2025年、中国でドローン産業がかつてない勢いで拡大しています。若者に人気の職業となったドローンパイロットは高収入を得られる一方で、ドローンそのものの品質や安全性に関するトラブルが急増し、社会的な不安が広がっています。部品の質の低下、ソフトウェアの不具合、バッテリーの危険性、そして不十分な監督体制。華やかな成長の裏側で、空の産業は新たなリスクを抱え始めています。

 中国ではここ数年、ドローンが人々の生活に急速に入り込みつつあります。

 低空域を活用した新産業が一気に拡大する中、ドローン操縦者(ドローンパイロット)が中国の新たな人気職種として注目されています。給与水準の高さや仕事としての魅力、将来性が相まって、多くの若者がこの分野に参入しています。

 その一方で、ドローン本体の品質やソフトウェアの不具合、操縦技術の未熟さ、メンテナンス体制の不足など、さまざまな問題が相次いで報じられています。市場拡大のチャンスと品質リスクが同時に存在し、産業チェーン全体にとって避けて通れない課題になりつつあります。

なぜドローンパイロットが人気なのか

低空経済の拡大によって、ドローンパイロットの求人は急増しました。業界データによれば、ドローンはすでに農業、物流、測量、電力設備の点検、緊急救援、映像制作など、幅広い分野で大量に活用されています。そのため需要が非常に大きく、地方政府や企業のデータを見ると、学歴よりも技能と実務経験が重視されている傾向があります。資格を持つドローンパイロットの場合、月収はおよそ日本円で16万円(8000元)から28万円(1万4000元)に達します。特に農業など季節性の強い分野では、優秀なドローンパイロットの年収が日本円で約200万円(10万元)を超えるケースもあります。

 湖北省秭帰県(しきけん)では、資格を持つドローンパイロットが2000人以上おり、毎年のドローン作業面積は100万ムーに達します。荷物の空輸量は約80万トンにのぼり、繁忙期には1台のドローンで1日に約2トン(4万斤)以上のミカンを吊り上げて運ぶことができます。ドローンパイロットの平均年収は日本円で約200万円(10万元)を超えており、ドローンが効率向上だけでなく大きな雇用を生み出していることが分かります。このため、多くの若者が仕事終わりや週末に夜間のドローン講座へ通い、早くこの業界に入ろうとしています。

 山間部のように交通が不便な地域では、ドローンが荷物を越山して運べるため、そこで働くドローンパイロットの収入は特に高くなりやすい傾向があります。こちらのブロガーは、丘陵地帯で果物を運ぶ仕事をしているドローンパイロットで、動画から実際の収入がどの程度なのかを見ることができます。

 1日に約10トン(2万斤)を運ぶことは問題なく、500グラムあたりの作業代が約0.24円(0.12元)のため、1日約5万円(2400元)稼げます。そこからガソリン代約6000円(300元)、地上作業スタッフへの支払い約6000円(300元)がかかるため、手元には約3万6000円(1800元)が残る計算になります。朝7時半から夕方5時半まで働き、途中に1時間の休憩を挟んで、実働9時間ほどとのことです。

 中国民航当局と市場予測によれば、低空経済市場は今後数年で急成長し、ドローン関連の人材不足は非常に深刻になる見通しです。業界内ではドローン操縦者の不足が100万人規模に達すると指摘され、全国的にドローン技能講習が盛り上がっています。多くの地方政府が補助金制度を設けたり、ドローン操縦を専門職として評価制度に組み込んだりなど、育成支援に積極的な姿勢を見せています。

ドローンの品質懸念

 ここ数年、ドローンは軍事用途や空撮愛好家だけのものではなくなり、商業物流、農業、インフラ点検、さらには都市管理まで広く使われるようになりました。産業規模は急速に拡大し、価格は下がり、活用シーンも広がっています。しかし、その一方で品質や安全性への不安も同時に大きくなってきました。

 まず、製品ごとの品質差が大きいことが産業発展の大きなリスクになりつつあります。以前は、技術力のある大手数社が市場のほとんどを占めており、価格は高いものの、飛行制御や障害物回避など基本機能の信頼性は比較的高いものでした。しかし、最近は中小メーカーが一気に参入し、価格競争が激化しています。コストを下げるため、制御基板やセンサーを廉価品に置き換える例が増えており、飛行制御精度が低下しています。ネット上では、離陸直後に操縦不能になるケースや、安定飛行中に突然墜落する事例が後を絶ちません。こうしたトラブルの多くは、部品の質の低下と密接に関係しています。

 次に、ドローンが使われる環境が急速に複雑化していることも、品質リスクを高めています。今ではドローンは単なる空撮だけでなく、市街地での配達、森林パトロール、水辺での捜索など、過酷な現場でも使われています。しかし、多くの商用ドローンは設計段階で高湿度、電磁干渉、建物密集地帯など、特殊環境のリスクを十分に考慮していません。そのため、検証が不十分な飛行制御システムでは、飛行中に位置情報がずれたり、GPS信号が途切れたり、障害物回避が誤作動を起こすなど、事故につながる可能性があります。

 第三には、バッテリーの安全性がドローンの品質問題における新たな焦点となっています。より長い飛行時間を実現するため、多くのメーカーが高エネルギー密度のリチウム電池を採用していますが、品質が悪い電池は発火や爆発の危険性があります。また、バッテリーの劣化が早いという不満も多く、本来の飛行時間を大きく下回るケースも珍しくありません。

 第四には、ソフトウェアやファームウェア更新の不備です。メーカーの中には、十分なテストを行わずに更新データを配布し、アップデート後に操縦が不安定になる、GPSが乱れるなど、新たなトラブルを招くことがあります。また、企業が倒産またはサポートを停止した場合、その製品が一切の更新を受けられなくなり、空の上で「潜在的な危険物」となる可能性もあります。

 最後に、急速な産業成長に比べて、監督体制の整備が追いついていない点も問題です。認証制度や出荷前の検査基準、事故の追跡システムがまだ十分ではなく、多くの低価格ドローンは厳しい信頼性検査を受けていません。消費者側も品質を判断する手段が乏しく、事故後の責任の所在が曖昧になるケースも少なくありません。統一された飛行ログや記録装置の基準がないため、最終的にユーザーが泣き寝入りする状況が生まれています。

 ドローン産業は確かに多くの分野を変えつつありますが、品質管理の強化と監督制度の整備が追いつかなければ、この空の産業革命は公共の安全を脅かす存在にもなりかねません。

(翻訳・藍彧)