6月26日夕方、北京市朝陽区のランドマーク「中信(CITIC)グループ本社ビル(通称:中国尊)」に小型機が激突し、大きな波紋を呼んでいます。当局による約1日の情報封鎖の後、27日午後になりようやくWeChat公式アカウント「北京朝陽」で発表がありました。それによると、26日午後5時55分頃、単発複座式の軽スポーツ機が高層ビルに衝突し、パイロット1名が死亡、13人が負傷したとのことです。負傷者は治療中で、関係当局が調査を進めています。しかし、発表では事故現場のビル名やパイロットの身元が意図的に伏せられ、中国本土の主要メディアも後追い報道を控える異例の事態となっています。

 当局が沈黙を保つ一方、ネット上の動画や目撃証言から当時の惨状が明らかになっています。衝突の夜、ビルのガラス外壁は砕け散り、地上階からは濃煙と炎が上がりました。顔を血で染めた負傷者が運び出されたほか、男女2人が関係者に連れ出される姿も目撃されており、担架の女性がパイロットではないかとの憶測も飛んでいます。情報筋によれば、機体は上場企業の航空教習所傘下にある国産軽スポーツ機「オーロラSA60L」です。午後5時30分に平谷区の飛行場を離陸して訓練を行っており、10分後に帰還予定でした。しかし着陸直前に本来の空域を大きく逸脱し、機首を真西(270度)に向けたまま飛行を続け、東五環路付近の上空でレーダーから消失したとされています。

 この事件が極めて敏感に扱われる理由は、その特殊な立地にあります。現場の「中国尊」は地上108階建ての北京最高層ビルで、国有企業・中信グループの本社です。中国中央テレビ(CCTV)本社とは通りを挟んで向かい合い、政治の中枢である中南海からもわずか7キロの距離です。警備が厳重な北京上空での事件は極めて異例であり、発生直後から厳戒態勢が敷かれました。SNS上の関連情報は厳しく検閲・削除され、ウェイボー(微博)での検索も制限されています。

 厳しい情報統制の中、パイロットの身元に関する憶測が広がっています。ネット上では操縦者は「劉俊華」と噂され、中信グループ傘下の資産運用会社の幹部と同姓同名であることから、内部の人間による犯行説も浮上しました。英紙フィナンシャル・タイムズ(27日付)の報道が、この疑惑をさらに深めています。同紙記者は、問題の飛行学校がある飛行場で、当局関係者が黒いSUVを捜索する様子を目撃しました。公開データベースによれば、この車の登録名義人もまさに「劉俊華」でした。しかし世論が過熱する中、中国メディア『中国証券網』が27日午後、同社幹部の劉俊華氏の単独インタビューを突如掲載しました。インタビューが「27日当日」であることを意図的に強調しており、当局による事実上の火消しと受け止められています。

 操縦者の身元や動機は依然として謎ですが、帰還を前提としない不可解な飛行ルートや当局の過剰な警戒ぶりから、単なる事故ではなく「意図的な衝突」を疑う声がネット上で多数上がっています。あるベテラン時事評論家は、航空機をランドマークに激突させる行為は、その視覚的衝撃と世論への影響において「9.11」を彷彿とさせ、政治的に大きな意味を持つと指摘します。さらに、このような極端な事件の発生は、現在の中国社会の矛盾が極限まで先鋭化し、自爆テロのような過激な手段で不満を爆発させる者が現れる段階にあることを示唆しているのかもしれないと分析しています。