9月10日午前、中国・山東省青島市の造船所「青島北海造船」で、修理のため停泊していた外国籍の貨物船から火が出て、船内にいた42人のうち25人が死亡しました。火が消し止められたのは、出火から3時間以上たってからでした。この事故を受けて習近平国家主席が自ら「重要指示」を出す事態となりましたが、その直後から、この貨物船をめぐってある疑惑がネット上で広がっています。船は実は中国の「影の船団」の一隻で、当局がこれほど素早く動いたのは、外国人船員が乗っていて隠しきれなかったからだというのです。
当局の発表によると、火災が起きたのは10日午前11時15分ごろです。船内にいた42人のうち、12人は無事に避難し、けがをして病院に運ばれた5人も命に別状はないということです。火は午後2時半ごろに消し止められましたが、行方が分からなくなっていた残る25人は、その日の夜までに全員が遺体で見つかりました。救助にあたった隊員によると、現場では狭いハッチから船の底まで降りなければならず、船倉にこもった煙と熱が作業を大きく妨げたということです。階段も滑りやすく、取り残された人を運び出すのにも苦労したといいます。
事故が起きたのは、リベリア船籍のばら積み貨物船「OCEAN MELODY(オーシャン・メロディー)」です。主に西アフリカから中国へ貨物を運んでいた船で、直前の航海では7月3日にリベリアで粉状の鉄鉱石4万6000トンを積み込み、8月26日に江蘇省の太倉港に入港しました。荷揚げを終えると修理のため青島北海造船に向かい、8月31日に着岸していました。青島北海造船は1898年創業の歴史ある造船所で、現在は国有造船大手、中国船舶集団(CSSC)の直属の子会社です。造船を中心に、海洋構造物や特殊船の建造、船の修理なども手がけています。
中国のSNSでは、事故についての書き込みが相次いでいます。「うちの近くなんだけど、消防車が次から次へと走っていく音がずっと聞こえてて……まさかこんなにひどいことになってるとは思わなかった」という声のほか、「岸壁に停まってた外国の船がいきなり燃え出した。爆発したみたいに見えた」と現場の様子を伝える人や、「今日の昼、中央から調査チームが来たらしい」と書き込む人もいました。「なんか怪しい。絶対裏がある」「情報、がっちり抑えられてるね」「これはかなりの大ごとだぞ」といった反応も少なくありません。「外国籍ってことになってるけど、オーシャン・メロディーは実は中国の船だよ」という指摘も出ています。
同じ日には、Xのあるアカウントが「特大スクープ」と銘打った投稿をしました。それによると、この船は中国の影の船団の一隻で、リベリア船籍はただの隠れみのにすぎないといいます。積み荷も表向きは鉱石ということになっていますが、実際には上に鉱石を薄くかぶせてあるだけで、その下にはロシア向けのドローンの原材料が隠されていたとしています。
投稿では、指導部のトップまで乗り出す異例の対応になった理由について、「外国人の船員が絡んでるから隠しきれないんだよ。中国人だけなら口止めして、捕まえて、ネットの書き込みを消せば終わりだけどね。それより怖いのは、軍需物資のルートがばれて、ロシアを支援してる動かぬ証拠を西側に握られることだ」としています。さらに、当局内部ではすでに補償の基準が話し合われていて、犠牲者1人につき1000万ドルを支払い、その条件として秘密保持契約へのサインを求める方向だといいます。
投稿によると、この船を運航する会社は9隻の船を持ち、積載能力は合わせて49万2000トン、本社は上海の浦東にあるということです。付近には同じような船会社が200社以上あり、3、4社が同じ住所で登記していることもあるそうで、「要するにペーパーカンパニーだ」としています。こうした会社が抱える船は大小合わせて6500隻余りにのぼり、すべて外国船籍になっているといいます。投稿は「表に出せないものを運んでるんだよ。中南海(中国共産党の指導部)の指示があるに決まってる」と断じています。
投稿者は、今回燃えたのは軍需物資そのものだと主張しています。輸送も素人同然のずさんなもので、危険物を隔離して積むといった安全対策もとられておらず、「一言でいえば、めちゃくちゃ」だといいます。現場の動画を見たところ、出火から爆発まで14秒足らずだったとして、「普通の貨物なら、どんなに早くても全体に火が回るまで十数分はかかる。しかも港に着岸してて、すぐ陸に上がれる場所だったのに……」と疑問を投げかけています。
このアカウントは、情報が事実なら単なる船の火災では済まない話で、いったい裏に何が隠されているのかと問いかけています。そのうえで関係当局に対し、信頼できる調査結果を包み隠さず、一刻も早く公表して、これ以上憶測が広がらないようにしてほしいと訴えています。
Xではほかにも、「最近、死者がやたら多い大事故って、習近平が指示を出してからやっと俺たちの耳に入るパターンばっかりだよな。チベットの件も今回の青島もそう。どっちもとんでもない数の人が死んでる」「天災と人災が次から次へとやって来て、庶民は自分の身を守るので精一杯、役人は景気のいい報告を上げるのに大忙し、メディアは記事の切り口探しに大忙し」と嘆く声も聞かれます。
(翻訳・吉原木子)
