台湾の有名芸能人である徐熙媛氏が日本でインフルエンザによる肺炎を併発し、亡くなったというニュースが、中国で大きな注目を集めています。同時に、日本のインフルエンザの流行状況についても関心が高まり、議論が広がっています。2月2日にこのニュースがネット上で拡散されましたが、当初は公式な確認が取れていませんでした。しかし、2月3日、妹の徐熙娣氏がマネージャーを通じて、徐熙媛氏が休暇中に家族とともに日本を訪れた際、インフルエンザに感染し、症状が悪化して亡くなったことを正式に発表しました。この知らせは瞬く間に話題となり、微博(ウェイボー)の検索ランキングでトップとなり、百度ニュースの検索ランキングでも上位5位に入りました。関連記事の閲覧数は15億回近くに達しています。
徐熙媛氏が日本でインフルエンザに感染し、その後亡くなったことを受け、中国のメディアは日本国内で1月以降にインフルエンザが大流行している状況を大々的に報じました。その影響で、「日本のインフルエンザはどれほど深刻なのか?」という話題が急上昇し、「日本でインフルエンザ治療薬が不足している」というニュースも広まりました。SNS上では薬局の品薄写真が拡散され、「日本でも薬が足りないのか」「もう日本に薬を頼むこともできない」といったコメントが相次ぎました。この問題に対する関心が急速に高まっています。しかし、北京の旅行業者によりますと、2月3日時点では徐熙媛氏の訃報が中国人観光客の日本旅行の意欲に大きな影響を与えた形跡はなく、日本行きの問い合わせや航空券の購入状況に変化は見られていないとのことです。
一方、日本のインフルエンザ流行に注目が集まる中、中国国内の状況も深刻さを増しています。むしろ、日本以上に深刻な事態となっている可能性が指摘されています。ここ最近、中国国内のSNSでは「今回のインフルエンザは新型コロナよりもひどい」という声が相次いでいます。北京市、浙江省、天津市などの各地で、多くの人が感染したという報告が寄せられています。発熱が長引き、咳がひどく、倦怠感が抜けないといった症状が多く見られ、肺炎を発症するケースも少なくないようです。北京市在住のあるネットユーザーは、自身と家族3人が次々とインフルエンザに感染し、高熱が続いたうえに解熱剤も効果がなく、最終的には39.8度まで熱が上がったと語っています。別のネットユーザーも、「インフルエンザが原因で肺炎を併発し、入院することになりました」と投稿し、「新型コロナのときよりも症状がひどい」と訴えています。
さらに、天津市のあるネットユーザーは「ずっと高熱が続いていて、何度もぶり返しています」との状況を報告し、多くの人が同様の症状に苦しんでいることが明らかになっています。また、医療従事者もインフルエンザの感染から逃れられていません。北京市の救急医療に従事する医師がインフルエンザに感染し、わずか1週間で症状が急激に悪化しました。発熱や頭痛、倦怠感といった初期症状から、肺炎を併発し、最終的には意識混濁や呼吸困難にまで至ったそうです。さらに、血流障害による皮膚の斑点が現れ、ショック状態に陥る一歩手前だったとのことです。幸いにも適切な治療を受けて回復しましたが、このケースは医療関係者の間でも大きな衝撃を与え、インフルエンザの深刻さを改めて認識させる出来事となりました。
さらに深刻なのは、最近、中国国内でインフルエンザによる死亡例が相次いで報告されていることです。あるネットユーザーは、「会社の同僚が病気を発症してからわずか15日で亡くなった」と明かしました。また、7歳の女の子がインフルエンザに感染し、その後症状が悪化して命を落としたケースも報告されています。さらに、3歳の幼児がインフルエンザに感染してからわずか3日で亡くなったという悲しいニュースも伝えられています。ある母親はSNSで「3歳半の娘がインフルエンザに感染し、発症から21時間で急激に病状が悪化し、最終的に助かりませんでした」と悲痛な思いを語っています。
こうした状況の中、各地の病院では患者が殺到し、対応が追いつかない状態が続いています。北京市の小児病院ではすでに満床となり、夜間の発熱外来も長蛇の列ができています。まるで旧正月の帰省ラッシュのような混雑ぶりだと形容する声もあります。1月16日には、首都医科大学附属小児病院の各フロアでも患者が溢れ、ネットユーザーからは「スーパーよりも混雑している」という声が上がっています。
しかし、中国疾病予防管理センターが発表する公式データを見る限り、こうした深刻な状況は反映されていないようです。最新の統計によると、2025年第1週から第3週までの間に報告されたインフルエンザ様症例は、それぞれ145件、118件、20件となっていますが、具体的な入院患者数や死亡者数についての記載はありません。一方、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表したデータでは、過去1カ月の間に11万人がインフルエンザで入院し、5,000人が死亡したと報告されています。この大きな差を受け、専門家の間では中国のデータの透明性に疑問を抱く声が上がっています。
ウイルス学者の林暁旭氏は、「中国の公式データには入院者数や死亡者数がほとんど記載されていませんが、実際に病院に行けば患者が溢れかえっている状況が分かります。このような情報の不足は社会不安を引き起こす可能性があります」と指摘しています。
また、欧州のウイルス学者である董宇紅氏も、「防疫対策の基本は、感染状況の正確なデータを収集し、それを公開することにあります。感染の実態が分からなければ、効果的な対策を講じることはできません」と指摘しています。
中国国内の感染症流行を監視している専門家によると、現在の流行には複数のウイルスが関与しており、主にインフルエンザA型、新型コロナウイルス(COVID-19)の変異株、そして鳥インフルエンザが同時に広がっているとのことです。各地で隔離施設の拡張も進められており、「大規模な死亡が発生する可能性がある」との懸念も示されています。しかし、中国政府は経済の混乱を避けるため、また国際的な批判を恐れて、実際の感染状況をあまり公表していないとも指摘されています。
こうした状況を受け、専門家たちは市民に対し、個人の防疫対策を徹底するよう強く呼びかけています。インフルエンザは単なる風邪ではなく、高齢者や子ども、免疫力が低下している人々にとっては命に関わる病気です。今後、この感染拡大がどこまで続くのか、そしてどのような対策が取られるのかが注目されています。
(翻訳・吉原木子)