中国では毎年2月から4月にかけて、本来であれば一年の中でも特に美しい季節を迎えます。大地いっぱいに広がる黄金色の菜の花、風に揺れて波のようにうねる花畑、花の香りが漂います。その花の間を、数千数万ものミツバチが飛び交います。ミツバチにとってこの時期は、一年で最も忙しく、そして最も大切な季節です。ところが今年、この本来なら生命力に満ちているはずの風景の中で、思わず目を疑うような出来事が起きていました。

 このほど、ネット上で拡散された複数の動画には、菜の花畑の近くの地面に、びっしりとミツバチの死骸が広がる様子が映っていました。もう花の間を飛び回ることはなく、ただ地面に折り重なるように横たわり、その光景はまるで一面に黒い染みが広がったかのようで、見る者に強い衝撃を与えています。

 この農薬散布は、政府が一括で調達し、実施している「ドローン防除サービス」の一環だとされています。

 この異常事態は、大きな関心を集めています。複数の養蜂業者や農家によると、一部の地域では、深夜のうちにドローンを使って菜の花畑の上空から農薬を散布するケースがあったといいます。しかも、散布前に養蜂家へ事前連絡は一切なかったとのことです。翌朝、いつも通りミツバチが花畑に入り蜜を集めようとした際、花や周辺に残っていた農薬に直接触れ、その結果、大量のミツバチが中毒を起こして死んだとみられています。

 武漢市の養蜂家、陳さんは、このような事態は今年が初めてではなく、もう何年も繰り返されてきたと話します。
 「以前は農薬をまく時期がだいたい決まっていて、3月12日から15日あたりの数日間だった。でも今は、いつ散布されるのかはっきりしない。いつ突然やられるか分からない。とにかく、うちのミツバチはそこを通ると死んでしまう」

 養蜂家にとって、菜の花の開花時期はほんの数週間しかありませんが、その年の収入を大きく左右します。陳さんによると、花の時期に農薬が散布されれば、ミツバチは一気に大きな被害を受け、ひどい場合には群れそのものが壊滅してしまうこともあるといいます。
 「ドローンで農薬をまくようになったのは今年からじゃない。ただ今はこの問題が注目されているだけだ。ここ4、5年、どの年だって蜂は死んでいる。うちも一度やられたら、3分の1はやられる」

 陳さんは、こうした問題が簡単には変わらない背景について次のように語ります。
 「こっちはちゃんと訴えているし、世論の反応もかなり大きい。それでも変わらない。これは上から下までつながっている話で、下が勝手にこんなことをしているわけじゃない。上が許していなければ、下はこんなやり方はできない。つまり、上が黙認しているということだ。上の一言で、私たちの状況なんてどうにでもされてしまう」

 不満の声を上げているのは、養蜂家だけではありません。菜の花を栽培している農家の中からも、この「一斉散布」に疑問を呈する声が出ています。ある農家は、今年は気温もそれほど高くなく、畑で害虫が目立っているわけでもないのに、それでも大規模に農薬がまかれているのは理解しがたいと話しています。
菜の花を育てている劉さんは、こう話します。

 「農薬を使ってはいけないと言っているわけではない。問題は、どういう状況で使うかだ。本当に花が咲いている最中は、散布してはいけない。やるなら開花前か、花が落ちた後だ」

 農業の専門家も、菜の花が満開の時期に農薬を使う場合は、散布する時間や使う薬剤の種類を特に慎重に選ばなければならないと指摘しています。そうでなければ、ミツバチに被害が及ぶだけでなく、生態系全体を壊してしまうおそれもあるからです。

 実際のところ、ミツバチの役割は、単に蜜を集めることだけではありません。データによれば、世界の農作物のおよそ75%は昆虫による受粉に依存しており、その中でもミツバチは最も重要な受粉の担い手の一つです。ひとたびミツバチが大量に減れば、影響は蜂蜜の減産だけにとどまりません。農業全体の仕組みそのものが打撃を受けることになります。

 それだけではありません。ミツバチは野生植物の受粉にも重要な役割を果たしています。もしミツバチがいなくなれば、自然環境の生物多様性も深刻なダメージを受けるおそれがあります。

 湖南省衡陽市でも、養蜂家から同様の訴えが上がっています。現地では、ドローンで菜の花に農薬を散布したあと、ミツバチが花に触れただけで次々と大量死したといいます。ある養蜂家は、やりきれない思いをこう語っています。
 「地域全体で飛行機を使って菜の花に農薬をまかれ、3000箱以上のミツバチがやられた。ほぼ全滅に近い」

 政府が一括で調達しているこの農薬散布は、もともとの名目は「科学技術で農業を支援する」「病害虫を一括管理する」「油料作物の増産と農家の収入向上を後押しする」といったものでした。ところが実際には、その効果をめぐって強い批判が噴き出しています。

 業界関係者の中には、はっきりとこう批判する人もいます。
 「これこそ本当の意味で、農家を苦しめ、農業を傷つけるやり方だ。私も農村で育ったが、この40年で菜の花に農薬をまくなんて話は初めて聞いた」
 「理屈の上では農薬を使うこと自体は可能だが、開花期に散布してはいけない。花の時期には多くのミツバチが集まるからだ。その時に農薬をまけば、ミツバチ

 一斉に殺してしまうことになる。ミツバチが受粉できなくなれば、菜の花の収穫量は必ず落ちる。こんなものは、本当に愚かなやり方だ」
この一連の出来事は、ネット上でも瞬く間に大きな議論を呼びました。
 「40年生きてきて、菜の花に農薬をまくなんて初めて聞いた」
 「うちの湘西市(しょうせいし)では、小さい頃から今まで菜の花に農薬をまくのなんて見たことがない」
 「うちは代々農家で、毎年菜の花を育ててきたけれど、花が一番咲いている時期に農薬をまいたことなんて一度もなかった。今年は何かおかしい気がする」
 「水を飲むのにまで金がかかる時代に、無料でやってくれることなんてあるのか」
 「勝手にうちの畑に農薬なんかまかれたら、命がけで抗議する」
 「開花期に農薬をまくなんて、あまりにもひどい」
 「わずかな利益のために、こんな取り返しのつかないことをするのか」
 「いったい何者がやっているんだ。誰が許可したんだ」
 「農薬をまいた人間を捕まえて賠償させろ。もう菜の花は食べられない」
 「目的はミツバチを殺して生態系の災害を引き起こすことじゃないのか。絶対におかしい」
 「これはミツバチを消そうとしているのではないか。ミツバチがいなくなれば、将来は食べ物そのものが危うくなる」
 「菜の花に農薬をまかなければ、菜種油には農薬が残らない。そうなると食べた人は健康になる。病院の収入が減るから困るということか」
 「サツマイモ、ジャガイモ、落花生にも強い農薬を使ってきたのに、今度は菜の花にまで農薬か。本当にひどい話だ」

 その一方で、被害を受けた一部の養蜂家たちは、すでに地元政府に説明と補償を求めて抗議に向かっています。しかし、今のところ問題は根本的には解決していません。

 ミツバチの大量死は、決して養蜂業界だけの問題ではありません。これは食の安全に関わる問題であり、生態系のバランスに関わる問題であり、さらに言えば、これから先の農業が持続していけるのかどうかにも直結する問題です。

(翻訳・藍彧)