財新/S&Pグローバルが3日に発表した中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.1を記録し、前年12月から0.4ポイント低下し、過去4か月で最低水準となりました。この指数は2024年12月にも1.0ポイント低下しており、中国の製造業の生産・経営活動が継続的に減速していることを示しています。同時に、米国が中国製品に対して10%の関税を追加したことで、中国の繊維・アパレル業界はより厳しい競争環境に直面し、企業の東南アジアへの移転が加速しています。

 PMI指数は50を景気の分岐点とし、50以上は製造業の拡大を、50未満は縮小を示します。1月のデータは依然として拡大圏にあるものの、継続的な低下傾向が業界の成長鈍化を示唆しています。受注量の増加や生産の加速により、企業は引き続き原材料の調達を拡大していますが、雇用状況は大幅に悪化しました。1月の雇用指数は2020年3月以来の最低水準に落ち込み、企業のコスト削減による人員削減や、従業員の早期帰省が要因と考えられます。

 原材料の購入価格指数は50の分岐点まで下がり、企業のコストは横ばいとなりました。一方で、出荷価格指数は2か月連続で縮小圏に入り、下落幅が拡大しており、企業の販売価格が低下し、利益率が圧迫されていることを示しています。さらに、輸出受注指数も2か月連続で景気の分岐点を下回り、外需の持続的な低迷を反映しています。

 1月27日、中国国家統計局が発表した製造業PMIは49.1となり、市場予想を下回り、2024年8月以来の最低水準を記録しました。一方、財新PMIは調査範囲が比較的小規模で、輸出志向の企業に重点を置いているため、データは外需が製造業に与える影響をより明確に反映するとされています。

 2月1日、米国のトランプ大統領は大統領令に署名し、2月4日より中国からの輸入品に追加で10%の関税を課すことを決定しました。また、メキシコとカナダからの輸入品にも25%の関税を適用すると発表しました。これに対し、中国の公式メディアは強く反発し、この措置が米国自身により大きな損害をもたらすと主張し、中国には貿易戦争に対抗する強力な能力があると強調しました。しかし、実際には、この関税政策は特に中国の繊維・アパレル業界に大きな影響を及ぼしています。

 中国服装協会のデータによると、2024年前三四半期における中国のアパレル企業の売上高利益率はわずか4.24%で、前年同期比0.14ポイント減少しました。服飾品の輸出量は前年同期比11.3%増の252.5億点に達しましたが、輸出単価は11.8%下落し、1点あたり3.8ドルとなりました。つまり、販売数量が増加しても企業の利益は依然として圧迫され続けています。

 新たな関税政策は、繊維企業の利益率をさらに圧縮しています。アパレル業界の平均利益率は4.24%にすぎませんが、10%の追加関税はこの利益率の2倍以上に相当し、多くの企業にとって米国市場での事業継続が困難な状況となっています。実際、トランプ政権が2018年に中国製品への第一弾の関税を導入して以来、中国の対米繊維製品の利益率は大幅に縮小し、一部の企業はすでに生存の危機に直面しています。

 新たな関税圧力を受け、多くの中国繊維・アパレル企業が東南アジアへの移転を加速させています。BBCは2日、中国の商人・黄氏がカンボジア・プノンペンに2つ目の工場を設立し、シャツやインナーウェアなどの生産を行っていると報じました。彼によると、一部の海外顧客は供給業者に対し「生産拠点を移転しなければ契約を解除する」と通告しており、仮に生産を中国国内にとどめた場合、10%の追加関税により会社の利益は80万ドル減少し、事業継続が困難になると試算しています。

 同様の状況は業界全体で広がっています。ナイキ(Nike)、アディダス(Adidas)、プーマ(Puma)といった国際ブランドは、すでに大規模な生産拠点をベトナムに移転しており、中国の繊維企業も急速にサプライチェーンの再編を進めています。カンボジアでは、山東省、浙江省、江蘇省、広東省からの企業が続々と進出し、冬用コートやセーターの生産を行っています。業界関係者は、この動きが今後さらに加速し、中国の繊維業界の生産拠点はより分散化すると予測しています。

 アパレル業界だけでなく、消費電子製品の輸出企業も影響を受けています。ある匿名の中国系消費電子メーカーの関係者は、米国の追加関税により米国市場を放棄せざるを得なくなり、他国市場への転換を余儀なくされていると米国のメディア「ボイス・オブ・アメリカ」に対して語りました。独立系経済評論家の賀江兵氏は、中国経済は近年、輸出に大きく依存して成長してきたが、今回の米国の新たな関税政策は、中国経済全体に深刻な打撃を与えるだろうと指摘しました。

 また、米国の関税政策に加え、中国政府の税制変更も繊維企業の負担を増大させています。2024年11月15日、中国財政部と国家税務総局は、12月1日より一部の繊維製品の輸出税還付率を引き下げると発表しました。具体的には、炭素繊維やガラス繊維などの製品に対する税還付率が13%から9%に引き下げられました。この政策変更により、中国の繊維輸出企業の競争力が一段と低下し、一部の企業は税制面で有利な東南アジアへの移転を検討せざるを得なくなっています。

 企業コンサルティング会社「アリックスパートナーズ(AlixPartners)」のアナリスト、姚侃氏は、中国企業は米国の追加関税という課題だけでなく、今後、米国が東南アジアのサプライチェーンに対しても関税措置を取る可能性を考慮する必要があると指摘しました。

 2024年3月に百運網が発表したデータによると、中国から米国への衣料品輸出にかかる関税率は、素材やデザインによって大きく異なります。中国の対米繊維製品の輸出割合は、織物衣料が45%、ニット衣料が35%、家庭用繊維製品が20%を占めています。例えば、化学繊維のセーターは米国の輸入関税率が32%と非常に高いのに対し、綿製のセーターは16.5%にとどまります。同じワンピースでも、綿製の織物ワンピースの関税率は8.4%ですが、化学繊維製ワンピースは16%と2倍近い税率が課されています。また、製造方法によっても関税率は異なり、例えば女性用綿製コートの場合、ニット製は15.9%の関税がかかるのに対し、織物製は8.9%に抑えられています。

 このように複雑な関税環境の中で、中国の繊維・アパレル企業はグローバルな生産戦略の大幅な見直しを迫られています。米国の関税圧力、輸出税還付率の引き下げ、生産コストの上昇といった要因が重なり、多くの企業が東南アジアでの新たな生産拠点設立を選択し、国際市場での競争力を維持しようとしています。

 東南アジアは中国の繊維産業にとって新たな製造拠点として台頭しており、外需の低迷と国内政策の変化という二重の圧力の下、中国製造業が今後どのように新たな成長の原動力を見出すかが、喫緊の課題となっています。

(翻訳・吉原木子)