中国のSNSでは、オフィスビルの現状を映した2本の動画が急速に拡散され、大きな話題を呼んでいます。

 こうした光景は、決して一部だけの例外ではありません。深セン市福田のビジネス街では、2021年に市場に出た超高級グレードのオフィスビルで、地下鉄の乗り換え駅に近く、にぎやかな商業エリアにも隣接しているにもかかわらず、5年たっても入居率は3割前後にとどまっているという話まで出ています。広州市の第2のビジネス街とも呼ばれ、琶洲のEC企業本部が集まるエリアのオフィスビルでも、空室率の高さが問題視されています。外から見れば華やかに見える高層ビルでも、中に入るとフロア単位で長く空いたままになっているケースがあり、なかには工事が途中で止まったような未完成物件まで見られます。外部では、景気の減速と不動産市場の調整が重なり、商業用不動産への圧力が一段と強まっているとの見方が広がっています。

 中国経済の減速を背景に、近年は不動産市場の調整に加え、一部の外資系企業が投資を縮小し、製造業の利益も圧迫されるなどの要因が重なり、オフィス需要は弱まり続けています。中国国家統計局のデータによると、2025年の全国の不動産開発投資は約166兆円(8.3万億元)で、前年より17.2%減少しました。不動産開発景気指数も2025年3月から下落が続いており、オフィスビルの販売面積と販売額はいずれも前年を下回っています。複数の調査機関は、一線都市と二線都市でこれまでに新規供給が一気に増えた一方、企業の拡張意欲が鈍っているため、需給のずれが広がり、空室率の上昇につながっていると指摘しています。

 広州市では、産業構造と人口構成の変化による影響がとりわけはっきり表れています。白雲区、海珠区、番禺区などの都市部の村落地区は、かつて出稼ぎ労働者が最も集中して暮らす地域でしたが、今では多くの村の住宅に入居者募集の赤い張り紙が出されたまま、長く借り手がつかない状況が続いています。旧正月明けには、正月8日目になっても村全体にほとんど人影が見えないと伝える動画が広く拡散されました。例年であれば、連休後の出稼ぎ労働者の戻りで町は一気ににぎわいますが、今はその熱気もかなり薄れています。取材に応じた住民によれば、一部の工場で受注が減り、企業の人員削減も進んだことで、賃貸需要が落ち込んでいるといいます。その一方で、都市再開発の進展や、家賃交渉の余地が広がったことも、これまでの賃貸市場の構図を変えつつあります。

 昔ながらの商業エリアも同じように厳しい状況に直面しています。北京路、三元里、十三行といった老舗商業地区では、店舗譲渡の告知が目立つようになりました。商店主の中には、来店客が減り、ネット販売への流出も強まったため、家賃を下げても利益を維持できないと話す人もいます。中心部のビジネス街では、オフィス空室率が21.2%まで上昇しました。店舗家賃も4.6%下落したものの、それでも借り手が見つかりません。住宅街にある飲食店でさえ、看板が何度も掛け替えられ、最後にはそのまま居抜き譲渡の貼り紙が出される光景が珍しくなくなっています。

 2026年2月23日、中指研究院は中国重点都市百大商業街・百大ショッピングセンターおよび主要商圏のオフィス賃料指数報告を発表しました。報告によると、2025年下半期の100商業街における店舗平均家賃は前期比で0.47%下落し、年間累計では0.81%の下落となりました。下落幅は2024年より0.39ポイント拡大しています。この報告では、中国の大都市で商店街の店舗家賃が下がり続け、下落幅が広がっている理由として、主に3つの要因を挙げています。1つ目は、飲食業の売上の伸びが鈍り、商店街の家賃に下押し圧力をかけていることです。2つ目は、大型ショッピングセンターが体験型消費の強みを生かして客足を吸い寄せていることです。3つ目は、多くの商店街が入居率を維持するため、家賃を下げてでも借り手を確保する方針を取っていることです。この報告は、こうした都市の店舗家賃は今後もしばらく下落が続く可能性が高いとみています。

 オフィス市場でも、同じ流れがはっきり出ています。複数の不動産コンサル会社は公開レポートの中で、一線都市では高級オフィスビルの新規供給が一気に市場へ出た一方、ITや金融などの業界では拡大ペースが鈍り、実際に埋まった面積を示す純吸収量が落ち込んでいると指摘しています。企業側も、これまでのように広いオフィスを構えるのではなく、面積を縮小したり、よりコストの低いエリアへ移ったりする傾向を強めています。さらに、シェアオフィスやリモートワークの普及によって、従来型のオフィス需要そのものが弱まっている面もあります。

 不動産価格の下落は、国民の消費マインドにも確実に影を落としています。ある住宅所有者は動画の中で、当時約1600万円(80万元)で購入した物件が、今では市場評価で約400万~600万円(20万~30万元)にまで落ち込んだと語っていました。つまり、1000万円以上が消えた計算になります。別の所有者は、管理費の負担が重すぎると不満を漏らし、住宅ローンは最長でも30年で終わるのに、管理費は住み続ける限りずっと払い続けなければならないと訴えています。住宅価格の変動に加え、収入の伸びも鈍るなかで、一部の家庭は支出を切り詰めるようになり、それが実店舗の景気をさらに冷え込ませています。

 華南の製造業集積地の周辺では、工業団地の工場建屋にも空きが目立ち始めています。輸出向け受注の不安定化、サプライチェーンの移転、さらに企業のコスト削減の動きが重なり、中小企業の経営は厳しさを増しています。広州市で衣料品卸売業を営む商人は、以前なら繁忙期には1日の来客数が1000人を超えることも珍しくなかったのに、今は目に見えて人が減ったと話しています。そのため、値下げ販売で何とか現金収入をつなぐしかない状態だといいます。

 専門家の分析では、中国の産業チェーンは今、深い調整段階に入っており、多くの企業が強い打撃を受けているとされています。とくに不動産は、これまで中国経済の中で占める比重が大きかったため、直接的にも間接的にも幅広い分野へ影響が及びました。そのうえ、消費の重心がネットへ移り、人の移動も鈍くなったことで、商業用不動産に求められる役割そのものが変わりつつあります。これから地方政府に突きつけられているのは、産業の高度化と新しい産業の育成をどう進め、都市としての魅力をどう高めていくのかという難しい課題です。

 ただ、その一方で、業界関係者の中には、主要都市の基礎的な力は長い目で見ればなお粘り強さを持っていると見る向きもあります。政策が少しずつ見直され、企業の信頼感が戻り、新興産業が育っていけば、オフィスや商業施設への需要も調整を経て徐々に落ち着いていく可能性があります。しかし少なくとも目先では、空室率の上昇と家賃下落の圧力がすぐに消えるとは言いにくいのが現実です。

(翻訳・藍彧)