中国人民銀行が最近発表したデータによると、2024年末時点で、各種クレジットカードの保有総数は2022年第4四半期と比べて8,000万枚減少しました。一方、クレジットカードの総数が減少するなか、クレジットカードの滞納額は大幅に増加しています。
相次ぐカードセンターの閉鎖
中国の経済系メディア「第一財経」の報道によると、2月17日、中国人民銀行は「2024年決済システム運営の概要」という報告書を発表しました。その中のデータによると、2024年末時点のクレジットカード等の利用枚数は7億2,700万枚であり、2023年末と比べて約4,000万枚減少しました。クレジットカードの発行枚数は9四半期連続で減少し、2022年第4四半期の発行枚数である8億700万枚と比べて、約8,000万枚の減少となっています。
中国では複数の銀行が2024年に提携クレジットカードの発行を停止し、クレジットカードセンターを閉鎖しました。中国の大手銀行・交通銀行は今年、貴陽や南昌、深圳、蘭州の4都市にある「太平洋クレジットカードセンター」を閉鎖しました。さらに、華夏銀行や平安銀行、上海農商銀行も昨年、相次いでクレジットカードセンターを閉鎖しています。
取引額減少、滞納額は大幅増
中国ではクレジットカードの保有総数が減少するにつれて、クレジットカードによる取引額も減少しています。
深圳市にある平安銀行のデータによると、2024年9月末時点でのクレジットカード利用残高は、前年末時点と比べて11.9%減少しました。北京にある中信銀行の利用残高も、前年比で4.36%減少しました。
招商銀行の2024年9月末時点のクレジットカード利用残高と個人向け住宅ローン貸付残高の合計額は、前年末から144億元(約3,000億円)減少しました。
ここで注目すべきポイントは、中国でクレジットカードの利用が減る一方、滞納問題が深刻化していることです。
経済系メディア『新浪財経』の2月19日付の報道によると、2024年末時点で半年以上滞納しているクレジットカード債務の総額は約1240億元(約2.5兆円)に達し、前年から26.32%増加しました。
また、『証券時報』の報道によると、中国の不良債権を取り扱う銀行業信用資産登記・流通センターは今年1月、2024年の1年間で個人向け不良債権の取引規模が1,584億元(約3.3兆円)に達し、前年から64%増加したとのことです。
2024年第4四半期のデータを見ると、個人向け不良債権の中で最も割合が高かったのは消費者向けローンであり、66%を占めています。そして、個人事業向けローンやクレジットカードの未払い残高も大きな割合を占めています。
数百万人がブラックリスト入り
イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』の報道によると、中国のローン延滞率は2023年に過去最高を記録しました。中国の地方裁判所のデータによれば、2023年には住宅ローンや商業ローンなどを延滞した854万人が政府によって「ブラックリスト」に登録されました。この数は、コロナ禍が始まった2020年初頭の570万人を大きく上回っています。
報道によると、パンデミックが終息した後も、多くの消費者が減給や失業によってローンを返済できず、ブラックリスト入りしました。さらに、中国当局は2020年に「社会信用システム」を全面的に導入したため、ブラックリスト入りした人々は新たな借り入れが困難になり、日常生活でも厳しい制限が課されるようになりました。例えば、中国で日常的に使われている電子決済方法である「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」が利用できないほか、飛行機や高速道路の利用も制限されるという状況です。
近年、中国では電子決済が主流となり、現金を受け付けない店舗も増えています。そのため、ブラックリスト入りした人々の中には「電子決済が使えず、食料さえ買えない」と不安を訴える声も上がっています。
北京在住のある経済学者は匿名を条件に米国メディア「ボイス・オブ・アメリカ」の取材に応じ、「不動産業界の問題が深刻化し、多くの業界で資金繰りが厳しくなっている」と指摘しました。そして、「過去30年間、中国経済は不動産業界が牽引してきたが、今や不動産業界は崩壊した。エバーグランデ(恒大)やカントリーガーデン(碧桂園)といった大手不動産企業が破綻し、株式も取引停止となった。不動産業界からのキャッシュフローが途絶えたことで、多くの人々の資産は急激に目減りし、高額な住宅ローンの返済が困難になっている」と語りました。
悲惨な中年失業者
中国の失業問題は、中流階級にも深刻な影響を与えています。かつて高収入を得ていた人々も、失業によって経済的に追い詰められ、「中年で職を失うことがどれほど悲惨か知っているか」と嘆いています。
河北省に住むブロガーの「趣知達人」さんは、ネット上で自身の経験を語りました。かつて年収30万元(約620万円)を得ていましたが、30歳で突然リストラされました。失業してから約1か月の間に63社に履歴書を送ったものの、返信があったのはわずか8社だけでした。年末にようやく面接を受けられましたが、人事担当者から「あなたの年齢で業務執行取締役を希望されても、採用は難しい」と冷やかしを食らったといいます。
中国の雇用市場では、35歳を超えると採用されにくいという「35歳の壁」が一般的に存在すると言われていますが、一部の業界ではすでに30歳が限界とされているようです。賃金への要求が低く、長時間労働にも耐えられるという点から、企業は採用活動において、若い求職者を好む傾向があります。
ブロガーの「趣知達人」さんは失業後、運転代行の仕事を始めましたが、2月18日の収入は147元(約3,000円)でした。前月に子どもの学費と塾代を払い、今月はマンションの管理費や住宅ローンの支払いが控えていますが、資金繰りの目処はまだついていません。幸い、妻は一切不満を言わず、パートの仕事を始めたとのことです。
「趣知達人」さんは、「運転代行の仕事を終えて帰宅するのは夜1時。でも、妻はいつも温かい食事を用意してくれている。でも、妻は夕食を食べず、夜にリンゴ1個しか口にしていない」と語りました。
ある日、運転代行の仕事中に、「趣知達人」さんは1人のヘッドハンターと出会いました。ヘッドハンターによると、彼のスキルに合った求人があり、紹介するとのことでした。「趣知達人」さんは、「この話を聞いたとき、手が震えるほどの衝撃を受けた。明日、面接を受けに行く」と話しました。
彼の妻も面接のため、新しいワイシャツを買いました。そして、「タグは切っていない。もし採用されなかったら、そのままワイシャツを返品しよう」と言ったそうです。
中国国家統計局のデータによると、2024年12月時点で、中国の都市部の失業率は5.1%でした。そのうち30歳から59歳の人口の失業率は3.9%とされていますが、この数値に対し疑問の声が上がっています。
中国のSNSやネット掲示板では、多くのユーザーが「求職が非常に困難だ」「1年以上失業している」などと投稿しています。特にITや金融、不動産などの業界では、中年の求職者が新たな仕事を見つけるのが難しいという声が相次いでいます。
中国当局のデータでは失業率は5.1%とされていますが、中年層に関しては、実際の失業率は政府の発表をはるかに超えているのではないかとの指摘もあります。
(翻訳・唐木 衛)