江蘇省や浙江省などの製造業の拠点において、今、静かな「雇用構造の変革」が始まっています。最近、多くの工場で人型ロボットのテストや本格配備が相次いでいます。SNSの動画を見ると、ロボットはすでに実験室を飛び出し、アパレル、自動車、物流といった従来の労働集約型産業に深く浸透しています。人間と同じようにミシンを操作し、流れるラインの上で正確に小包を仕分けるロボットたちの姿がそこにはあります。しかし、技術の進歩を象徴するはずのこの光景は、「ロボットが人間の働く場や生活の糧を奪うのではないか」という根深い懸念を呼び起こし、社会に重い影を落としています。

 こうした人々の不安は決して根拠のないものではありません。ある衣類工場の動画では、ずらりと並んだ人型ロボットが黙々とミシンを操作しており、かつての活気ある手作業の現場とは対照的な、冷徹な機械の光景が際立っています。あるネットユーザーは「ロボットが作った服を誰が消費するのか。まさかロボットが買うわけでもあるまいに」と自嘲気味にコメントしました。また、浙江省のプレス工場が100台のロボットを導入したニュースには、「結果的に工場長しか残らなくなった。果たして喜ぶべきことか」という切実な問いも寄せられています。ハイテクブームの裏で、一般労働者は働く場を失う強い危機感に直面しています。

 この危機の深刻さは、中国の雇用市場が極めて厳しい冷え込みを見せている背景にあります。雇用の悪化は若年層にとどまらず、あらゆる業界と全年齢層を巻き込む構造的な嵐へと発展しています。かつて成長を謳歌した大手ITや金融、不動産セクターに至るまで、人員削減の波が次々と押し寄せています。一定の技術や経験を持つ中堅社員であっても、ビジネス界の「35歳の壁」から逃れることは困難です。多くのホワイトカラーや技術者、中高年層が無情にも労働市場から押し出され、社会の雇用の受け皿はすでに限界に達しつつあります。

 失業の波の中で、ある数字が注目を集めています。データによると、ギグワーカーなどの「柔軟就業(流動的な就業形態)」の規模はすでに約3億2000万人に達し、都市部就業人口の4割以上に相当します。しかし、これは膨大な失業人口を覆い隠す「隠れ蓑(かくれみの)」にすぎないとの見方も少なくありません。ネット配車やフードデリバリー、宅配便の仕分けなど、基本的な保障を欠いた職種が、失業後に家族を養うための最後の命綱となっています。この巨大な集団の背後には、住宅ローンや教育費を払い、日々の暮らしを必死に守ろうと苦闘する無数の労働者の姿があります。

 しかし、人型ロボットの大規模な参入は、圧倒的な勢いでこの最後の砦さえも崩そうとしています。経営者にとってロボットの導入は、極めて冷徹なコスト計算に基づいています。現在のビジネス環境では、月給4000元から5000元の労働者を雇う場合、法定の「五険一金(5大保険と住宅積立基金)」を納めると月額コストは6000元以上に跳ね上がります。こうした付加コストは人件費の3割以上です。アパレル加工業を営む呉さんは実態をこう明かします。「労働者1人の給与と社保で月に6000元以上かかりますが、ロボットなら1台数万元で済みます。一度導入すれば社会保障費も不要で、労働トラブルに悩むこともありません。経営者からすれば、これほど合理的な選択肢はないのです」。

 この自動化の流れは多分野で急速に拡大しています。広州の物流倉庫では、人型ロボットが荷物を反転させ仕分け口に投入する実験が進行中です。また、縫製機械大手のジェック・テクノロジーは2000台のロボットを注文し、EV大手のBYD(比亜迪)も2026年までに自社開発ロボット2万台以上を配備する計画を立てています。現段階の人型ロボットは単純作業しか行えず、効率も人間の2から3割程度にとどまると指摘されていますが、コスト削減を迫られる企業側は、年内にも生産現場への本格導入を急いでいます。

 温州市で機械部品工場を経営する王さんは、この動きの本質が「実質的な人減らし」であると指摘します。「経営者がロボットを選ぶのは、人が足りないからではなく、人間を雇うコストが高すぎるからです」と語る通り、ロボットは休暇も求めず労働争議も起こしません。しかし王さんが危惧するのは、厳しい雇用情勢下でも政府が様々な補助金を通じて企業によるロボットへの置き換えを強力に後押ししている点です。一般労働者の職が、産業高度化や業績アピールのために犠牲になっています。

 製造業に30年携わる廖さんも、世界的な受注減と国内コスト高の二重苦に直面する中、雇用維持の支援策よりも国家スローガンの下で行政主導のロボット導入が加速していることに憂慮を示しています。実態を顧みない急進的な政策は、経営に行き詰まった企業と労働者をさらに窮地に追い詰めています。

 実際、こうした政策の方向性は大きな矛盾をはらんでいます。政府は表向きには雇用の安定を掲げながらも、公的資金を用いた補助金でロボット導入を促し、結果的に労働者の職を奪っています。オフィスを去ったホワイトカラーが再就職に失敗し、ネット配車で生計を立てようとしても自動運転車に道を阻まれます。工場のブルーカラーがリストラされ、デリバリーや仕分けの現場に活路を見出そうとすれば、そこでも人型ロボットが待ち構えています。このような全方位的な技術の代替は、社会の最も弱い立場にある労働者から自活の道を徹底的に奪いつつあるのです。

 技術の急進的な進歩と置き去りにされる市民生活との乖離は、社会の安定において重大な懸念材料です。健全な社会とは、労働を通じて富が各階層に循環する社会です。しかし性急な自動化は、本来一般家庭に支払われるべき労働の対価を、テクノロジー大手や資本家の利益へと直接吸収してしまいます。3億人を超える流動的就業者のセーフティネットが冷酷に引き裂かれ、生計を失った人々が社会の周縁部に滞留するとき、蓄積された閉塞感は限界点に達しかねません。産業優先・民生後回しの政策は、壮大な産業高度化のストーリーの陰で、多くの人々の暮らしと尊厳が静かに切り捨てられているという厳しい現実を突きつけています。

(翻訳・吉原木子)