中国共産党上層部の権力闘争は、すでに周知の事実となっています。そんな中、いまの北京では不穏な空気が漂っています。最近では、北京の長安街に警察車両が何台も並び、通行人の姿もほとんど見当たらない様子が撮影されました。さらに、北京と河北省を結ぶ高速道路が突然、上下線とも封鎖されたとして、大きな関心を集めています。

 乗客1:完全に戒厳みたいになってるね。
 運転手:じゃあ右のほうを見てみな。左側はもう見えないから。
 乗客1:ほんとだ、見えない。
 運転手:こっちは右に曲がって、迂回するしかないな。
 乗客1:いいよ、一周回れば来たことにはなるし。
 乗客2:後ろの細い路地のほうに、住宅がたくさんあるね。
 運転手:これはもう、どうしようもないな。
 乗客1:これじゃ北京をぐるっと一周するようなもんだよ。それも専用車でね。

 3月30日、あるネットユーザーがXにこの動画を投稿しました。投稿によると、3月29日に1人の乗客が移動中に北京・長安街の警備状況を撮影したもので、中国国内のプラットフォームに動画が投稿された後、コメントはすぐにすべて削除されたといいます。動画を見ると、乗客は車内から撮影しており、長安街の大きな交差点の一つは封鎖されていたとみられ、周囲には警察官と警察車両がずらりと並んでいました。大通りにはほかの車両は見当たらず、歩道にも通行人の姿はほとんどありません。ただ、道路の曲がり角のあたりに、数人が立っている様子だけが確認できます。

 車がその大きな交差点を離れて進んだあとも、道路の片側には数メートルおきに警察車両が止まり、あるいは警察官が立っている様子が見られました。撮影者によれば、場所は天安門西路とのことです。道中の歩道には人影がほとんどなく、大きな交差点にも小さな交差点にも警察官と警察車両が配置され、ものものしい警戒態勢が敷かれていました。

 3月30日には、別のネットユーザーもX上で動画を投稿し、河北省から北京へ向かう高速道路が全面封鎖されたと伝えました。この投稿者は、「この一連の動きは、最近広がっている習近平の脳卒中説や、温家宝の異例の公の場への登場と関係があるのではないか。中国共産党の政局はいま本当にますます異様になってきている。何か大きなことが起きるのではないか」と疑問を投げかけています。

 「交通警察からのお知らせです。交通規制のため、道路は上下線とも通行止めとなっています」
動画では、高速道路の検問所の入口付近で、場内アナウンスが繰り返し流れていました。その内容は、「交通規制のため、道路は上下線とも閉鎖されています」というものでした。

 ある女性ブロガーはこう話しています。
 「数日前に、高速道路の封鎖動画を投稿したんですが、昨日になって急にまた再生数が伸び始めたんです。しかも、数日前に投稿した動画より再生回数が上回っていて、不思議に思いました。どうして急に注目されたんだろうって。ニュースを見たら、昨日から全国の複数の都市で高速道路が全面的に封鎖されているそうです。うちのお兄様を通すためなんでしょうね」

 そして「うちのお兄様」と言ったところで、女性ブロガーは軍隊式の敬礼をしました。つまり、軍関係者を指しているという意味です。
これに対し、ネット上では疑問の声が相次ぎました。

 「この状況を見る限り、何か大きなことが起きているのは間違いない。あとは公式発表を待つしかない」
 「中国共産党の中国本土で役人になると『うつ病』になるというのは本当だ!」
 「とにかくかなり異例だ。前には次の指導者が決まったという話が出て、そのすぐ後に入院説が流れ、続いて温家宝が姿を見せた」

 また、こんな声もあります。

 「国民は疲れているし、彼らも疲れている。世界の先進的な文明を見習って、政党を国民選挙で選ぶ仕組みにしたほうがいい。中国の人たちが一日も早く自由を手にできるようにしてほしい。共産党も、自分たちと子や孫のために退路を残しておくべきだ」
 「早めに道路を封鎖し、省や市の境界も封じておけば、粛清されて消されるのを防げるということだろう」
 「どうして政府はここまで国民を恐れるのか」
 「悪事を重ねてきた政権は、何もかもが怖くなるんだ」

 中国共産党の最高指導部では、ここ最近、権力闘争がいっそう激しくなっているとみられています。ネット上では、習近平に脳卒中が起きたという話や、温家宝が姿を見せたという情報が注目を集めています。

 中国共産党中央軍事委員会の副主席だった張又侠が拘束されたとの情報が出て以降、最高指導部内の対立はとくに激しさを増しているとされています。3月26日には、習近平が脳卒中を再発し、北京の301病院に緊急搬送されたとの情報がネット上で広まりました。さらに、その際、301病院の医師たちは自分たちの技術では対応が難しいことを理由に、そろって手術を引き受けなかったとも伝えられています。そのため、北京当局は上海から3人の脳外科の専門医を緊急で呼び寄せ、北京へ向かわせて習近平の手術に当たらせたとされています。

 少し前には、胡錦濤政権で首相を務めた温家宝が軟禁されているとのうわさがネット上で広がっていました。そうした中、3月27日には、海外のX上で1本の動画が拡散され、83歳の温家宝が中国科学院地質・地球物理研究所に姿を見せたと伝えられました。動画の中の温家宝は白髪になっていたものの、全体としては元気そうな様子で、そばには警護要員とみられる複数の男性や、同行者の姿も見えました。温家宝は笑顔で人々に手を振り、群衆の中から「首相、こんにちは」と声をかけられると、拳を軽く合わせるしぐさで応じていました。

 中国共産党の高官の慣例では、引退した国家級指導者が公の場に姿を見せることは、ふだんはほとんどありません。そのため、いったん姿を見せれば、何らかの政治的メッセージを発しているのではないかと受け止められることが少なくありません。

 これについて、アメリカ在住の時事評論家、唐靖遠は自身の番組の中で、温家宝が集まった人々に向かって両手を高く上げ、抱拳してあいさつしたことは、単なる目立つ振る舞いではなく、かなり強い政治的アピールだと述べています。唐靖遠は、今回の温家宝の登場は、単に軟禁説を打ち消すためだけではなく、その背後にさらに大きな意味があるとみています。つまり、自分の立場と影響力を外に示そうとしているというのです。

 唐靖遠によると、車のナンバーを調べた結果、温家宝一行が乗っていた4台の車のうち2台は、中国共産党中央軍事委員会・統合作戦参謀部の車両だったといいます。つまり、温家宝の警護を担当していたのは、習近平の影響下にある中央警衛局ではなく、中央軍事委員会・統合作戦参謀部の関係者だった可能性がある、ということです。

 アメリカ在住の時事評論家、李軍はXへの投稿で、「このタイミングで温家宝が突然姿を見せたのは、たしかに普通ではない」と述べました。李軍はそのうえで、いくつかの点を挙げて分析しています。

 第一に、これは習近平が温家宝に表に出るよう求めたものではないということ。

 第二に、温家宝が軟禁されているという話は虚偽の情報だったということ。

 第三に、習近平は長老たちを表に出したくないのに、温家宝があえて姿を見せたことで、長老側が習近平の意向に従っていないことがうかがえるということです。

 第四に、温家宝が関わる中国共産党中央の政策決定・議事調整機構が、いまも動いていることを示している可能性があるとしました。

 李軍は、「あの警備のレベルを見れば、普通の引退幹部につくような警備ではない。含まれている情報量はかなり大きい」と指摘しています。

 その前には、温家宝が軟禁中に怒りを抑えきれず、中国共産党中央弁公庁に直接電話をかけて、「私は離党する!」と言い放ったという話まで伝わっていました。

(翻訳・藍彧)