習近平総書記と李克強総理(パブリック・ドメイン)

 中国共産党(以下、中共)第19期中央委員会第6回全体会議(19期6中全会)が終了してから5日後、中共公式メディア新華社通信は毛沢東、鄧小平の時代に続く第3の「歴史決議」を発表した。

 当決議は、中共上層が激しい闘争と妥協を経た産物だとみなされている。決議の半数以上が習近平政権発足後の業績を称賛しており、毛沢東、鄧小平、江沢民が犯した歴史的な過ちについて、軽く触れただけである。また、決議の中で言及された台湾問題が注目を集めた。

 妥協の産物

 当決議の全文は約3万6千字で、習近平総書記が最も多く22回言及され、毛沢東は18回、鄧小平は6回、江沢民と胡錦濤はぞれぞれ一回ずつ言及された。この決議は妥協の産物だとみなされている。

 中共公式メディアの報道によると、毛沢東の指導的地位を確立した1945年の第1次決議と、文化大革命(以下、文革)を否定し、鄧小平の指導的地位を確立した1981年の第2次決議について、中共のいわゆる「歴史決議」をどう見るかが議論の焦点となった。

 習近平総書記のこの歴史的決議は前の2回の決議を否定するのではなく、その基本的な論述と結論が「今でも適用されている」としている。

 文化大革命を「10年の内乱」と指摘

 また、決議では毛沢東時代に行われた「大躍進」運動、人民公社などは過ちであり、「反右派闘争」も深刻だったと指摘している。

 当決議は、毛沢東が当時の中国の「階級闘争、及び党と国家の政治状況を完全に誤った判断に基づき、『文化大革命』を発動・指導した」とし、「林彪、江青をはじめとする2つの『反革命集団』は毛沢東の誤りを利用し、国に害を及ぼす大量の罪悪活動を行い、10年の内乱を引き起こした」と述べている。

 鄧小平が1981年に主催した第2次歴史決議と同様に、今回の決議は文革を「内乱」としたが、指導者が引き起こした政治運動が「反革命集団に利用された」ことを強調し、毛沢東の罪を軽くしようとした。

 周永康・薄熙来らに言及

 さらに、今回の決議では、中共党内の激しい闘争の内幕も明らかにした。決議文によると、習近平は腐敗撲滅キャンペーンにおいて、周永康、薄熙来、孫政才、令計劃などの元中共高層の重大な規律違反・違法事件を摘発した。軍における反腐敗運動では郭伯雄、徐才厚、房峰輝、張陽などが摘発されたという。

 習近平政権発足後、反腐敗運動を引き起こし、打撃された政界や軍隊の勢力のほとんどが江沢民と曽慶紅派であった。今回の決議で、周永康と薄熙来らが取り上げられ、江曽派が危いのではないかと考えられる。

 台湾問題に注目が集まる

 今回の決議で、「平和統一、一国二制度」を台湾に対する基本方針とした上で、「反国家分裂法」を制定した。「台湾独立勢力を断固抑制し、台湾問題の解決と祖国の完全統一実現は党の歴史的任務だ」と述べた。

 台湾大学政治学科の明居正(めい・きょせい)名誉教授はこの前、希望之声に対して、習近平総書記の3期目の就任は「台湾問題を解決する」ことを条件としている可能性があると指摘した。明教授は、習近平は本当にそうするとは限らないが、このように条件づけなければ、彼は中共の党首であり続けることができないと述べた。

 中共が2005年に制定した「反国家分裂法」の中で、最も注目すべきなのは第8条である。同条は、3つの場合に政府が「非平和的な方法、及びその他の必要な措置によって、国家主権と領土保全を守る」ことを明示している。この3つの場合はそれぞれ、台湾が中国から分裂されるような重大な事変が起こった場合、台湾が中国から分裂されるような重大な事変が起こりそうな場合、平和統一の可能性が完全に失われた場合である。そのうち、最後の「平和統一の可能性が完全に失われた場合」が最も重要であり、つまり、中共は平和統一が不可能だと判断すれば、いつでも台湾を武力で侵犯することができる。したがって、中共の武力による、台湾侵犯の可能性を軽視してはならない。

(翻訳・吉原木子)