中国経済が深刻な構造転換期を迎えるなか、20年以上にわたった高度成長の恩恵は終わりを告げました。不動産市場の低迷や内需不振が、建設から製造業に至る関連産業の連鎖的な衰退を引き起こし、その冷え込みは社会の隅々にまで波及しています。人々の心理は「成長への期待」から「生活水準を保つことへの不安」へと劇的に変化しました。
経済のパイが拡大を止め、過酷なゼロサムゲームに突入したことで、生活苦に端を発する抗議事件が急増しています。国際NGO「フリーダムハウス」の最新データによると、2025年第3四半期に中国本土で発生した市民の抗議事件は1392件に上り、前年同期比で約5割増加しました。参加者の層も、かつての工場労働者や農民だけでなく、非正規のプラットフォーム労働者や都市部の中間層にまで広がっています。
この重圧の矢面に立たされているのが、1400万人を突破したフードデリバリー配達員などのギグワーカーです。彼らは基本的な労働保障を奪われているだけでなく、利益の最大化を狙うプラットフォームのアルゴリズムによって配達時間を秒単位で管理されています。遅延や顧客からの低評価に対しては異議申し立ても許されない過酷な罰金システムが敷かれ、彼らは実質的に「デジタルの囚人」と化しています。システムが強要する無理な配達ノルマは、配達員を逆走や信号無視といった危険な運転へと追い込んでいます。さらに、こうした労使関係は、顧客に到着を急がされた配達員が、敷地内への進入を行い、マンションの警備員に拒まれ、その結果、交通警察がかけつける等の一触即発の事態となっています。この様な中、2025年12月には単価の一方的な引き下げと罰金強化に抗議する配達員の集団ストライキが全国各地で相次ぎました。
同時に、かつて経済の安全弁であった農村のセーフティーネットも機能不全に陥っています。出稼ぎ労働者が失業して帰郷する一方で、彼らの土地はすでに収用されたり、権利が譲渡されたりしており、帰るべき拠り所はありません。さらに、深刻な財政難に喘ぐ地方の行政が、税外収入を補うために、十分な補償のない強引な土地収用や、伝統的を大事にする住民の感情を逆撫でする画一的な葬儀改革などに走ることで、行政と住民との直接的な対立が激化しています。2025年11月末時点で年間累計661件の農村抗議事件が記録され、前年同期比で約70パーセントもの大幅増となりました。
注目すべきは、都市部の中間層や退職者等も資産の目減りにより抗議活動に身を投じていることです。その象徴が、福建省莆田市の投資会社「黄金碼頭」の破綻事件です。
同社は、実体のある貴金属店という信用を隠れ蓑にし、月利0.75パーセントの高金利や米、食用油などの無料配布をエサにして、中高年層から老後の資金や子供の結婚資金などを巧みに集めていました。しかし、年明けに配当が突如停止し、経営陣は一斉に失踪しました。シンガポールに滞在していた会長が動画を通じて責任を取ることを約束したものの、預金は引き出せず、事態の収拾には至っていません。2000人以上の被害者が生じるなか、3月2日には数千人が莆田市政府の前に集結し、「血と汗の滲むような努力で貯めた金を返せ」と抗議しました。当局は大量の警察官を動員して厳戒態勢を敷きましたが、全財産を失ったショックで現場で泣き崩れたり倒れたりする高齢者が続出し、巨額の資金消失の真相は依然として隠蔽されたままです。
地方財政の危機と統治の欠如は、身近な生活分野でも暴力的な衝突を生んでいます。3月5日には、海南省文昌市の市場で、政府転売店舗を購入した後に、法外なテナント料の引き上げを要求された小規模小売業者たちが、生存権を懸けて3日連続のストライキを起こしました。
同省白沙県では、農場側から、共有地の木を一方的に強制伐採された村民が、報復として農場側の木をすべて切り倒す事件が発生し、10年来の土地の権利をめぐる根深い対立が爆発しました。
さらに3月4日には、河北省の幼稚園で運営費を中抜きするために園児に腐った果物や傷んだ給食を出していたことが発覚しました。これに激怒した数百人の保護者が集団で門を封鎖して抗議し、返金を求める事態に発展しています。最低限のモラルや安全さえも脅かされる現状が、瞬時に人々の怒りに火をつけているのです。
現在の中国社会は、深刻な統治のジレンマに陥っています。地方行政の財政難は、公務員や警察官の給与未払いを引き起こし、治安維持の予算すら削り落としています。その一方で、財源不足を補うための強引な資金調達、すなわち不当な罰金や公共資金の着服によって、新たな社会矛盾が次々と作り出されているのです。連日のように起こる一連の事件は、もはや単発的な治安問題ではなく、末端社会がかつてない生存の危機に直面している実態の表れに他なりません。権威主義体制の社会統制力が弱体化するなか、長年蓄積された人々の不満のマグマは、噴火口を広げつつあります。
(翻訳・吉原木子)
