛇」と異なり、竜の姿をしているのではないかという説もあります。

『日本略史 素戔嗚尊』に描かれたヤマタノオロチ(月岡芳年・画)(パブリック・ドメイン)

 おぞましい姿で人々の暮らしを脅かしていた八岐大蛇は、最終的に、暴風の神として知られる素戔嗚(スサノオ)によって退治されたと伝えられています。

二、「山海経」に記載される 相柳(そうりゅう)

 中国の最古の地理書とされる『山海経』には、相柳という凶神がいます。 

 『山海経・海外北経』によれば、相柳は蛇の胴体に九つの頭を持っており、無数の人を食べたと言います。相柳が行くところは毒の水が溢れる沼沢地へと変わり、禽獣も生きていけない場所になってしまいます。

 夏王朝を開いた伝説上の王の禹(う)は、民を守るため、神通力で荒れ狂う相柳を退治して害を取り除いたと言い伝えられています。相柳が退治された時、流れた大量の血液が広範囲の土地を汚染し農業などを不能にしてしまったとのことです。

宋本『山海経伝』(現存最古の『山海経』版本).
宋本『山海経伝』(現存最古の『山海経』版本)

三、ギリシャ神話のヒュドラー

 ギリシャ神話の中にも、ヒュドラーという巨大な胴体に9つの首を持つ大蛇がいます。それはギリシャ神話を代表する怪物の一つです。

 ヒュドラーは不死身の生命力を持っており、9つの首のうち8つは倒すことが出来ますが、すぐに傷口から新しい2本の首が生えてきたとされています。加えて中央の首は不死だったそうです。

 ヒュドラーは猛毒を持っているとされ、ヒュドラーの息を吸っただけでも人は死に、彼が寝た場所を通っただけでも人は苦しんで死んでしまうそうです。

 ヒュドラーはギリシャ神話の英雄ヘラクレスによって退治されたと言われています。   

『ヘラクレスとレルネのヒュドラ』(1876年) シカゴ美術館所蔵(パブリック・ドメイン)

四、聖書に登場する七つの頭の竜

 『新約聖書』のヨハネの黙示録には、七つの頭を持つ赤い竜が登場します。

 「また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた」(新共同訳12:3)

 7つの頭があるという異形の姿をしている赤い竜は、その尻尾で天の星を3分の1も落とし、傷ついてもすぐ再生するという驚異的な能力を有しているといいます。

 「この巨大な竜、すなわち悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経た蛇は、地に落とされ、その使いたちも、もろともに投げ落とされた。」(ヨハネの黙示録12:9)

 この赤い竜は、神の敵対勢力である悪魔の象徴として理解されています。

五、多頭の怪物の正体は?

 日本の八岐大蛇、中国の相柳、ギリシャのヒュドラー、赤い竜など、世界神話に現れた複数の頭を持つ怪物は、頭の数がそれぞれ異なり、呼び方も蛇、竜、大蛇など様々ですが、その恐ろしい姿は極めて類似しており、邪悪の象徴として、悪魔の化身と見做されているところも共通しています。

 われわれの祖先は、偶然に同じような怪物を想像して物語を作り出したのでしょうか?多頭の怪物の正体は何なのか?それらは実在した生き物だったのか?八岐大蛇も、ヒュドラーも、相柳も、聖書に描かれた七つの頭の竜も、そもそも同一物であり、悪魔(サタン)の化身として、世界各地で暴れ、人間世界を支配していたのでしょうか?今も我々の見えない空間に棲みついて、人類を脅かしているのか、謎が深まるばかりです。

 2018年5月18日にエポックタイムズの『九評』編集部が出版した『悪魔が世界を統治している』という本があります。

 本の序章で次のように述べています。

 「東欧の共産主義陣営はすでに崩壊した。しかし、共産主義の邪霊が消滅したわけではない。実際、この悪魔はすでに世界を統治している。人類は決して楽観視することが許されない。」
 「共産主義は、思想の傾向でも、教義でも、人類が出口を求めて失敗した試みでもない。それは悪魔であり、共産主義の悪霊としても知られ、憎しみと宇宙の下層にあるあらゆる種類の堕落した物質から構成されている。もともとは蛇であり、地上空間で具現化した姿は赤い竜である。それはサタンの仲間であり、積極的な神々を憎み、あらゆる種類の低俗な霊や悪魔を使って地球を苦しめている。」
 「この邪霊の最終目的は人類の破滅である。神が衆生を救うためにこの世にやってきた最後の時期に、神に対する信仰心を失わせ、神と伝統に背反するまで道徳を堕落させ、神の教えと導きを理解できないようにすることで、人類が最終的に淘汰されるように仕向けることだ。」
(『悪魔が世界を統治している』の序章より)

 確かに、ベルリンの壁が崩壊した後、共産主義陣営は全滅したように見えましたが、共産主義を標榜する国々は、世界で共産主義を実現する夢を諦めていないのです。

 その代表的な存在が中国共産党です。中共は西側諸国の好意につけこみ、西側諸国の力を借りて、中国を経済大国、軍事大国にのし上がらせました。中共はいろんな手を使って、西側の王室、政府、教育、メディア、医療、福祉、環境保全、芸術など、有りと有らゆる分野に浸透し、人々を洗脳してきました。

 その策略が功を奏して、現在、共産主義のイデオロギーは西側社会の人々の日常生活にすっかり溶け込んでいるように見受けられます。

 まさか、かつて古代社会を脅かし、人々を苦しめていた八岐大蛇、相柳、ヒュドラー、赤い竜などの化け物は、その姿を変えて、現在、共産主義の悪霊として現れ、人類を破滅させようとしているのでしょうか。

 それらの問題を理解するには、無神論や唯物論という枠組みを超えて物事を考える必要があるかもしれません。そして、『悪魔が世界を統治している』という本をお勧めします。新たな視点やヒントを与えてくれるはずです。

興味のある方は下記リンクをご覧ください:
https://www.epochtimes.jp/category/393

 (文・一心)