(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 中国の刑務所労働者に書かれた手紙が、再びアメリカの買い物客によって発見された。

 オンライン・メディアVox.comの記者は、ウォルマートで購入した商品の中に手紙が隠されていたことを受け、手紙に記載された刑務所を実際に訪れた。また、流通元のウォルマートに対し問題を解消するよう求めた。

 2017年3月、アリゾナ州在住のクリステル・ウォレス氏は、数か月前に地元のウォルマートで購入したハンドバッグの中に折り畳まれた紙を見つけた。

 手紙は中国語で書かれており、次のように記載されていた。
「広西チワン族自治区にある英山刑務所の受刑者は1日14時間も働かされています。お昼に休むことすら許されず、真夜中まで残業をしなければなりません。仕事を終えられなかった人々は殴られます。私たちの食事には塩と油がありません。上司は毎月2,000元を囚人に支払いますが、薬を必要とする病気の受刑者は賃金が割り引かれます。中国で投獄されている囚人は、アメリカの家畜以下の扱いを受けています」

 ウォレス氏の義理の娘であるローラ・ウォレス氏は、Facebookにそのメモの写真を掲載した。その後彼女の投稿には数百もの「いいね!」が押され、シェアやコメントも相次いだ。そのため地元のメディアがこのいきさつを取り上げることになった。

 当時、ウォルマートの広報担当者は、NBCテレビの現地法人・KVOAに対し「手紙の出所を確認する方法がない」としてコメントを避けた。

 ジャーナリストのロサリン・A・ウォーレン氏は、問題の刑務所を探すため中国を訪れた。

ジャーナリストによる現地調査

 ウォーレン氏は中国南部・広西チワン族自治区にある桂林市へと向かった。

 ウォーレン氏が問題の住所に到着したところ、刑務所は閉鎖されていることがわかった。同刑務所の近くに住む住民に話を聞いたところ、刑務所はかつて実際に存在していたことが判明した。また、受刑者たちが強制労働に従事させられていたことも明らかとなった。
なぜなら、多くの住民が同刑務所で働いたり、家族が働かされていた経験があったからだ。

 匿名で取材に応じたある住民は、夫が同刑務所を建設するための労働者として雇われ、工事が完了した後も保守点検の際に施設内を訪れていたと話した。

 彼女の夫が語ったところによると、広東省から定期的にトラックがやってきて、布を刑務所に運んだり、また布をどこかに運び出して行くのを見たという。

 ウォーレン氏がウォルマートに対しコンタクトを取ると、同社は手紙の件について内部調査を開始したと彼女に伝えた。同社は、ハンドバッグがウォルマートの労働基準に適合していなかったとも述べた。
「この問題に関して調査した結果、納入業者の中国の工場は、私たちに開示していない別の工場で製品を作成していたことが判明しました。納入業者は私たちの基準に従わなかったため取引を中止しました。我々はこのような事態を真剣に受け止め、納入業者に対して責任と透明性を求めます。ウォルマート社は、当社の基準を満たさない業者に対して、同様の処置を取ることを表明します」

 ウォルマート社は、納入業者が英山刑務所と契約していたかどうかについては言及しなかった。

刑務所からの手紙

 同様の事件は2011年にも発生しており、「馬三家からの手紙」というドキュメンタリー映画として発表された。

オレゴン在住のジュリー・キース氏が、地元のKマートで購入したハロウィーンの飾りを開封したところ、中国語と英語で書かれた手書きのメモが見つかった。そこには法輪功学習者の政治犯を残酷な扱いで虐殺している「馬三家労働教養所」の恐ろしい実態が記述されていた。

 この一件は、中国の強制労働収容所制度に対する国際的な注目を集めた。その後「馬三家労働教養所」に関する報道が相次いだ結果、2013年、中国政府は「労働による再教育」を意味する「労改」制度を廃止すると発表した。

 しかし多くの受刑者は、依然として虐待が続いている他の収容施設に移されていたことが後にわかった。

中国の下請け製造業者にはどのような問題があるのか

 英山刑務所や「馬三家」で起こった事件を精査すれば明らかだが、中国の下請け製造業者の実態は不透明であることが多く、追跡が困難だ。このため、西側企業が意図せず中国の奴隷労働経済に関与している場合がある。

 「法輪功迫害を調査追及する国際組織(WOIPFG)」は、中国の製造業者自身が、囚人を強制労働させていると公にしている事例もあると指摘している。WOIPFGは、1999年から深刻な迫害を受け、瞑想法を学んでいる法輪功の学習者が、労働収容所や刑務所に拘禁されている事実や、輸出製品制作の労働に従事させられている旨を文書化した。

(翻訳・今野秀樹)