新疆ウイグル自治区にある古代の城の遺跡(International Dunhuang Project, CC BY-SA 1.0

 人類の歴史には、多くの文明が壊滅的な災害によって滅んだ。これに対し我々が考えずにはいられないのは、恐ろしい災難は人類がひどく堕落したときに降りかかるのではないかということだ。古代ホータン王国(タリム盆地のタクラマカン砂漠の南に位置し、現在では中華人民共和国新疆ウイグル自治区にあたる)の北にあったとされるお城の伝説は、伝説中の楼蘭(ろうらん)王国が消失した原因と似通った部分がある。

 唐代の高僧・玄奘は『大唐西域記』において、一夜にして砂漠に消えた「曷労落迦」(クロラカ)というお城について記した。城の人々は平和で、裕福な暮らしをしていたが、仏法を信じず、仏像も大事にしなかった。

 ある日、一人の阿羅漢(仏教において最高の悟りを得た聖者)が仏像の参拝にその城を訪ねた。現地の人は阿羅漢の独特な外見と仏像参拝の行為に驚き、直ちに城主に報告した。城主は阿羅漢に沙と土で塗るようにと、さらに、食べ物を与えてはならないと命じた。しかし、一人だけ以前隠れて仏像を参拝したことがある人が、阿羅漢のあまりにも悲惨な遭遇を憐れだと、こっそり食べ物を与えた。

 ある日、阿羅漢はその食べ物をくれた人に「七日後、空から沙が降かかり、生き物一つも残らずにこの城は埋め尽くされるのだ。早めにこの城を出て行ってください」と話し、そのまま姿を消した。

 その人は阿羅漢の話を自分の親戚や友人に伝え、城を脱出するように説得したが、誰一人信じようとしない。次の日、空から様々な宝石、貴金属などの宝物が舞い降りてきた。人々は喜びに満ち、彼の話を聞くどころか、かえって彼を罵倒した。この城で彼だけが災難は必ず来ると信じていた。

 彼は床を掘り、城外への地下通路を造っている中で、ついに七日目になった。深夜になって、みんなが熟睡している間、空から大量な砂が降りかかり、城はあっという間に砂で埋め尽くされた。彼一人だけ地下通路から城を脱出することができたのだ。玄奘がいた唐の時代には、その城は何一つかけらも跡も残らず、砂丘となっていた。

 この物語は伝説にしか聞こえないが、現代の考古学者が中国の新疆に位置するホータン王国の遺跡を掘っていた際に、不意にこの物語にあったような城を発見した。これほど栄えていた城がなぜ沙に埋め尽くされたのか、その疑問は未だに解明されていない。

 歴史は「猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」(『平家物語』)というように、物質的な楽しみを極めてもいずれは滅びる教訓を絶えず示した。人類が道徳を捨て、腐敗しかかるときに天からの災難が舞い降りかねない。善良を守り、伝統文化を重視すべきだ。

(翻訳・Jerry)