中国のネットユーザーがこのほど、重慶市江津区で黒く悪臭を放つ汚水が長江に排出されているのを発見しました。墨のような黒い水が流れ、刺激臭が立ち込める様子をドローンが捉え、隠れた排水問題と環境危機が明るみに出ました。
重慶のネットユーザー、水質汚染を告発
環境ブロガー「漁猟斉哥(ユーリエ・チーグー)」が2月16日、重慶市江津区珞璜鎮で黒く悪臭を放つ汚水が長江に排出されている動画を投稿しました。
「漁猟斉哥」によると、ネットユーザーからの通報を受けた後、すぐに現場へ向かい、ドローンを使って隠された排水口を撮影しました。「排水口のそばを流れる小川の水は非常に黒く、まるで墨のようだった。水からは強い刺激臭が漂っていた」と語っています。
近くで観察すると、この排水口から排出される水には油膜が浮いているのが確認でき、排水口の端には、長年にわたる排出の影響で黒い油汚れが付着し、こびりついています。
この排水口は長江から約2キロメートルの距離にあり、周辺には工場や工業団地が存在しています。しかし、現在のところ、誰が排水しているのかは分かっておらず、排出されている汚水が規制に適合しているかどうかも確認できていません。
「漁猟斉哥」はドローンを使って別の排水口も発見し、その排水口から流れ出る汚水には泡が含まれていました。
この問題は多くのネットユーザーの関心を集めています。
ブロガー「微言微評(ウェイヤン・ウェイピン)」は、次のように指摘しました。「長江への汚水排出が深刻な問題であることは誰もが知っている。それにもかかわらず、排水を行う企業の経営者はあまりにも大胆すぎる。汚水は黒い墨汁のようで、強い刺激臭を放ち、水質の深刻な悪化は明らかだ。さらに許しがたいのは、排水口が一つではないことだ。毎日どれほどの汚水が流れ込んでいるのか。
企業がこのような方法を選ぶとは信じがたい。汚水が長江に流れ込めば、完全に希釈され、発覚しにくくなる。時間が経てば、水質汚染は避けられず、その影響は水中の生物だけでなく、市民の生活にも及ぶだろう」
政府当局「異常は確認されず、水質は基準を満たす」と発表
重慶市江津区政府は2月18日、ネットユーザーが指摘した汚水の流出について初期調査を行い、安家渓(あんかけい)への流出と水質汚染が基本的に事実であると認めました。
調査によると、2月10日、珞璜工業団地付近の排水管網が突然崩落し、汚水が溢れ出したとのことです。工業団地の発展センターは直ちに修復作業を開始し、2月13日に完了しましたが、一部の汚水は拡張計画中の汚水処理施設の堰止め池に流れ込み、そこから再び安家渓に流出したと報告されています。
江津区生態環境局は、2月17日午前に実施した水質サンプリング調査の結果を公表しました。それによると、堰止め池の溢流口の下流にある安家渓の測定地点では、アンモニア態窒素や全リンなどの数値が基準を超えていたものの、安家渓が長江に合流する地点の水質は基準を満たしていたとしています。
また、(地方)政府は中小企業団地周辺の13社に対し調査を行い、そのうち1社の豆製品製造企業が違法な排水を行っている疑いがあるとして、証拠収集を進めていることも明らかにしました。
「微言微評」は次のように指摘しました。「事態がここまで大きくなれば、もう隠し通すことはできないだろう。汚水を排出した者は、明らかに故意に行ったのだ。誰が排水しているのかを突き止めるのは、それほど難しくない。おそらく、排水を行った者は政府に強力なコネを持っているだろう。結局のところ、政府は企業を象徴的に閉鎖し、罰金を科すだけで、しばらくすればその企業はまた営業を再開する。こうしたことは、もはや日常茶飯事だ」
中国各地で蔓延する汚水の直接排出問題
中国国営メディア「新華視点」の記者が2024年5月、中央生態環境保護監察チーム(以下、監察員)に同行し、長江流域の上海、浙江省、江西省、湖北省、湖南省、重慶市、雲南省の7省・市で環境監察を行ったところ、各地で水環境の管理に多くの問題が存在していることが明らかになりました。
記者は同年5月16日、監察員とともに湖北省武漢市の老泵站河を訪れた際、河の水が黒く悪臭を放ち、水面には灰黒色の泡が次々と浮かび上がる光景を目の当たりにしました。
検測結果によると、河川のアンモニア態窒素濃度は20mg/リットルに達し、地表水の三級基準を19倍も上回っていました。武漢市では、黒臭水体(汚染によって黒く悪臭を放つ水域)の改善が進まず、老泵站河をはじめとする水域が長年にわたり汚染されたままの状態が続いています。しかし、地方政府はこの状況を正確に公表せず、効果的な対策も講じていません。
湖南省では、記者が監察員とともに岳陽市の小港河流域にある排水口を訪れました。そこでは、汚水が勢いよく噴き出し、水の流れる場所には大量の白い泡が発生し、水面には黒い綿状の浮遊物が広がっていました。
監測の結果、小港河のアンモニア態窒素濃度は9.2mg/リットルに達し、地表水の三級基準を8.2倍も上回っていました。水質は「軽度の黒臭」に分類される深刻な汚染状態でした。
江西省では、撫州市が「黒臭水体(汚染によって黒く悪臭を放つ水域)は存在しない」と報告していました。しかし、監察チームが極秘調査を行ったところ、臨川区にある約700メートルにわたる水域で強い異臭が確認されました。水質検査の結果、アンモニア態窒素濃度は25.6mg/リットルに達し、「重度黒臭水体」に分類される深刻な汚染が判明しました。
重慶市では、渝北区の複数の住宅地で生活排水が直接溝や地下水路を通じて鏡湖に流れ込んでいることが、監察チームの調査で明らかになりました。これにより、鏡湖の入口付近には約100メートルにわたる汚染帯が形成されていました。
雲南省では、昆明市中心部を流れる老海河の河床に大量の泥が堆積し、水質が明らかに黒く濁り、悪臭を放っているのが確認されました。監測の結果、アンモニア態窒素濃度は43.6mg/リットルに達し、地表水Ⅲ類基準の42.6倍を超える極めて深刻な汚染が判明しました。老海河は「重度黒臭水体」に分類されています。
地方政府、根本的な対策を講じず
環境監察チームは、多くの地域で見られた問題として、一時的な水の放流による汚染の希釈に頼るばかりで、川岸での排水遮断や汚染防止策を重視していないことを指摘しました。
例えば、浙江省臨海市の東大河では、排水の遮断や汚染防止策、体系的な水質改善には十分な取り組みが行われていませんでした。その代わり、「生態補水」という名目で大量の水を放流し、汚染を薄める方法が取られていました。2024年1月から3月にかけて、毎日約17万トンの水が東大河流域に流されたが、これは本来の生態補水に必要とされる量の約4倍に相当し、一部の支流では必要量の10倍以上に達していました。このような対応は、実質的には汚水を希釈するだけに過ぎないと指摘されています。
江西省撫州市東郷区の北港河沿岸では、複数の排水口から汚水が直接河川に流れ込んでいました。しかし、地元政府は川岸での汚水収集や処理に力を入れることなく、代わりに河川内の水質浄化に重点を置きました。具体的には、省政府の水質監視ステーションの上流に4基の水処理施設を設置し、河川の汚染除去を行っていました。
(翻訳・藍彧)