中国の公式メディアは、5月の大型連休期間中に、国民が爆発的に旅行に出かけたと、大々的に宣伝しましたが、多くのネットユーザーが撮影した動画によると、各地の観光地は、観光客であふれかえり、秩序が混乱し、不満の声が相次ぎました。中には「チケットを返金しろ」と叫ぶ観光客も見られました。

 「澎湃新聞」によると、5月2日、中国国家鉄路集団有限公司は、5月1日に全国の鉄道旅客が、2,311.9万人に達し、そのうち高速鉄道の利用者は、1,567.1万人だったと発表しました。前年比でそれぞれ11.7%、16.1%の増加で、いずれも過去最高を更新したとのことです。中国交通運輸部も、5月1日の全国における大規模な人の移動が3.4億人を超え、前年比8%の増加と予測しています。

 しかし、観光客数の増加に伴い、全国の観光地では過密状態と管理の混乱が目立ち、各地で強い不満が噴出しています。

 5月2日夜、張家界国家森林公園の南門では送迎車が手配されず、数千人が立ち往生し、「チケット返せ!」との抗議の声が響きました。同日、仏山の游龍峡では混乱が発生し、観光客が一斉に返金を要求しました。広東省清遠市の黄騰峡では、観光客が午後1時から6時まで列に並んでも川下りを体験できず、返金と賠償を求める騒ぎとなりました。

 また、河南省の豫西大峡谷では、「船が足りないのにチケットを売るな」と観光客が不満を漏らし、「4時間も並んでいるのにまだ返金されない」と怒る声も聞かれました。

 あるネットユーザーは、武漢の黄鶴楼で5月の大型連休期間中に将棋倒し寸前の事故が起きかけたと動画で伝えています。上海の東方明珠でも長蛇の列ができ、「もう我慢できない」としてチケットを返す観光客が続出しました。重慶の地下鉄では、人が密集しすぎて身動きが取れず、パニック状態に近い混雑が報告されました。

 観光地の混雑だけでなく、連休中には「ぼったくり」被害の報告も相次ぎ、多くの旅行者が動画で不満を訴えました。

 ある女性は、「北海で蟹2匹、魚1匹、巻貝1皿、チシャ菜1皿、生牡蠣2つ、アワビ2つの食事で1,578元(約3万円)も取られた。この店には注意してください」と呼びかけました。

 また別の男性は、「海鮮料理で500元(約1万円)取られても我慢するが、トイレに入るのに2元取るのはひどすぎる」と不満を述べました。さらに、街頭には「違法駐車」と警告するスピーカーが鳴り響き、あたかも取り締まりが行われているかのように感じられ、観光客は仕方なく1回20元の有料駐車場へ誘導されていたと言います。その上、トイレの入り口には「宿泊禁止」と書かれていたため、彼は「誰がトイレに泊まるのか?」と一度は疑問に思ったものの、ネットでホテルの宿泊費を調べると、ほとんどが一泊700〜800元と非常に高額であることに気づき、「トイレに泊まろうとする人がいても無理はない」と納得したと語っています。彼は「まるで金を払って苦しみを買っているようなものだ」と皮肉を込めて述べました。

 ネットユーザーの間では、駐車場の看板が白紙になっており、出庫時に裏返すと「駐車料金3元」と表示され、支払わなければ出られないという「隠れ料金」も話題になりました。さらに、桂林の漓江では竹筏を漕ぐ高齢者が、写真を撮ろうとした観光客に料金を要求する場面も報告されています。

 一部のブロガーは、観光消費を促すために各地の地方政府が「山紫水明」「緑水青山」といった美しい自然を誇張して宣伝しており、実際に訪れてみると、宣伝とは全く異なり、例えば花を売りにしている景区なのに、現地にはほとんど花が咲いていなかったなど、観光客が失望する例が後を絶たないと批判しています。

 5月1日には、あるブロガーが洛陽の重渡溝への旅行体験を投稿し、「片道350キロ、6時間以上の運転を経て現地に到着。景区の入口から予約したホテルまでたった3キロなのに、2時間半以上かかった。車は一歩ずつしか進まず、まるでお粥の中にいるようだった。景区は人を人として扱っていない」と痛烈に批判しました。

 また、中国メディアによると、5月1日に南寧市の動物園で人気のチンパンジー「丢那猩」が公演中に石を投げ、女性観光客が負傷。貴州の赤水丹霞大瀑布付近では山崩れが発生し、巨石が車を直撃し観光客が逃げ惑うなど、災害や事故も相次ぎました。

 4月30日には多くの旅行者が山東の泰山に集まり、夜登りを体験する中で突然の豪雨に見舞われ、5月1日未明には玉皇頂山道の両側に観光客が雑魚寝し、トイレで寒さをしのぐ人もいたと報じられました。

 中国経済の低迷と失業率の上昇により、国民の所得は減少し、消費能力も低下しています。最近では「旅行しながら屋台を出す」スタイルが若者の間で流行し、観光地で出店して旅費を稼ぐケースも増えています。

 また、なぜ混雑を覚悟してまで旅行するのかについて、あるブロガーは「本当は混雑を望んでいるわけではない。365日の中で、家族が揃って出かけられるのは連休しかない。平日に家族と過ごす時間がないからこそ、せめてこの時期に子どもを連れてどこかに行こうとする」と説明しています。

 さらに、別のブロガーは、旅行者自身の消費スタイルも「格下げ」されていると指摘しています。以前は海外旅行していた人が今は三亜へ、週末に数泊の旅行をしていた人が今は近場の日帰り旅行へとシフトしており、街には「貧乏旅行」スタイルの人であふれ、人均消費は非常に低いといいます。

 彼はまた、有名な観光地、例えば大唐不夜城、北京、上海、杭州などは今や「散歩スポット」と化しており、人は多いものの、消費の多くはチケットや交通費に集中し、これらの収入は主に国営企業に流れるため、民間の小規模商店はほとんど恩恵を受けられないと述べています。

 中国が「ゼロコロナ」政策を終了して以降、毎回の大型連休で「爆発的旅行」が発生していますが、1人あたりの旅行支出は顕著に減少しています。例えば2023年の端午節連休では、国内旅行の1人当たり平均消費額は352元で、2019年の410元を大きく下回っています。

(翻訳・吉原木子)