昨年末から今年初めにかけて、中国各地で呼吸器感染が一気に増えました。今回はインフルエンザだけではありません。複数のウイルスが同時に広がり、病院は混み合い、現場の負担が目に見えて増えています。いま中国で何が起きているのでしょうか。感染の実態と、なぜ不安の声が強まっているのかを、整理してお伝えします。

ウイルスの構成が複雑に

 SNSでは、体験談の動画を投稿する人が相次いでいます。新型コロナウイルスの抗原検査で陽性になったキットを投稿する人もいれば、家の高齢者や親族、知人が立て続けに亡くなった状況を記録し、中国当局の情報発信が十分ではないのではないかと疑う声も出ています。河南省新蔡県では、複数の住民が、症状が初期の新型コロナとよく似ている患者が多く、進行が速く、重症化して亡くなる例もあると明かしています。

 現地住民の張さんは「一昨日の夜、息子が熱を出して、暑くなったり寒くなったりする。風邪でもすぐ人が死ぬ」と話しました。別の住民の小蔡さんも、喉の激しい痛みや発熱があり、点滴を受けたと述べています。

 一方で、公式発表や医療の専門ルートのデータからも、流行している病原体の構成が変わりつつあることが示されています。ネットユーザーがまとめた2026年第1週の疫学監視結果では、A型インフルエンザの割合が明確に下がる一方、RSウイルスとライノウイルスが主要な流行ウイルスとして増えています。北部はRSウイルスが中心、南部はライノウイルスが中心という傾向があり、どのウイルスが優勢かは省ごとに違いがあるとされています。

 気象条件がリスクをさらに押し上げています。中国の国営メディアは、1月16日から20日にかけて北から南へ「インフルエンザの気象リスク」が広がると伝えました。低温、乾燥、強風の環境は、ウイルスが生き残りやすく、拡散もしやすいとされています。ティックトックのブロガーは「細菌やウイルスは強い風に乗ってあちこち漂う。特に広がりやすい」と説明しています。

 多くの保護者が「ウイルスが次から次へと来る」と訴えています。ある母親は、娘が咳き込む様子を動画でつらそうに記録し、昨年12月にA型インフルエンザを何とか乗り切ったのに、今年1月にはまた別の感染に見舞われたと話しています。

 別の保護者は、A型インフル、B型インフル、新型コロナはいずれも自己検査で陰性だったのに、ひどい鼻づまりが出て、口の中も鼻の奥も焼けるように痛み、さらに脚の痛みまで強かったと述べています。今広がっている病原体が、想像以上に多様である可能性を示しています。

 新華社は、広東省仏山の高校でノロウイルス感染が発生し、1月17日の時点で生徒103人が感染したと伝えました。主な症状は嘔吐と下痢で、重篤な患者は出ていないとされています。呼吸器系のウイルスだけでなく、腸管系のウイルスも地域によっては動いていることが分かります。

病院は人であふれ

 複数のウイルスが同時に広がったことで、いちばん直接的に影響を受けているのが医療現場です。医療システムは高い負荷が続いています。

 各地のネットユーザーが投稿した動画では、中国の最上位クラスの病院(三甲病院)の外来ロビーが人で埋まり、廊下には臨時ベッドが並び、小児科はとくに混雑している様子が映っています。「診察を受ける子どもたちで病院の廊下が埋め尽くされている」との投稿がありました。

 斉魯晩報は小児科医である李付根(りふこん)医師の話として、2025年10月下旬以降、小児科外来の患者数がはっきり増えており、「11月最初の2日間だけで4000人を超え、そのうち40%以上がA型インフルエンザだ。今回のA型インフルは発症が急で、熱が高く、ぶり返しやすいというのが特徴で、日中は比較的落ち着いていても、夜に突然39度を超える高熱が出る子どもも少なくない」と説明しています。

 ある母親は、「うちの子どもは少し咳が出ている。今朝、幼稚園に送った際、クラスにいるのが3人か5人程度しかいなかった」「今、病院はきっと子どもの受診で混み合っているはずだ」と語りました。

 別のネットユーザーは、病院の光景に「怖くて震えた」と言い、たった1日で受診する子どもの数が明らかに増えたのを実感したと投稿しています。

 小児科だけではなく、複数のネットユーザーが、発熱や咳、胸の苦しさ、強いだるさで病院に行ったところ、大病院では長い列ができ、廊下には臨時ベッドが並んでいたと投稿しています。

葬儀業界も「限界稼働」

 医療システムの混雑と密接に関連しているのが、葬儀業界の異常な忙しさです。

 遺体のメイクを担当する王さん(女性)は、最近は突然死が多いと明かし、火葬場はほぼ毎日フル稼働していると語りました。「毎日処理しきれないほどの仕事量で、年齢は関係ない。さっきまで元気だったのに、次の瞬間には火葬場に運ばれてくることもある。遺族は泣き崩れている」

 吉林省の火葬担当者である葛さん(男性)も、「最近は亡くなる人が明らかに増えており、葬儀の仕事は人が集まらない仕事だったのに、今は逆に人が集まる仕事になっている。2021年末に感染対策が緩和された後にも、同じように一気に混み合った時期があった。この数日もまた多くの人が亡くなっている。夜も残業で全く休めない」と述べています。

 各地のネットユーザーが出している現場の例も、目を引きます。

 広東省のネットユーザーは、自分の村では2025年だけで70人以上が亡くなり、1985年以降生まれや1995年以降生まれが多いと書いています。

 福建省のネットユーザーは、短い期間に身近な年長者12人が相次いで亡くなったと話しました。

 広西チワン族自治区の小さな町では、1週間で8人が亡くなり、その多くは高齢者だったという投稿もあります。

 また、人口約3300人の村で、2025年10月までに213人を見送ったとの投稿もあります。

 湖南省常徳の住民である賀さんは、昨年12月以降、親戚や友人の中で複数人が亡くなったと話しています。中には普段から寒中水泳や太極拳をしていた人が突然亡くなり、病院が示した死因は「がん」や「心筋梗塞」だったといいます。

 葬儀インフラの拡張も、こうした流れを裏づけています。

 これらの動きが示しているのは、葬儀の仕組み全体が、継続的に強い負荷の中で回り続けているという現実です。

情報公開の不足と広がる疑念

 複数の情報をあわせて見ると、いま中国では、複数の病原体が重なって広がる冬の感染拡大が起きており、その影響は家庭から病院へ、さらに葬儀の現場へと連鎖していることがうかがえます。感染者や死亡例が増えるにつれ、「中国当局が感染状況を隠しているのではないか」という議論もネット上で膨らみ続けています。

 「新型コロナや他のウイルスに関する発表が十分ではなく、その結果、国民の側に必要な警戒心や予防意識が育たないままになっている」

 「今広がっている病原体は複雑で、新型コロナやA型インフルといった単一の呼び名だけでは実態を説明できない。検査結果の内訳など、より詳しいデータを公開すべきだ」

 専門家は、あらゆる死亡を単一のウイルスに帰すべきではないと注意喚起しています。冬はもともと心脳血管疾患の多発期であり、そこにインフルエンザ、RSウイルス、ライノウイルス、ノロウイルスが並行して流行すれば、高齢者や持病のある人のリスクはさらに上がります。

(翻訳・藍彧)