中国国防省が、中国共産党中央軍事委員会の張又侠副主席およびその側近である劉振立氏に対する調査と拘束を正式に公表しました。この異例の発表は直ちに国内外に衝撃を与え、最高指導層を襲った激震は、瞬く間に社会の各階層へと伝播しています。現在、中国経済を牽引する江蘇・浙江・上海、そして広東地域では、この政治的変動を背景に、「潤(ルン)」と呼ばれる現象が急速に広がり、人々の間で大きな議論を呼んでいます。「潤」とは、中国語のピンイン表記「run」が英語の「Run(逃げる)」と綴りが同じであることから生まれたネットスラングで、海外への脱出や移住を意味する隠語です。この「潤」の動きが、単なる衝動から具体的な行動へと変わりつつあるのです。数万もの家庭が、まるで「門が閉ざされる前に、あらゆる手段を尽くして脱出する」という無言の了解に達しているかのようです。

 この集団的な不安には、確かな根拠があります。経済や移民動向に詳しい専門家によれば、浙江省だけでも推定30万人が「いつでも出国できる」準備を整えているといいます。SNS上で拡散されている出入国データはさらに衝撃的です。わずか30日間で、実に37万人分もの出国手続きが突貫で完了したとされているのです。このなりふり構わぬ「大脱走」の背景には、将来の生存空間に対する深い懸念があります。巷では、極めて厳しい外貨規制が常態化し、わずか1000元の海外送金でさえ厳重な審査の対象になると囁かれています。退路を完全に断たれ、まさに「袋の鼠」となることへの恐怖が、富裕層の間で急速に広がっているのです。この駆け込み需要の影響で、米国ビザの面接予約待ちは300日以上にまで延びていますが、それでも人々の足を止めることはできません。

 このパニックに近い感情は、現実社会において生々しい光景として映し出されています。北京や広州の米国大使館・領事館前には何重もの長蛇の列ができ、人波の中には悲壮なまでの切迫感が漂っています。カメラの前である並ぶ人々が漏らした「国中でパスポートを作っている。この国にはもう未来がない」という嘆きは、多くの人々の心の底にある絶望を代弁しています。そして、喧騒に包まれた申請ホールの片隅で語られた、ある「パスポート論」が痛烈に響きます。「この世界において、他国のパスポートは正真正銘の『通行手形』であり、思い立った時にすぐ旅立てるものです。しかし、中国人にとってのパスポートは単なる一枚の『申請書』に過ぎません。まず自分が何者かを証明し、次に金があることを証明し、最後に『必ず戻ってくる』と誓ってみせなければならないのです」。この言葉は、移動の自由を求める際に中国の申請者が直面する、幾重もの自己証明と尊厳の欠落を無念にも言い当てています。

 極めて皮肉なことに、この「足による投票」という選択は、当局のプロパガンダとは完全に矛盾しています。国内では長年にわたり日米など西側諸国への批判が繰り返されているにもかかわらず、移民先としては、これらの国々が依然として不動の第一希望地として君臨しています。対照的に、外交辞令上は「鉄壁の盟友」とされるロシア、イラン、キューバといった国々はほとんど顧みられず、観光客さえ稀です。この「言動と行動の矛盾」は、人々の心の内にある最も正直な価値判断を浮き彫りにしていると言えるでしょう。

 この怒涛のような出国ラッシュに対し、公権力が講じた策は「緩和」ではなく、より厳格な「統制」でした。甘粛、貴州、雲南といった地方から、繁栄する一級都市に至るまで、パスポート没収の網が静かに、しかし確実に狭められています。規制の対象はもはや従来の指導幹部にとどまらず、末端の公務員、国有企業の従業員、さらには学校の一般教師にまで拡大しています。多くの人々が突如として、自身のパスポートや許可証を職場に「統一保管」され、強制的に回収される事態に直面しているのです。香港への渡航でさえ、地元の行政機関による厳しい審査と幾重もの関門を突破しなければならないのが現状です。

 この「脱出」と「統制」のせめぎ合いの中で、出口を探しているのは一般市民だけではありません。海外在住の情報筋によると、体制内部における遠心力も同様に凄まじく、共産党中央組織部の副部長クラスの元高官が特殊ルートを通じて亡命に成功したとの情報さえ流れています。核心的な機密を握る特権階級と、現場の異変を肌で感じている一般庶民が同時に船から飛び降りようとしているこの現象は、単なる移民ブームの域を超え、特定の歴史的局面における社会的な信頼の深刻な崩壊を予兆しているのかもしれません。

(翻訳・吉原木子)