フランス当局はこのほど、国内で活動していたとされる9カ所の「中国秘密警察拠点」を特定・摘発し、秘密警察ネットワークの運営に関与した疑いが持たれている中国人3人に対して国外退去を命じたことが、現地紙『ル・モンド』の報道で明らかになった。これらの拠点は福建省の「同郷会」や商工団体などを隠れ蓑として活動し、中国共産党(CCP)に代わって情報収集を行ったほか、在仏中国人コミュニティの監視や反体制派への圧力工作を行っていたという。
情報収集と監視活動
『ル・モンド』紙が6月18日に報じたところによると、フランス内務省および司法当局の関係者は、今回の捜査の発端は、2024年3月にパリのシャルル・ド・ゴール空港で発生した事件がきっかけだと語っている。
当時、中国人反体制活動家の林華章さん(26)は、中国行きの航空機に強制的に搭乗させられそうになったが、フランス警察が介入して阻止することに成功した。この事件を受け、防諜当局は約1年にわたる本格的な捜査を開始した。
その結果、当局はパリおよびフランス国内の複数都市にある計9カ所を、中国の海外警察ネットワークと関連しているとして特定した。捜査当局は、中国共産党による工作活動の一部が福建省同郷会やその他の中国系コミュニティ団体を隠れ蓑にしていたとみている。
フランス当局は、それらのネットワークの活動は単なる地域住民向けサービスの提供にとどまらず、在外中国人コミュニティを監視し、政治的に機微な情報を収集するとともに、中国当局を批判する者を特定し、中国への帰国を促すという政治的な役割を担っていたと考えている。
関係者を国外追放
フランス内務省の捜査を通して、3人の中国人が秘密警察ネットワークの中心的な運営者として特定された。このうち2人はすでにフランスから国外追放されており、残る倪朝文(Ni Chaowen)は国外退去命令を不服として裁判所に異議を申し立てた。しかし『ル・モンド』によると、フランス最高行政裁判所は6月、国外退去命令を維持すべきとの判断を下した。
公開記録によれば、57歳の倪朝文は2001年にフランスへ入国し、2012年に合法的な在留資格を取得した。その後、衣料品、皮革製品、宝飾品の貿易事業を複数運営し、2023年には「フランス福建商工連合会」の会長に就任した。
フランス当局は、倪朝文がこの商工団体を利用して、中国の公安機関とつながる海外警察拠点の運営を支援していたと見ている。捜査の過程で警察は、倪朝文が「福州海外警務服務站(Fuzhou Overseas Police Service Station)」と書かれた看板の前に立つ写真を入手し、捜査当局はこれを倪朝文と当該活動を結び付ける証拠の一つと考えている。
高まる警戒
『ル・モンド』はまた、中国当局による海外での影響力工作の多くは、中国政府の正式な機関ではない個人や団体を通じて実施されていると指摘している。中国の2017年国家情報法では、中国の国民および組織に対し、「国家情報活動を支持し、協力し、これに協調する」ことを義務付けており、この規定は西側諸国の捜査機関の懸念を招いている。
フランスは、中国当局の海外警察活動に対して措置を講じた最初の国ではない。オランダ、スペイン、カナダなど複数の国でも、反体制派の監視や国境を越えた弾圧に利用されているとの報告を受け、同様の組織に対する捜査や閉鎖措置が実施されている。
これに対し、中国当局は一貫してこれらの疑惑を否定している。中国政府は、こうした施設は主として海外在住の中国人に対し、運転免許証の更新や各種書類の認証といった行政サービスを提供するためのものであると主張している。
それにもかかわらず、西側諸国の政府の懸念は高まり続けている。各国の治安当局は、これらの海外警察拠点が、中国政府による治安・影響力工作を国境の外へ拡大する取り組みの一環であるとの見方を強めており、外国による内政干渉、情報収集活動、国境を越えた威嚇行為を支援している疑いのある団体に対する監視を一層強化している。
(翻訳・竹内優子)
