このほど、浙江省杭州市の南湖公園で撮影されたショート動画がネット上で大きな話題となりました。野生の白鶴にドローンが至近距離まで迫り、最後は怒った白鶴が勢いよく蹴り飛ばして池に落とすという内容です。一見すると面白い動画に見えます。しかし、その裏には、ドローンの無秩序な飛行が生態系や社会秩序に及ぼす深い問題が映し出されています。

 目撃者の方(ファン)さんは「都市快報」の取材に対し、当日、南湖公園で野鳥観察をしていたところ、湖の縁で3羽の白鶴がいたのを見たと話しました。彼女が帰ろうとした時、遠くから1機のドローンが飛来し、白鶴から約10メートルの距離まで近づいたといいます。最初は白鶴も気にしない様子でした。ところがドローンは向きを変え、急に距離を詰めます。約1メートルまで接近し、まるで顔の正面から撮影するような状態になりました。驚いた白鶴は飛び上がり、足でドローンを強く蹴って池へ落とし、周囲の撮影愛好者の視線を集めました。

 別の観察者「旅店老板」も動画で、ドローンが何度も白鶴に近づき、白鶴は最初は避けようとしたものの、ついに我慢の限界を超えて反撃に出たと補足しました。ネット上では「よくやった」と白鶴を称賛する声がある一方、ドローンの行為に憤る声も多く、白鶴がけがをしたのではと心配する人もいました。ネットユーザーの「HZ花儿」は21日に再び様子を見に行き、「既存の古傷以外に新たな傷は見られず、これは非常に幸運だ」と報告しました。

 浙江省野鳥会の副理事長である程国龙(チェン・グオロン)氏は取材に対し、この白鶴は12月初旬に南湖公園付近へ飛来し、オスの白鶴の脚に古傷があり、長距離の渡りが困難なため、ここにしばらく留まっていた可能性があるといいます。程氏は、今回のドローン追い払いには、雛を守ろうとする強い本能が関わっていた可能性があるとの見方を示しました。一方、ネットユーザーの「阿屿很忙」は、白鶴の家族3羽は21日午後に南湖を離れたと投稿しています。

 ここまでを見ると、どこか痛快な話にも見えます。ですが、この一見ユーモラスな場面の背後には、より複雑な現実があります。中国でのドローンの乱用は、単なる生態系への干渉にとどまりません。法規制、公共の行動規範、技術倫理など、複数の矛盾が絡み合う問題へと広がっています。

 11月1日、山東省東営市の黄河口で渡り鳥の飛来シーズンを迎え、低空飛行していたドローンがガン(雁)に衝突して死なせてしまい、現場の観光客が驚きの声を上げました。ネットユーザーからは「ガンは家族単位で隊列を組む。この1羽の死で、その家族は悲しみに包まれながら旅を続けることになる」とコメントしました。

 ドローンによる鳥への妨害は決して珍しい例ではありません。報道によると、一部の撮影愛好者は視覚的にインパクトのある動画を得るため、ドローンを極端に低く、そして近くまで飛ばし、鳥や野生動物に接近して「他にはない映像」を狙うことがあります。群れの中を縫うように飛ばして撮影すれば、鳥が驚いて飛び立ち、飛行ルートを変えたり、ときには命の危険にさらされたりします。

 観察者の指摘では、突然の接近そのものに加え、ドローンの騒音が鳥の心拍数を上げ、代謝の乱れを招き、通常の行動を崩す可能性があるとされています。飛行や繁殖のリズムに影響し、群れから遅れて離れてしまうなど、さらに深刻な結果につながる恐れもあります。長期的な妨害が続けば、個体数そのものに悪影響が出る可能性も否定できません。こうした過激な撮影はネット上で繰り返し見られ、中には極限撮影をあおるような投稿さえあります。

 しかし、いわゆる「映える動画のために撮る」という発想は、野生動物の安全を犠牲にして、生き物を単なる動画素材へと変えてしまう危うさをはらんでいます。本当に自然を尊重しているのか、真剣に考え直す必要があります。

 生態系の専門家は、鳥の反応は種類や状況で異なるものの、共通してドローンを脅威とみなし、逃避行動や攻撃行動を引き起こし得ると注意を促しています。それにもかかわらず、一部の撮影者が「極限の動画」を求めて至近距離まで飛ばす行為は、個別の迷惑行為を超え、いまや「生態系の危機」と呼ぶべき段階に入りつつあるという見方です。

 ドローンは特定分野では法的な規制がありますが、現場での運用は明らかに後手に回っている面があります。中国の「野生動物保護法」などは、野生動物の生息や繁殖を妨げる行為を禁じていますが、ドローンの騒音や飛行経路といった具体的な違法行為の線引きは明確ではありません。また、一部の自然保護区がドローン飛行禁止の告知を出そうとしても、手続き上は民間航空当局の承認が必要とされ、短期間では実現しにくい状況があるとされます。そのため、保護担当者が違反飛行に対して実効性のある処分を下しにくいという課題が残っています。

 ドローンの自由飛行は、野生生態系に害を及ぼすだけでなく、プライバシーの侵害や公共の安全にもつながりかねません。ドローンに高精細カメラが搭載されれば、私的空間に容易に入り込み、盗撮ではないかという不安を生みます。

 ある投稿者は、次のように訴えています。
 「今朝早く、本当に腹が立つ出来事があった。どこから来たのか分からないドローンが、うちの窓の外でしばらく撮影していて、しばらく旋回もしていた。プライバシーが脅かされた気がする」

 また、ドローンの騒音も都市生活の質を下げます。静かな住宅地では、ドローンのブーンという音が騒音公害を強めるものとして受け止められ、いらだちを招くだけでなく、心身への影響を心配する声もあります。

 広東省仏山市で、万科金域水岸と中南浜江国際という2つの住宅団地の間にドローンの飛行拠点が設けられたケースでは、拠点ができて以来、周辺住民が騒音に悩まされ続けていると伝えられています。

 団地の住民である李さんは、こう話します。
 「音をたとえるなら、悲鳴みたいな音だ。時間も決まっていない。夜8時のこともあれば、9時のこともある」

 中国ではドローン技術が急速に発展していますが、社会全体で見れば「どう使うのが適切か」という認識はまだ十分に浸透していません。ドローンの安全運用や生態系への配慮といった倫理を、教育の場や社会啓発として広く伝える取り組みはなお不足しています。操縦者に対する訓練や資格認定の仕組みも整備が進んでいるとはいえ、誰もが納得できる共通ルールとして定着している段階には至っていないのが実情です。

 杭州市で白鶴がドローンを蹴り落とした動画は、一時はネット上の面白い話題として消費されました。しかし、その背景にあるのは、ドローンが社会、自然環境、そして法制度の間で引き起こしている矛盾です。ドローン技術そのものは危険な存在ではありません。ただ、ルールによる歯止めや操縦者の倫理観が欠けた状態では、ドローンが生態系と社会秩序をかき乱す要因にもなり得ます。

 専門家は、技術だけで無秩序な飛行問題を解決することはできず、法律、行政の運用、社会教育など複数の面から同時に取り組む必要があると指摘しています。

(翻訳・藍彧)