現在、海外渡航用のビザ取得が難しいと感じる人は少なくありませんが、中国における現実はさらに深刻です。最も基本的なパスポートの取得すら、非常に困難になっているのです。パスポートの取得は本来国民の正当な権利ですが、今や多くの地域でこの「国際的な身分証明書」をスムーズに手に入れることは至難の業となっています。
近年、中国国内では出国に関する行政規制が日に日に厳しくなり、出入国管理の網が密かに張り巡らされています。この規制強化はまず公的機関や国有企業など、体制内で働く人々に現れました。広く推進される「パスポートの提出・保管」政策は、中枢部門から国有企業職員、末端の公務員、教育機関にまで波及しています。国有企業の職員によると、私用パスポートの申請には所属部署や人事など複数プロセスの経由、時には7人もの部門責任者の署名が必要で、トップの決裁がなければ受理されません。さらに無事に取得できてもすぐに職場へ提出して一括管理され、実際に使用する際にも渡航目的や目的地などの詳細を再び段階的に申請する必要があります。
こうした規制は、彼らの生活に実質的な影響を及ぼしています。ある国有企業の管理職は、出国手続きが過去に比べはるかに煩雑になったと嘆いています。大学で教鞭をとる彼の妻もパスポート提出を求められ、昨年の冬休みに海外旅行をした後、夏休みの再申請は「出国は年1回のみ」と却下され、上司に移民の意思を問いただされたといいます。現職の職員に限らず、退職後5年以内の元教職員でさえ出国や香港・マカオへの渡航が制限されており、煩雑な手続きを前に旅行を諦めざるを得ないのが現状です。
一般市民も同様にこの厳しさを肌で感じています。国際線の航空券を予約しただけで、地元警察から出国の理由を詳細に電話で尋ねられたという報告が相次いでいます。貴州省の住民によると、欧米や日本を頻繁に往復する人はパスポート提出を強制されることもあり、帰国後に警察署で事情聴取を受け、海外での行動を尋問されるケースも出ています。長年海外に居住するある華僑も、戸籍のある甘粛省の当局から「一時保管」を名目にパスポート提出を求められました。明確な法的根拠や期限を欠く管理方法に、多くの市民が不安を抱いています。
実際の窓口申請でも、一般の人々は理不尽な壁に直面します。窓口担当者がパスポートとビザの申請を意図的に混同し、不必要なハードルを設けるケースがあります。単にパスポートを取得したいだけなのに目的地を執拗に問われ、「東南アジアは犯罪多発地域だから」と拒否され、行き先を日韓に変えても再び拒否された事例がありました。さらに旅行や出稼ぎ目的の申請で、就労証明書や預金残高証明書、海外からの招待状など、本来ビザ申請にのみ必要な書類を求められることもあり、取得を阻む口実となっています。
注目すべきは、パスポート申請において、地域や政治的背景に基づく露骨な審査が存在することです。公安当局のシステム上、特定の地域に住む住民がパスポートを申請する際、通常の地域よりもはるかに厳しい審査メカニズムが発動されます。例えば、遼寧省の特定の地域などの住民は、全国どこでも申請できるという利便性を享受できず、戸籍所在地に戻って申請しなければなりません。書類提出後も1週間から1ヶ月ほど待たされ、いわゆる「要注意人物」の出国を防ぐための厳格な身元確認と身辺調査を受けます。このような行政による厳重な監視により、一部の地域の人々は移動の際に見えない障壁に直面しています。
現在の中国の経済環境下では、国内での就職競争の激化に伴い、学歴向上のための留学であれ、海外での就労機会の模索であれ、海外渡航は多くの若者にとって有力な選択肢となっています。大学生にとって、在学中のパスポート取得は本来比較的容易であり、在学証明書を提出するだけで多くの国のビザを取得できることは、かつて「学生の特権」と見なされていました。しかし規制の強化に伴い、現在では純粋に留学を希望する学生であっても、パスポート申請は簡単にはいかなくなっています。一部の事例では、学生のパスポート申請に対しても厳しい条件が課され、海外の学校の入学許可書を提示しなければ受理されないケースさえあるといいます。
様々な障害に直面し、多くの中国国民はパスポート申請時に独自の「対策」を編み出さざるを得なくなっています。例えば、申請書類の記入において、入学許可書や入社証明書などの煩雑な書類を求められるのを避けるため、出国の理由を「旅行」と記入するしかなく、留学や就労と正直に書くことを避ける傾向があります。もし窓口の担当者による理不尽な対応に遭遇した場合、一部の申請者は相手に警察官としての識別番号の提示を求めたり、国家移民管理局のホットラインに電話して通報したり、あるいは別の市や県の出入国管理局へ足を運んだりして、あの手この手で申請の壁を乗り越えようとしています。
国内での競争が激化の一途をたどる中、一般の人々に残された活路や選択肢は決して多くありません。パスポートは単なる国際的な身分証明書であるだけでなく、人々が世界を探索し、より多くの可能性を見出すための切符でもあります。しかし、出入国の規制が絶えず強化されるにつれて、この一冊のパスポートが、海外へ飛び出そうとする多くの一般市民の前に立ちはだかる、最も高い壁になりつつあるのです。
(翻訳・吉原木子)
