7月2日、中国国務院は、2030年までに社会消費財小売総額を60兆元(約8兆4,000億ドル)へ引き上げることを目標とする「消費拡大のための第15次五カ年計画」を発表した。この計画は、成長の鈍化、企業の国外流出、不振が続く不動産市場の影響を相殺しようとする政策当局が、国内需要の押し上げを図るためのものだ。しかし、複数の中国人エコノミストは、中国の消費支出の低迷は、景気刺激策だけでは解決できない、より根深い構造的問題を反映していると指摘している。中国のビジネス環境に幻滅し、同国を離れてカナダへ移住した元起業家の宋彦軍氏も、同様の見方を示している。

 中国国民経済研究所の副所長を務めるエコノミスト、王小魯氏は、中国では家計消費が長年にわたり国内総生産(GDP)の約37~38%にとどまっており、先進国で一般的な60%超を大幅に下回っていると指摘する。王氏は、この差の原因として、所得分配の問題と社会福祉制度の不備を挙げている。中国には約4億6,000万人の都市部労働者がいるが、その半数近くは居住地の戸籍、すなわち「戸口(フーコウ)」を持っておらず、公共サービスの利用が制限されている。失業時の保障が手薄く、社会的セーフティーネットが整備されていない状況では、家計は支出よりも貯蓄を選ぶ傾向にある。王氏はまた、地方政府が医療、教育、福祉への支出よりも、目に見えるインフラ事業を優先していることを批判し、公共サービスを充実させれば、将来への不安に備えるための予備的貯蓄を減らせると主張している。

 エコノミストの傅鵬氏も、異なる角度から同様の結論に達している。傅氏は、消費を左右するのは家計の所得、資産、そして将来への期待であり、政府による消費の呼びかけではないと論じる。傅氏は、不動産市場の減速によって「資産効果」が弱まったと指摘している。かつては住宅価格の上昇が家計の自信を高めていたが、その住宅価値が下落するにつれ、中間層の家庭は裁量的支出を抑えるようになっている。傅氏はさらに、中国の人口高齢化と労働力人口の縮小に加え、企業によるコスト削減や賃金上昇の鈍化も、消費者をより慎重にさせる要因だとしている。

 カナダ在住の宋彦軍氏は、中国東部で事業を経営していた際、こうした傾向を直接目にしたと語る。宋氏が運営していた教育関連ブランドの一つは、かつて上海の十数カ所を含め、400カ所以上で事業を展開していたが、現在残っているのはわずか2カ所だという。保護者が高価格帯の教育サービスへの支払いをためらうようになったことで需要が落ち込んだほか、かつて数万元かかっていた企業関係者の会食費も、現在ではその何分の一かにまで減っていると宋氏は述べている。

 宋氏はまた、規制面および法的な圧力が次第に強まったとも主張している。地元当局が複数機関から成る特別調査チームを編成して自身の会社を調査し、特定の事業資産を手放さなければ刑事責任を追及すると脅したとしている。宋氏によれば、この経験が最終的に中国を離れる決断につながったという。

 王氏、傅氏、宋氏は、それぞれ異なる観点からこの問題を捉えている。王氏は所得や福祉をめぐる構造的な格差、傅氏は資産価値の低下と人口動態、宋氏は一人の起業家としての実体験に焦点を当てているが、3人の結論は同じ方向に収れんしている。王氏と傅氏の見解はマクロ経済データに基づく一方、宋氏の証言は個人的かつ事例的なものだ。

 これらを総合すると、北京が60兆元という目標の達成を目指すなか、その成否は、新たな消費機会を生み出すことよりも、家計所得を立て直し、社会保障を強化し、消費者の信頼を回復できるかどうかに、より大きく左右される可能性がある。

(翻訳・竹内優子)