2024年に入ると、中国の非正規雇用(臨時雇用型)労働市場はますます不況に陥り、出稼ぎ労働者(農民工)の待遇は悪化し続け、仕事を見つけることも難しくなっています。

北京郊外、出稼ぎ労働者の街・馬駒橋

 北京市郊外の馬駒橋は、出稼ぎ労働者の街として知られ、非正規雇用の労働市場として有名です。「困ったら馬駒橋にいく」という言葉が広く伝わっており、これは失業した人々が最初に考えるのは馬駒橋での仕事探しであるという意味です。しかし近年、馬駒橋でも「人が多い、仕事が少ない、給料が安い」という状況が見られ、中国人の就職難を反映しています。

 馬駒橋は北京市の東南部、通州区と大興区の境界に位置しています。橋の北側は経済開発区であり、南側は商業地域です。そこで最も多いのは人材斡旋所であり、道端には時給数十元(約300円)から700元(1万円超)の派遣、日払い、時給制のあらゆる仕事の広告が目につきます。

 香港メディア「明報」3月24日の報道によると、3月中旬には春が始まろうとしているが、北京の気温は夜明け前でも零下1度で、馬駒橋の路上ではすでに多くの中年男性が集まっています。スマートフォンで動画アプリを見ている人もいれば、リュックを抱えて居眠りしている人もいます。仕事探しのため、一晩野宿する人もいます。

河北省邯鄲市出身の王さん

 河北省邯鄲市出身の王さん(54)は、生計を立てるために北京で約4年間働いてきました。以前は順義区でアルバイトしていました。故郷に帰省して旧正月を過ごした後、仕事探しに馬駒橋にやってきました。ここに来てすでに5日間になるが、「仕事が少なく、人が多い」と彼が述べました。

 馬駒橋では競争が激しいだけでなく、年齢制限のある仕事も多く、給料も下がっていると李さんが述べました。前日、彼は宅配物を仕分ける仕事に応募し、日給150元(約3000円)、勤務時間は朝7時から夜7時まで、通勤時間を含めると、1日15時間かかります。彼は馬駒橋に来る前に、同郷の人から聞いた話では、昨年は馬駒橋で宅配物の仕分けや荷降ろしの日給が少なくとも180元(約3600円)で、11月11日(中国のネットショッピングの大バーゲンの日)の前日には日給350元(約7000円)に達していました。

馬駒橋の早朝の光景

 ある斡旋所では、入り口近くのテーブルに置かれた拡声器から「80元(約1600円)」という女性スタッフの声が繰り返されました。この半日の仕事は午前7時から午後12時までで、宅配便会社の荷降ろしをする仕事でした。報酬が少なく、半日の仕事には食事がついていないため、ほとんどの人が首を横に振って去りました。しかし、低賃金であっても、即座に(定員)7人の女性が採用されました。

 馬駒橋の街中から路上にはますます人が集まります。午後4時50分時点では100人ほどしかいなかったが、10分後にはすでに200人ほどに増えました。

 早朝には馬駒橋に集まった人々は大まかに3つに分かれています。1つはすでに日給アルバイトの仕事を見つけた人々で、馬駒橋のバス停で早朝バスを待っている労働者です。もう1つは道端で仕事を待っている臨時労働者で、その場で仕事が見つかるまで待機しています。最後の1つは人材斡旋所に入っている求職者です。

 ある人材斡旋所では、入口近くのテーブルに設置された拡声器が繰り返し女性スタッフの声で「日給150元(約3000円)、終業後の精算、男女問わず募集中」とアナウンスしています。日給150元の仕事はラベル貼りだと人材斡旋所のスタッフが紹介しました。この仕事の募集は即座満員になり、午前5時半から名前を呼び始め、女性を中心とした臨時労働者が応答し、列になってバスに乗り、仕事場に向かいました。

 去年の6月から7月にかけて、中国のSNSでは「北京馬駒橋の非正規労働市場で賃金が下がっている」という情報が広まり、話題となりました。

李忠さんのケース

 中国紙「経済観察報」は2023、馬駒橋でアルバイトをしている李忠さんを取材し、記事を掲載しました。李忠さんは、午前4時20分に12時間の宅配物の荷下ろし作業を終えたばかりで、すぐに馬駒橋に戻り、新しい仕事の機会を探していました。彼は2023年の賃金が段階的に下がり、人材斡旋業者が提供できる日給の仕事の数も減っていることに気付きました。

 宅配物の積み下ろしの仕事を例に挙げると、2023年当時、夜勤(12時間)の日給は170元(約3400円)しかなかったが、1年前の2022年には200元(約4000円)以上でした。

 「コロナが流行していた頃と比べて、今は求職者があまりにも多すぎる。毎日100人のうち、半分以上が仕事を見つけることができない。毎日同じ状況が続いており、そのため人材斡旋業者は臆することなく安い賃金で仕事を提供している」と李忠さんが述べました。

生存の縁に立たされる農民工たち

 馬駒橋の労働市場では、45歳が大きな分かれ目となっています。人材斡旋業者はこれを基準にして、求職者を異なる作業分野に振り分けています。ある人材斡旋業者は、「馬駒橋の労働市場で最も溢れているのは50歳以上の出稼ぎ労働者だが、(求人の多い)流れ作業の工場では常に若者を求めている」と述べました。

 中国国家統計局が発表した「農民工監測調査報告」によると、出稼ぎ労働者の平均年齢が上昇しています。2022年、出稼ぎ労働者の平均年齢は42.3歳で、前年より0.6歳上昇しました。そのうち、50歳以上の割合は29.2%(総数8632万人以上)で、前年より1.9ポイント上昇しました。一方、10年前の2012年には、この割合は15.1%でした。

 河南省鄭州市の非正規労働市場の状況は、北京の馬駒橋よりもさらに悪いです。建築業界の不況の影響で、主に建設業の日雇い労働者である高齢の出稼ぎ労働者は、大部分が失業しています。出稼ぎ労働者の最高齢者は70代で、60代の出稼ぎ労働者も大勢います。厳しい求職環境の中、農村の出稼ぎ労働者は医療保険料の高騰や農村の低い年金というジレンマにも直面しています。

 中国新就労形態研究センターの張成剛主任は2023年末、北京、鄭州、杭州、深センの4つの都市の非正規労働市場を調査した結果、数年前と比べて非正規労働市場は劇的に変化していると明らかにしました。仕事の機会がますます少なくなり、実際に仕事を見つけられる人の割合が非常に低くなっています。

 張成剛氏は、「日給の仕事は多くの出稼ぎ労働者にとって最後の手段になっている。この選択肢以外に、彼らはどこでお金を稼げるのだろうか?他に思いつかない。かなりの数の出稼ぎ労働者が生存の縁に立たされている」と述べました。

(翻訳・藍彧)