2026年2月19日、海外SNSプラットフォームのXである動画が一気に拡散し、大きな注目と議論を呼びました。投稿したのはアカウント名が「O(ゼロ)」の管理者で、動画について、中国当局が人型ロボットに一般市民をいじめさせる訓練を始めたと主張しています。
動画の真偽や具体的な撮影背景は、いまのところ権威ある機関による確認は出ていません。しかし、関連動画が複数のプラットフォームで繰り返し転載され、世論の空気はあっという間に熱を帯びました。
ネットユーザーのコメント。
「みんな春晩(春節聯歓晩会)の人型ロボットに歓声を上げていたのに、今度は城管(都市管理者)が直接人型ロボットで取り締まりを始めたぞ」
「人型ロボットを20体買って、弁護士を10人雇って法務を固めれば、街に出て当たり屋みたいな商売ができるのではないか」
「ロボットが楽しさではなく恐怖を運んでくるだけだ」
また、あれはやらせの可能性もあるという見方もあります。しかし、たとえ真偽が確定していなくても、争点は次第に動画そのものから離れていきました。今、燃えているのは、技術がどこまで現場に入り込んでいいのかという線引き、そして人々がその運用を信じられるのかという問題です。
この一連の感情のうねりは、つい最近の2026年の中国中央テレビ(CCTV)の春晩と強く結びついています。2026年の春晩のステージでは、複数のロボット企業が大々的に登場し、松延動力、宇樹科技、魔法原子、銀河通用などの製品が同じ舞台で披露されました。春晩は中国で視聴率が最も高く、影響力も最大級のテレビ番組の一つで、長年にわたり企業にとって重要な宣伝の場と見なされてきました。
放送が終わって間もなく、関連するロボット製品はECサイトの人気検索ワードに次々と浮上しました。極目新聞の報道によると、春晩が始まってから2時間の間に、京東プラットフォームではロボットの検索数が前の期間と比べて300%以上増え、注文数も150%以上増えたといいます。
中でも注目されたのが、杭州市の企業である宇樹科技が出した、春晩で披露されたものと同型とされる改良版ロボットです。すぐにECサイトで販売が始まり、価格は約450万円(約20万元)と表示され、京東やティックトックなどのルートで売られました。カスタマー対応では、自宅まで配送可能だという説明もあったとされています。
高額な価格と、番組で見せられた機能の印象との間にギャップがあるとして、疑問の声が一気に広がりました。「結局この春晩は商品を売るための場だったのか」「一般人が必死に1年働いた末に見せられたのは、お金持ち向けの巨大な販売イベントだったのではないか」と皮肉する声が、ネット上で次々と飛び交う形になっています。
ロボット技術の実力は本物なのかという議論も、春晩の後にいっそう熱を帯びていきました。時事評論家の「財経冷眼」は動画で、春晩のステージ上のロボットの動きは、ロボットが自分で判断してやったものでも、リモコン操作でもなく、モーションキャプチャーシステムを通じてリアルタイムで指令を伝達して行われたと指摘しました。つまり舞台の裏側でスタッフが体を動かし、ロボットが何らかの方法で信号を受け取り、同じ動きを再現していたということです。
これに対してネットユーザーからは、「 これも遠隔操作だ、ただモーションコントロールというだけ」「当初はプログラム済みと言っていたが、結局リアルタイム制御だったのか」といったコメントがありました。
公開情報を見ても、現時点では多くの人型ロボットが、遠隔操作、または半自律の制御モードに依存しています。業界の専門家の多くは、複雑で予測しにくい開放環境の中で、人型ロボットが自分で判断し、障害物を避けながら行動する能力は、まだ開発段階だと指摘します。
グローバルで見ても、遠隔補助に頼らず、長時間にわたって安定した自律行動を商用レベルで実現できている人型ロボットは、まだごく少数です。近年は、米企業ボストン・ダイナミクスのアトラスや、テスラのオプティマス計画も、デモ動画で技術の進展を強調してきました。しかし、業界関係者は、その大半が制御された環境下での実演である、という見方です。
その一方で、中国のネット上では、人型ロボットが派手に失敗する動画も大量に出回りました。宇樹科技の製品を実際に買ったというネットユーザーが、家事を手伝わせようとして、水を注がせたり、掃除をさせたり、ベビーカーを押させたりしたところ、うまくいかない場面が何度も起きたのです。
動画ではロボットの動きは鈍く、バランスも安定せず、転倒する場面まであります。ネットユーザーからは、これは30年以上前にコンピューター機能があると宣伝していたゲーム機のようなものだと皮肉る声も出ました。
高性能に見せる演出や宣伝がどれほど華やかでも、実際に家庭の中で役に立たないなら、その輝きは一気に薄れてしまう。多くの人が今まさに、そこに不信感を募らせています。
ネット上では、中国製ロボットの動作がうまくいかない場面をまとめた動画も出回っています。そこに映っているのは、中国製ロボットがまだ技術的に成熟していない現実です。体の動きをコントロールする面でも、頭脳にあたる知能の面でも完成度が足りず、それでも市場に投入してしまうのは、さすがに急ぎすぎだという見方が広がりました。
議論の中心にあるのは、技術展デモ・商業マーケティング、そして人々の期待との間の乖離が世論の焦点となりました。一部のコメントでは、春晩は公共の文化プラットフォームとして、科学技術の披露は、実態を正直に見せることを優先すべきで、過剰な期待をあおる演出になってはいけないと指摘されています。
一方で、近年の中国のロボット産業が実際に急速に伸びているのも事実だという分析もあります。中国電子学会が発表したデータでは、中国は世界最大の産業用ロボットの導入市場になっており、人型ロボットも将来の重点分野の一つとして位置づけられています。工業情報化部も2025年の関連文書で、人型ロボットの産業化を後押しし、公共サービスや特殊作業などの場面へ応用を広げる方針も打ち出しています。
しかし、技術が進歩するほど、それが社会の統治や取り締まりと結びつく場面も増え、同時に倫理面の議論が避けられなくなります。今回広まったロボットが歩行者を追いかける動画が強い反応を呼んだのは、まさにここに触れたからです。人々の頭の中に、技術による取り締まり、そして人の手を介さない取り締まりという発想が一気に広がってしまったのです。
実際、これ以前から中国の一部の都市では、巡回ロボットやドローンを使って、都市管理を補助する試みが進められてきました。支持する側は、効率が上がるうえ、現場の人員のリスクも減らせると言います。その一方で反対する側は、権力が乱用されるのではないか、何か起きたときの責任は誰が負うのかという点を心配しています。
SNSでも、ロボットの話題がいわゆる城管の取り締まりと結びつけられ、将来こうした技術が強制的な管理に使われるのではないかという不安が目立ちました。逆に、こうした動画は誇張した演出や話題づくりの宣伝にすぎず、深読みしすぎる必要はないという人もいます。
どちらの立場にせよ、はっきりしているのは、ロボットがもはや単なるハイテク商品ではなくなりつつあることです。人々の日常に入り込む直前まで来ていて、社会全体で議論せざるを得ない公共のテーマになり始めています。
(翻訳・藍彧)
