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 北京五輪では、中国チームは176名のアスリートを派遣した。その多くが海外からの引き寄せで、海外で生まれ育ってトレーニングを受けていた。しかし、その中には元の国籍を放棄していないアスリートも少なくない。

 ミズーリ大学セントルイス校の人類学教授であるスーザン・ブラウネル氏は、ボイス・オブ・アメリカの取材に対し、中国は海外で訓練を受けた30人のアスリートを募り、北京五輪に中国代表として出場さていると述べた。

 北京五輪で中国男子ホッケーチームのゴールキーパーを務めたジェレミー・スミスは、米スポーツ専門チャンネルESPNに対し、中国の代表として出場しても米国の国籍は放棄していないと語った。中国共産党(以下、中共)が自分を採用した時も、米国籍を放棄するよう求めなかったし、チームには米国から3名、カナダから7名、ロシアから1名のアスリートがいるとのこと。

 シドニー大学の国際法専門家であるジャンヌ・フアン(Jeanne Huang)准教授は、通常であれば、中共も国際オリンピック委員会(IOC)も、アスリートが元の国籍を保持することを認めないはずだと述べた。「オリンピック憲章の第41条は、アスリートが代表する国の国籍を持つべきであると明記している。中共も二重国籍を認めないと明確にしている。つまり、これらのアスリートが元の国籍を放棄しない限り中国籍を持つことは不可能だ」と述べた。また、中共に特別な貢献をした、あるいは中共と強い関係を持つ人だけが二重国籍を認めると強調した。

 その後、ラジオ・オーストラリアの記者はIOCに同問題について質問したが、「この問題はオリンピック憲章に従って施行されている」と回答された。しかし、オリンピック憲章では、複数の国籍を持つ参加者は、1つの国、つまりパスポートに記載されている国しか代表できないと明記されている。

 メルボルン大学アジア研究センターのソウ・キート・トック(Sow Keat Tok)氏は、中共は今年のオリンピック開催地としての面子を立てるために、他国から多くのアスリートを募集したと述べた。これらのアスリートを引き寄せるために国籍要件を免除する可能性があると分析した。

 ウェスタン・カロライナ大学のスポーツ専門家であるハイディ・グラッペンドルフ(Heidi Grappendorf)准教授は、北京五輪について、深刻な人権犯罪を犯した国で開催されることなど、すでに多くの論争が起きていると指摘した。また、中共は米中関係が非常に緊迫している国際社会では非常に人気がないため、IOCはさらなる論争を引き起こす可能性のあることについて、沈黙を守ることを選択するだろう。

(翻訳・徳永木里子)