第137回中国輸出入商品交易会(通称:広州交易会)が2025年4月15日、広東省広州市で開幕しました。広州交易会は中国最大規模かつ最も歴史のある貿易展示会として知られており、中国の対外貿易の「晴雨計」と呼ばれています。しかし、今回の広州交易会については、多くの出展企業や業界関係者から「例年に比べて異様に静かだ」との声が相次いでいます。特に欧米からのバイヤーの姿が大幅に減少していることから、中国の輸出の将来に対する懸念が高まっています。

欧米バイヤーの姿消え、会場は閑散――現場から見えた異変

 今回の広州交易会は、米国が一部の中国製品に対して最大145%もの関税引き上げを発表した直後に開催されました。地政学的リスクや貿易政策の変化を背景に、例年以上に注目を集めていたものの、初日からその空気は明らかに例年と異なっていました。

 会場にいた中国の輸出業者によれば、米国からの顧客は「ほとんど姿を見かけない」と言います。欧米のバイヤーの数も極めて少なく、ある出展企業の責任者は「何年も連続で取引してきたアメリカの大口顧客が、今年は一人も来ていない」と肩を落としました。

 また、来場者の一人はSNS上で「午前10時半、展示会場には外国人が一人もおらず、見渡す限り中国人ばかり。午後1時半には、第4号館の第2展示ホール全体が静まり返っていた」と投稿しています。

 複数のネットユーザーによると、今年の外国人来場者は主にアジア、アフリカ、中東からであり、中でも中央アジアや中東のバイヤーが中心だったとのことです。一方で、「欧米の来場者にはほとんど出会わなかった」という声が目立ち、さらに「日本や韓国のバイヤーも例年より少なく、ここ数年で最も閑散とした開催だった」との指摘も出ています。

貿易摩擦と政策変更が出展企業の信頼を揺るがす

 欧米のバイヤーが今回の広州交易会に姿を見せなかった背景には、複雑化する国際貿易環境が深く関係しています。最近では、 米国が一部の中国製品に対して懲罰的関税を導入し、税率は最大で145%、ごく一部の商品には245%もの関税が課される事態となっています。こうした政策は、米中間の貿易に深刻な打撃を与えています。

 ロイター通信によると、中国の医療機器メーカーに勤務するある営業マネージャーは「当社の注文の60〜70%は米国からだが、今回の関税政策が発表された途端に、米国からの注文が完全に消えた」と語りました。状況が改善されなければ、人員削減を検討せざるを得ないとしています。

 また、浙江省「碩而博科技股份有限公司」の従業員、徐雄偉さんも、同社の蚊よけ製品の約半分が米国向けであるとし、「もしトランプ大統領が考えを変えなければ、我々が非常に危険な状況に陥る」と述べました。

 一方、広東省の「賽凌貿易グループ」は、米ウォルマートなどの大手小売業者に業務用アイスクリームマシンを輸出していたものの、現在は生産を完全に停止し、製品が倉庫に山積みになっていると明かしています。

 ブルームバーグの報道によると、米投資銀行ゴールドマン・サックス・グループは最近のリポートで、中国では対米輸出の減少により最大で2000万人、労働人口の約3%が影響を受ける可能性があると分析しています。同行アジア太平洋地域のチーフエコノミスト、アンドリュー・ティルトン氏は、「米国による高関税措置とそれに伴う輸出の急減、さらに世界経済の減速は、中国の経済と雇用に対して深刻な圧力をもたらす」と警鐘を鳴らしています。

出展と来場を妨げる制度の壁

 貿易摩擦の影響に加え、今年の広州交易会では入場に関する規定が例年より厳しくなったことも、出展者やバイヤーの間で波紋を呼んでいます。複数のネットユーザーや出展者によると、外国人バイヤーは以前より多くの書類を事前に提出し、さらに煩雑な本人確認手続きを経なければ入場証を取得できない仕組みとなっており、「ビザの申請と同じくらい面倒だ」との声が上がっています。この変更については、「意図的にハードルを設けているのではないか」との疑念も浮上しています。

 同時に、中国国内の企業に対する出展基準も厳格化されており、出展者は社会保険の納付証明などを提出する必要があります。この結果、一部の中小企業やフリーランスの労働者は出展の機会を失いました。

 業界関係者の中には、こうした制度が監督目的で設けられていることは理解しつつも、「企業の出展意欲をかえって削ぐことになる」と懸念する声もあります。あるネットユーザーは、「これでは顧客を自ら遠ざけているようなものではないか」と疑問を呈し、「外向きの展示会で最も重要なのは開放性と利便性であって、障壁を設けることではない」と訴えました。

公式発表と現場の実情に乖離

 主催者である中国対外貿易センターが発表したデータによれば、4月13日時点で215の国と地域から20万人以上の海外バイヤーが事前登録を完了し、フランスのカルフール、イギリスのテスコ、ドイツのメトロなど、計255社の国際的な有名企業が出展を確定したとしています。そのうち71社がヨーロッパ、52社が北米からの企業だといいます。

 しかし、実際の会場の様子とは対照的で、多くの出展者が「例年にない閑散ぶり」と証言しており、ネット上でも「数字は立派だが、実態と合っていない」との声が相次いでいます。あるユーザーは「見栄えのいい数字の裏で、『人数合わせ』が行われている」と指摘しました。

 「Emma jun(エマ・ジュン)」というネットユーザーは、「一部の企業が社員を動員して会場に派遣し、人数を埋め合わせている」とし、「その際には政府部門から企業に補助金が支給され、企業が社員に分配する仕組みになっているが、補助金を企業が横取りするケースもある」と実情を暴露しています。

 また、「広州交易会はプロモーション映像用の『見せ場』になってしまった。統計数字は立派でも、実際の成果は伴っていない」と嘆く声も上がっています。また、ある中小企業関係者は、「大手国有企業が数十、数百というブースを確保しているが、十分に活用されていない。一方で、本気で海外市場を開拓したい中小企業はブースが割り当てられず、やむなく他企業のブースを買って出展している」と不公平な現状を訴えました。

「世界の工場」はどう再起するのか?

 世界的なサプライチェーンの再編が進む中で、広州交易会が直面している課題は今に始まったことではありません。中国の対外貿易を象徴する重要なプラットフォームとして、広州交易会は長年にわたり「中国製造」と「世界市場」を結ぶ架け橋として機能してきました。しかし、バイヤーの離反、入場規制の強化、市場の信頼低下といった複合的な問題に対処できなければ、その実効性と影響力は大きく損なわれる恐れがあります。

 第137回広州交易会は、5月5日まで開催される予定で、展示面積は155万平方メートル、全55の展示エリアに約7万4000のブースが設置され、参加企業数は3万社を超えました。これは前回と比べて約900社の増加にあたります。出展規模や企業参加数においては依然として成長を維持しているものの、現場からの報告を見る限り、実際の商談成約や市場の信頼回復には、なお大きな課題が残されています。

 米中関係が緊迫する中、中国製造業が国際貿易の新たな構造の中で再び活路を見出せるのか――広州交易会は、まさにその動向を読み解く上での重要な観測地点となっています。

(翻訳・藍彧)