(巴丢草ツイッターより)

 中国系オーストラリア人の芸術家バディウツァオ(巴丢草)氏は中国の政治を風刺する漫画を作成することで有名。13日、イタリア北部の都市ブレーシャで初の国際的な絵画の個展を開催した。SNSで毎日のように殺害予告をされているという状況にもかかわらず、バディウツァオ氏は「アートを使って嘘を暴いていきたい」と語っている。

 サンタ・ジュリア美術館で11月13日に開幕し、来年2月13日まで開催されるバディウツァオ氏の個展「China is (not) near(中国は近くに(ない))」は、中国共産党(以下、中共)の弾圧に対する批判と、中共が最も敬遠している新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)の起源を検証するものである。

 在イタリア中国大使館は先月、ブレシア市に書簡を送り、バディウツァオ氏の作品は「反中国の嘘だらけ」で「中伊友好関係を損なう」と指摘したが、ブレシア市は恐れなかった。

 AFP通信のインタビューに応じたブレシアのラウラ・カステレッティ副市長は、「市の役人も一般市民も、ブレシアでは誰もこの個展に問題があると感じた人はいない 」と述べ、ブレシアは「芸術の自由を守る」という原則に基づいて、反体制派や画家、作家を受け入れる伝統があると語った。

 ブレシア美術館財団(Brescia Museums Foundation)のフランチェスカ・バゾーリ会長は、私たちは人々が自分の考えを表現する自由を支持すると述べ、今回の個展は「中国人や中国の文化・文明を冒涜する意図はない」と語った。

 バディウツァオ氏は35歳で、中国本土に生まれた。政治亡命を求めてオーストラリアに渡り、現在はオーストラリア国籍を取得している。人権や表現の自由を重んじ、人種差別と戦うことで知られる彼は、中国の中央政府の支持者に標的にされながらも、オーストラリアであらゆる面において次第に孤立し、疎外されてきているという。彼が追求するアートは、理性の声として響き、政治的道具化を非難し世界中の人権を擁護することである。彼は、「中共が自由な芸術家をすべて敵とみなしており、だからこそ私を恨んでいる」と語った。

 彼が受けた脅威について、次のように述べた。「たくさんある。毎日、さまざまなソーシャルメディアで殺害の脅迫を受けている。サイバー攻撃も受けており、インターネットにアクセスできない。オーストラリアにいても、ハッカーは中国から毎日攻撃するため、インターネットにアクセスするにはVPNを使用する必要がある。アーティストとして、特に中国人にとって、人権に関連する作品を展示するスペースを見つけることは困難である。多くのギャラリーや財団は中国市場と密接に関連しているため、すべて自己検閲している」

 彼は、中共の言論検閲により、大学に入るまで1989年の六四天安門事件のことを知らなかったという。法学部から芸術分野に転身し、2009年にオーストラリアに渡り、当初は匿名で活動していたが、六四天安門事件から30周年を迎えた2019年に身分を公開した。

 彼は、人権を守るために中共を拒否したブレシア市の勇気に「非常にうれしい」と語った。自分の芸術を使って、中共の嘘を暴き、中共政権の犯罪を明らかにするとともに、独裁政権下の中国国民の勇気を讃えたい」と語った。

 今回の展示作品の中には、香港の自治権がすでに浸食されていることを指摘する目的で制作された、習近平氏と香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の合成肖像画がある。 展示作品の中には、中共の警察が拷問器具として使用したとされるロッキングチェアがあり、中共自身の小道具を使って、中共のプロパガンダを風刺している。

 また、中共の習近平国家主席が銃を持って小熊のプーさんの上に座っている絵も展示されているが、これは中共のソーシャルメディアではタブーとされている揶揄である。

 また、バディウツァオ氏が六四天安門事件の記念時計を自分の血で描いた作品がある。それは当時、天安門の血生臭い弾圧に参加した中共の軍隊に奨励として、政府から兵士に贈られた腕時計を表している。

 展覧会では、戦車を止めるために立ち上がった無名の「戦車男(無名の反逆者)」にも敬意を表している。時事問題にちなんで、数台の改造戦車が球体を乗せている絵があり、COVID-19ウイルスを拡大したもののようだ。

 博物館の壁には、検閲を逃れようとした武漢市民の日記が展示されており、封鎖された都市の下での日常生活が再現されている。

 2019年末に新型コロナウイルスが初めて武漢に現れた時、中共当局が直ちに情報開示しなかったため、世界に影響を与えたパンデミックの責任は、間違いなく中共にあるとバディウツァオ氏が述べた。

(翻訳・藍彧)