Wechatの支払(イメージ:Pixabay CC0 1.0)

 中国最大のインターネット企業『テンセント(騰訊、Tencent)』が提供するソーシャルネットワーキングソフト「WeChat(微信)」がこのほど、米国からの制裁を受けた。米国は、中国共産党政権に支配されているWeChatが米国の国家安全保障の脅威になると考えている。最近、中国語新聞「大紀元」が入手した中国共産党の内部文書によると、テンセントは社内に多数の党支部を設立し、党員の管理に参与し、徐々に中国共産党政権の一部となっていったという。

 ●テンセント内の党支部に所属する党員リスト

 最近、「大紀元」はテンセント内部から提供されたテンセント社内の党支部の党員名簿19通を入手し、その名簿から7,723人の党員が集計された。名簿からテンセント内部に設けられた共産党委員会は12の党本部と116の支部に分かれ、深圳、北京、上海などの8つの主要事業部に分散している事がわかった。

 これらの党支部はあらゆる機能部門に広がっており、複数の党支部を持つ部門もあれば、杭州支部や北京支部のように地域に応じて名前が付けられている部門もある。だが、これらのリストは不完全であり、テンセントの会長兼最高経営責任者である馬化騰氏や、同社の上級管理職の名前は含まれていない。

 ●テンセント積極的に中国共産党寄りに

 2018年の「南方日報」の報道によると、テンセントの中国共産党事務局の責任者は、「我々の仕事の目標は、どこで事業が成長しても、党組織と党の仕事を追走することだ」と述べた。

 テンセント取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の馬化騰氏も中国共産党に積極的な働きかけを行っており、2018年6月初めに、馬化騰氏と京東集団会長の劉強東氏が中国共産党の赤軍の制服を着て、延安(毛沢東ゆかりの地)を訪問した写真がネットで広がった。

 テンセントの中国共産党委員会(略称:テンセント党委員会)には11人の委員がおり、全員がテンセントの上級管理職である。テンセント党委員会は中国のインターネット企業初の党誌「騰翔」を創刊した。2016年、更にインターネット企業の中で唯一の「全国先進基礎党組織」となった。

 ●テンセントの中国共産党の党員管理への関与が明らかに

 大紀元が最近入手した河南省南陽市の文書からも、テンセントの姿が見られた。

 中国聯通(チャイナ・ユニコム)の子会社である中国聯通システム集成有限会社の河南支店が作成したこの内部文書は、主にコンピュータや携帯電話で実行可能なプログラムについて言及している。このプログラムは、ビッグデータ分析を通じて、党員の行動を確認、制御、追跡するために使用することができる。

 同文書8ページのネットワーク構成の部分では、テンセントのWeChat公衆番号の役割について言及している。また26ページでは、WeChatなどの告発ツールの追加が言及されている。

 時事評論家の李林一氏は、「テンセントは中国共産党の地方党員の管理に直接関与していることから判断して、単なる道具ではなく既に共産党政権の一部になっている」と述べた。

 ●テンセントのWeChat上の発言により多数の人が逮捕

 テンセントが中国共産党に次第に統合していくにつれて、WeChat上の発言内容を理由に、多数の中国人が逮捕され有罪判決を受けている。

 3月2日、ハッキング技術に詳しいオランダのビクター・ゲヴァース(Victor Gevers)氏は、数百万件のテンセントユーザーの会話やユーザー情報が中国全土の警察署に送られていることを明らかにした。

 米国の情報サービス会社のブルームバーグは、「テンセントは、多くのサービスを一つのプラットフォームに統合することで、WeChatを完璧な監視ツールに変え、中国共産党政権に対しデータ収集の優位性を与えている。中国共産党はこれらのデータを利用して、国民を検閲、監視し、さらには投獄することができる」という。

(翻訳・藍彧)