台風13号の外周気流が今週、湖北省に流れ込み、つい先日まで豪雨と洪水に見舞われていた三峡ダム湖周辺に、新たな試練をもたらしています。
宜昌市(ぎしょうし)教育局は8月10日午後、洪水対策の緊急通知を出し、全面的に「戦時体制」に入るよう求めました。小中学校、幼稚園、中等職業学校、教育・研修機関は8月11日から12日まで授業を停止し、校内の工事も中止、斜面や河川に近い工事現場の仮設宿舎にいる人々には避難が求められました。同時に、地元当局は三峡人家(さんきょうじんか)など沿線の観光地を閉鎖し、宜昌東駅を経由する列車32本も運休となりました。
地元の防災当局によると、問題は今回の台風そのものの降水量ではなく、それ以前から続いた雨によって土壌の含水率が飽和状態に近づき、鉄砲水や地滑り、土石流、内水氾濫の危険性が大幅に高まっていることです。幸い、11日の宜昌市の実際の降水量は、事前に予報されていた「局地的な激しい豪雨、150ミリ以上」には達せず、最も強い雨が降り、主な避難対応が行われたのは襄陽市(じょうようし)や十堰市(じゅうえんし)周辺でした。これまでの雨による冠水もまだ完全には解消しておらず、災害が遅れて発生する危険もあります。天候がはっきり回復するのは14日になる見通しです。
この「戦時体制」の背景には、宜昌市内に数多く存在する中小規模の水利施設が試練にさらされている現状があります。三峡ダムと葛洲壩(かっしゅうは)の二つの大型施設を除いても、夷陵区(いりょうく)だけで60カ所のダムと58カ所の水力発電所があります。当局によると、160カ所の小型ダムでは安全性を高める補強工事を完了していますが、市内では依然として安全上の問題を抱える4カ所のダムが重点監視対象となっており、17カ所のダムでは事前に放流し、貯水容量に余裕を確保しています。
三峡ダムは8月初め、今年初となる毎秒3万立方メートル規模の洪水流入を迎えて以降、放流量を増やしながら貯水容量に余裕を確保し、増水に備えてきました。そのため、二つのダムの間にある長江区間や下流への放流圧力もさらに高まっています。7月末の点検では、宜昌市は8カ所のダムが「正常に越流している」と発表しました。しかし、具体的にどのダムだったのか、越流がいつ始まったのか、最大流量はどの程度だったのか、放流前に下流の村へ通知があったのかについて、当局はいまだ詳細を公表していません。
特に懸念されているのは、三峡ダム湖周辺がわずか数日前に洪水災害に見舞われ、復旧や後片付けも終わっていない中で、新たな雨が迫っていることです。8月3日、湖北省自然資源庁はすでに、三峡ダム湖周辺の興山県(こうざんけん)東部、秭帰県(しきけん)南東部、夷陵区南西部を地質災害の危険区域に指定し、崩落や地滑り、土石流が発生する可能性があると警告しました。地元当局には危険箇所を巡回し、危険にさらされている住民一世帯ずつに警報を伝えるよう求めています。8月4日には警戒範囲が興山県、秭帰県、夷陵区の大部分へと拡大され、その夜には夷陵区南西部の危険度がさらに「高」に引き上げられました。
しかし、同じ8月4日の午前、三峡人家では通常どおりチケットを販売し、入場確認も行い、観光客を山の中へ入れていました。一部の観光客は入場後になって初めて、龍進渓(りゅうしんけい)の観光スポットが閉鎖されていると告げられました。その数時間後、三峡方面へ向かう国道G348号と三峡専用道路の複数箇所で山崩れが発生し、道路が寸断されました。
ある観光客は後にSNSで、朝早くから並んで入場したものの、龍進渓に着く前に通行を止められ、別ルートへ回されたため、最も楽しみにしていた三峡人家への旅行は「楽しみが台無しになった」と不満を訴えました。別の観光客は車で1時間以上かけて三峡ダムへ向かいましたが、途中で沿線がすでに増水していることに気づき、引き返すしかありませんでした。それまで観光地閉鎖に関する通知は一度も目にしなかったといいます。
また、旅行のためにわざわざ1週間休みを取った観光客も、三峡人家に着いたところで鉄砲水に足止めされました。動画には、道路一面を泥や砕石、折れた木が覆い、斜面から泥水が流れ続け、車や観光客が一時その場から動けなくなる様子が映っていました。その後、長江では風と波が強まり、三峡人家の遊覧船は全便運航を中止しました。462人の観光客が船着き場に取り残され、陸路は地滑りで寸断され、水路も通航できない状態となりました。夷陵区はその後、船を手配して観光客を移送し、宿泊先を確保するとともに払い戻しの手続きを行いました。当局の発表では、この観光客全員が8月5日午後までに無事帰路についたとしています。
観光地の閉鎖を知らせる公式発表が出されたのは、ようやく8月5日になってからで、内容は「一時閉鎖」でした。全額払い戻しや無料のホテル、船による移送は、取り残された観光客の不満を和らげることはできても、最も基本的な問題は避けて通れないとの指摘があります。
地質災害の危険は事前に警告されていたにもかかわらず、なぜ観光地は通常どおりチケットを販売して観光客を受け入れ続けたのでしょうか。観光客が山中に取り残され、道路が流され、陸路と水路の両方が寸断された後になって、ようやく全面的な避難に踏み切ったのはなぜなのでしょうか。
中国中央テレビは8月5日夜の報道で、秭帰県の被害について「現時点で死傷者はいない」と伝え、捜索・救助活動は続いていると報じました。しかしその2日後、地元のネットユーザーがSNS上で、夫の叔母が秭帰県で洪水に流され、現在も行方が分からず、家族は今も観光地の運営側と交渉を続けていると公表しました。
また別の住民は、洪水で車が流された際、一部の車内にはまだ人がいたと話しています。これらの証言は現時点で当局によって確認も否定もされていませんが、「現時点で死傷者はいない」とする公式発表との間には明らかな隔たりがあります。
現在、台風13号の残った外周気流が、前回の災害からまだ立ち直っていないこの地域に流れ込み、危険が完全に去ったとは言えません。国道G348号沿いですでに崩落した斜面が再び滑る可能性があり、楽天渓(らくてんけい)や龍進渓などの支流では、いつ再び鉄砲水が発生してもおかしくありません。秭帰県や三峡ダム湖岸一帯では、水を大量に含んだ斜面で遅れて地滑りが発生する可能性があります。さらに、十分な空き容量を確保できていない中小規模のダムやため池でも、再び越流が起きる恐れがあります。今年の夏、三峡ダム湖周辺は、まだこの危機を本当の意味で乗り越えたとは言えない状況です。
(翻訳・藍彧)
