中国の対外直接投資(FDI)の純流出が過去最高を記録し、国際的な関心を集めています。これを受けて、中国政府は外国資本の流出を食い止めようと「外資安定化」対策を打ち出したが、米中貿易戦争の激化、ビジネス環境の悪化、安全保障審査の厳格化などの要因が重なり、外資の回流は依然として厳しい状況にあります。
中国のFDI純流出が過去最高、資本流出が加速
ブルームバーグの報道によると、2024年の中国のFDI純流出額は1680億ドル(約25兆円)に達し、1990年の統計開始以来、最高水準を記録しました。同時に、中国企業による対外投資総額は1730億ドル(約26兆円)に上り、企業が資金を海外へ移転させる動きが加速していることを示しています。一部の報道では、米中貿易戦争が再燃すれば、中国の資本流出額はさらに増加する可能性があると分析されています。
外資撤退が深刻化する中、中国国務院は2月10日に会議を開き、「2025年外資安定化行動計画」を審議・承認しました。中国当局は、「より実効性のある具体的な措置を講じ、既存の外資を安定させ、新たな投資を拡大する」と強調し、外資系企業が産業の高度化や雇用、輸出の促進に果たす重要な役割を強調しました。
また、新華社通信の報道によると、2024年の中国における実際の外資導入額は8262.5億元(約17兆円)となり、前年と比べて27%減少したと伝えられています。
外資の撤退は長期的な傾向=専門家
ボイス・オブ・アメリカの取材を受けた複数の専門家は、「外資の中国撤退の流れは拡大し続けている」との見方を示しています。
台湾の致理科技大学の張弘遠(ジャン・ホンユエン)准教授は、「2021年以降、中国のFDIはほぼ毎年9%から11%のペースで減少している」と指摘し、「1期目のトランプ政権時代に始まった米中貿易戦争がすでに一部の外資企業にサプライチェーンの脱中国を促していた。さらに、ここ2年間でコロナ後の中国経済の回復が思うように進まなかったこと、(中国)国内消費が低迷したこと、ロシアのウクライナへの侵攻による欧州経済低迷が間接的に中国の輸出貿易に悪影響を及ぼしたことなどが、外資の中国離れを加速させた」と分析しました。
張氏はまた、「ここに来て中国政府がようやく外資誘致に動いたのは、『トランプ2.0』を見据えた準備。関税戦争による景気後退や外資のさらなる流出に備えている」としたほか、「中国企業が家電や自動車などの分野で輸入品の『代替』を担うようになったことも、外資の中国市場での生存空間を狭める要因になっている」との見方を示しました。
中国企業の「輸入代替」が進み、外資の事業環境を圧迫
オーストラリアのモナッシュ大学ビジネススクールの史鶴凌(シー・ハーリン)教授も「中国は外資企業の進出を許可し、その技術やノウハウを吸収した上で、最終的に国内企業に置き換える戦略を取っている。電気自動車(EV)市場では、中国企業が急速に市場を席巻した結果、外国の投資がストップするケースが見られる」と指摘しました。
また、「中国政府は融資や政策などあらゆる面で本土企業に対してより多くの優遇措置を講じており、これにより外資企業は中国での経営が厳しいと感じる状況になっている」とし、例えば、在中国米国商工会議所が1月下旬に発表した「中国ビジネス環境調査報告」では、32%の米国企業が、「中国本土企業と比べて、市場参入や公共調達の面で不公平な扱いを受けている」と回答しており、特に技術研究開発産業においてその傾向が顕著であると指摘されています。
この調査によると、「中国を最優先の投資先としない」と回答した米国企業の割合は、前年の18%から21%へと上昇し、2020年の10%、2021年の11%と比べて倍増しました。また、回答企業の17%がすでに生産や調達を中国国外へ移転し始めており、前年より6ポイント増加しています。
史鶴凌氏は、「一般的な製造業では、中国国内の企業がすでに外国企業を代替できるようになっている。サービス業の分野では、実際のところ中国は依然として外資企業に多くの参入障壁を設けている。ハイテク分野では技術輸出の規制の対象となっており、それにより外資が中国に流入する可能性は低い。そのため、外資の純流出の傾向は今後も長期にわたって続く可能性が高い」と述べています。
国家安全上への懸念や、政策差別が外資撤退の動きを加速
張弘遠氏は、たとえ消費者向けサービス業であっても、外資企業が不公平な扱いを受ける可能性があると指摘しています。例えば、今年、中国映画『哪吒2』と米国ハリウッド映画『キャプテン・アメリカ4』が同時期に公開された際、一部の映画館は、『キャプテン・アメリカ4』の上映回数を意図的に減らしたり、不人気な時間帯に割り当てたりして、国産映画を優遇する動きがあるとの噂が出ています。
張氏は、「外資が最も関心を持ち、本来最も開放されるべき消費者向けサービス業でさえ、このような差別的な商業行為が行われているのであれば、外資の投資意欲が低下するのも無理はない」と述べています。
米国在住の経済学者である蔡慎坤(ツァイ・シェンクン)氏は、「中国政府が誘致を望んでいる外資の大半は、高性能半導体や半導体関連分野に集中している。しかし、規制環境の不確実性が高いため、外資は慎重にならざるを得ない」と指摘しています。
蔡慎坤氏は、激しい業界内の競争に加えて、外資企業が中国への投資をためらうもう一つの要因として、中国の政治環境がますます厳しくなっていることを挙げています。中国のさまざまな秘密規制から香港の「国家安全維持法」に至るまで、外資企業は法的リスクに対する懸念を強め、どのように対応すべきか分からない状況に置かれていると指摘しています。
蔡慎坤氏はボイス・オブ・アメリカに対し、「誰もがどの法律に違反する可能性があるのか分からない。特に国家安全関連の法規制は厳格化しており、金融業界でも外資企業でも、監督がますます厳しくなっている。現在、中国で雇用を確保したり、投資を行ったり、コンサルティング関連のプロジェクトを進めたりすることは、ほぼ不可能になっている」と述べています。
外資の撤退に加えて、中国企業も資金を海外へ移転させる動きを加速させています。ブルームバーグのデータによると、2024年に中国企業が海外へ投資した額は1730億ドル(約26.4兆円)に達し、この現象は国際的な関心を集めています。
蔡慎坤氏は、この傾向について「中国企業がトランプ氏による関税戦争の再開に備えている可能性がある」と分析しています。特に、中低価格帯の製造業はすでに東南アジア、南米、さらにはアフリカに工場を移転させ、米国の貿易制裁を回避しようとしていると指摘しています。
(翻訳・藍彧)
