1月26日の未明、重慶の渝蓉(ゆよう)高速道路にある雲霧山トンネルで、静寂を切り裂くような轟音が響き渡りました。突如として発生したこの惨事は、瞬く間に現場を地獄絵図のような光景へと変えてしまいました。

 事故当時、トンネルの中ほどを走行していたトラックが突然炎上し、激しい爆発を起こしました。現場に居合わせた人々の証言によれば、その衝撃は凄まじく、まるで地震のようだったといいます。爆風とともに発生した黒煙は一瞬にしてトンネル内を飲み込み、車内で仮眠をとっていた多くのドライバーや乗客は叩き起こされ、目の前に広がる漆黒の闇と、息ができなくなるほどの粉塵に直面することになりました。

 目撃者である運送会社のトレーラー運転手、万さんは、当時トンネルの中間地点を走行していました。激しい振動で目を覚ました彼は、車内外がすでに完全な暗闇に包まれ、空気が刺すような濃煙で充満していることに気づきました。事態の緊急性を悟った彼は、すぐに同乗者を起こして車を乗り捨て、脱出を図りました。しかし、生還への道のりは困難を極めました。万さんは携帯電話のわずかな明かりを頼りに、腰をかがめ、息を殺しながら混乱の中を手探りで進むしかありませんでした。濃煙の中で少しでも酸素を得るため、彼は路側の排水溝の隙間に這いつくばって息を継ぎ、衣服で口と鼻を強く押さえながら、暗闇の中を必死に歩み続けました。彼は後にその時の経験を振り返り、「その300メートルから400メートルの道のりでは絶望感に襲われ、熱波が絶えず顔を打ち付けていた」と語っています。避難連絡坑の入り口を通りかかり、冷たい空気を感じた時、ようやく助かったと確信したそうです。

 トンネル内の惨状は目を覆うばかりでしたが、外でも煙突のように噴き上がった黒煙が夜空を覆い隠していました。トンネルの入り口付近では多くの車両が立ち往生し、後続車の多くが状況を見てUターンし逃げようとしたため、現場周辺は大混乱に陥りました。辛うじて脱出してきた人々の多くは憔悴しきっており、顔や手、鼻の穴の中まで煤で真っ黒になっていました。万さんは九死に一生を得ましたが、大量の濃煙を吸い込んだために激しい喉の痛みと声枯れを訴え、すぐに重慶医科大学附属大学城病院へ搬送され治療を受けることになりました。彼の話によると、出火したトラックは当時すでに出口付近まで走行しており、彼は最も早く危険を察知して脱出した一人でしたが、その後、トンネル内の他のドライバーたちも続々と現場から逃げ出してきました。

 事故の原因について、当局は当初、トラックの自然発火であると発表しました。しかし、インターネット上では異なる見方も拡散されています。中国国内の情勢を注視しているソーシャルメディアのアカウントなどは、今回の事件がタンクローリーの運転手による、社会への不満を爆発させた極端な行動である可能性を指摘していますが、この説は現時点で当局によって確認されていません。また、現地のネットユーザーが動画のコメント欄で明かしたところによると、事故車両には引火性または爆発性の物品が積載されており、現場では連続して3回の爆発が発生したといいます。あるネットユーザーは、自身の叔父が大火災で頭部と両手に重度の火傷を負い、現在は陸軍軍医大学西南病院の熱傷科集中治療室で救命処置を受けており、家族も面会できない状態であると悲痛な声を上げています。

 事故発生後、高速道路の運営会社および地元当局が迅速に対応にあたりました。26日昼の当局の発表によると、煙を吸い込んだ人々は病院で治療を受けており、現時点で死者の報告はなく、事故原因は調査中であるとされました。しかし、この「死者ゼロ」という発表はネット上で少なからぬ論争を呼んでいます。多くの目撃者や現地のネットユーザーはこれを信じ難いとしています。彼らは、これほど密閉された空間で猛烈な爆発と火災が発生し、煙の毒性も極めて高い状況において、「煙の吸入」だけで被害を説明するのは事態を過小評価しているのではないかと疑念を抱いています。あるユーザーは、「現場の煙は火よりも凄まじく、臭いを嗅いだだけで中毒症状が出た人も多い」と述べ、雲霧山(雲と霧の山)トンネルという名前が今回まさに「名実ともに」煙霧に包まれたことを嘆く声もありました。

 現在、事故現場の清掃と修復作業が進められていますが、トンネルの損傷は深刻で、修復には多額の費用がかかると予想されています。突如として降りかかったこの災難は、体験者に消えない心の傷を残しただけでなく、高速道路トンネルの安全管理体制に対する一般市民の深い懸念をも引き起こしています。

(翻訳・吉原木子)