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 中国国家統計局は17日、2021年の出生数が1062万人だったと、最新のデータを発表した。1200万人だった20年から約12%減り、出生率が過去60年間で最少である。

 同統計によると、中国の出生率は5年連続で低下傾向にあり、1949年の中国共産党(以下、中共)政権創立以来、最も出生数が少なかった大飢饉(人類史上最大級の人為的災害の1つ)が発生した1961年の1187万人よりも下回った。中国の人口1000人当たりの出生数は、2020年の8.52人から2021年の7.52人に減少した。初めて中国の死亡者数が新規出生者数に近づいたという。

 分析によると、この割合で、中国の総人口はまもなく減少に転じ、「高齢化」はますます深刻になり、中国の人口構造は大きな課題に直面するだろうという。中国の独立系人口問題専門家の何亜福氏は、中国人口は基本的に「ゼロ成長の範囲」にあり、減少傾向は「不可逆的(ふかぎゃくてき)」であると述べた。

 中国の人口危機は、1970年代後半に中共によって実施された「1人っ子」政策、社会・経済状況により中国の女性が出産を遅らせるか完全に放棄すること、女性より男性の方が多いという男女比の不均衡による結婚率の低下、中国の若者の「躺平(タンピン)」(注)を選択するなど、多くの要因に起因しているという。

 昨年、中共は「3人っ子」政策を全国的に推進し始めた。地方政府は、現金奨励金や出産休暇の延長などの措置を導入し、出産を促進しようとしていた。しかし、これらの措置は目立った効果を上げていないようで、中国の出生率は下がり続けている。

 米エコノミストである謝田氏は、中共が強制的に人口を抑制するのは簡単だが、人口を増やすのはそれほど簡単ではないのだ考えている。「今の傾向は、若い人たちが結婚も出産もしたくないことだ。住宅費、教育費、保育費、医療費など、子供を2人産むなんて、負担するコストを考えるだけでぞっとする」

 謝氏はまた、中国の若者が「躺平」を選ぶ理由は、賃金の上昇がゆっくりだが、物価の高騰がはやくて、一流都市でマイホームを買うことがほとんど不可能で、未来や希望がまったくないと感じたのだと分析した。「躺平」を追求する人々は、生きたいという強い欲望さえ持っておらず、ましてや家庭や事業を持ち、子どもを産むなんてなおさら不可能だと主張した。

 米スカウクロフト戦略・安全保障センターの上級研究員のデクスター・ロバーツ氏はこのほど、大西洋評議会 (アトランティック・カウンシル) で「中共は人口の時限爆弾を解除できるか」と題する論文を発表した。その中で、中共が人口動態の「時限爆弾」に直面しており、それが国民の購買力、生産力、そして中国の将来の経済成長、ひいては中国の政治的安定に影響を及ぼすと述べた。

 注:「躺平(タンピン)」とは、「横になる」という意味である。結婚しない、子供を産まない、家や車を購入しない、生計維持のための最低限の仕事しかしない。こうした「躺平」は、若者の間で瞬く間に幅広い共感と支持を集めた。

(翻訳・徳永木里子)