「中華料理」と聞いて、真っ先に「ギョーザ」や「ショーロンポー」を思い浮かべる人は少なくないでしょう。餃子や肉まん、ラーメン、ショーロンポーなど、小麦粉を原料とした料理の数々を、中華圏では総じて「麺食(めんしょく)」と呼びます。
 中国の麺食文化は長い歴史があります。製法から食べ方まで、各地の風土に根差した豊かな食の知恵が詰まっています。現代において、麺食は胃袋を満たすだけでなく、大きなビジネスチャンスにもなっています。今回は、そんな奥深い麺食の中から代表的な4種類をご紹介します。

一、「餃子」にまつわる言葉の妙

 日本では焼き餃子が主流ですが、中国では茹で餃子(水餃子)が主流です。中国北方では冬至や旧正月に餃子を食べる習慣が古くから続いており、今では冷凍餃子をさっと茹でて食べるスタイルが、忙しい現代人の手軽な食事として定着しています。餃子は華人の生活にどれほど深く根付いているかは、華人の言葉の端々からも伺えます。

中華と言えば小麦粉?多彩な「麺食」の世界を知る.
中国の水餃子(AI作成)

 ここで、茹で餃子にまつわるしゃれ言葉「歇後語(けつごご)」いくつか紹介します。

「大年三十吃餃子──沒有外人(大みそかに餃子を食べる──よそ者はいない)」

 家族全員が集まる年越しの食卓で出される餃子は、身内のためだけの特別な料理です。「同じ皿の餃子を食べれば、血縁が無くても皆家族」という、暖かい親近感が込められています。

「餃子開口──露餡了(餃子が口を開いた──ばれてしまった)」

 餃子は具を皮で包み込み、中の具「餡(シェン)」が外に出ないように作られています。しかし、茹で餃子は皮が破れてしまう(口を開く)と、「餡(中の具)」が露出してしまい、餃子の食感が著しく悪くなるだけでなく、鍋の中の茹で汁もめちゃくちゃになってしまい、料理としては失敗です。ここから「露餡(ローシェン=ボロが出る、バレる)」という表現が生まれ、隠し事が明るみに出ることのたとえとして使われるようになりました。

「茶壺裡煮餃子──心裡有數(やかんで餃子を茹でる──心の中では分かっている)」

 狭い口のやかんで餃子を茹でると、外からは中身が見えません。しかし、入れた本人はその個数を正確に把握しています。ここから転じて「状況を完璧に理解し、自信や見通しがあること」を意味するようになりました。

 このように、生き生きとして面白い熟語は世代を超えて語り継がれ、今や餃子と人々との深い味わいのある関係を伝えています。

二、馬祖人の誇り「馬祖蔥油餅」

 葱油餅(ツォンヨウビン)は、小麦粉の生地に油を塗り、刻みネギを具として巻き込んで焼いた餅(ビン)です。一見シンプルですが、幾重にも重なる層を作り、香ばしくサクッとした食感に仕上げるには、相応の手間と技が必要です。
 台湾海峡北部に位置する馬祖(マーツー)列島出身の人々は、移住先でこの蔥油餅を作って販売し生計を立てることが良くあります。実は、馬祖はもともと麺食が盛んな地域ではありませんでしたが、1960年代以降、アメリカからの援助で小麦粉やバターなどが供給されることをきっかけに、ようやく小麦粉が日常の食生活に浸透したのです。

葱油餅(Howard61313, GFDL, via Wikimedia Commons)

 緊迫する軍事境界線に立地している馬祖列島。そこに駐留する台湾の兵士の多くは中国北方の出身です。彼らは故郷の知恵を生かし、馬祖特産の野生のネギを小麦粉生地に練り込み、大きく薄く伸ばし焼き上げました。この調理法は馬祖の人々の口に合い、やがて蔥油餅は馬祖人の得意の名物料理となり、多くの馬祖人が生計を立てるための重要な商いになったのです。

三、芸術的な「ひだ」が命の「小籠包」

 英語で「スープダンプリング(Soup Dumpling)」と訳される小籠包は、薄い皮の中に閉じ込められた熱々のスープが最大の魅力です。その美味しさを支えているのが、繊細で美しい外観です。

 

(Junhao!, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

 柔らかくジューシーな食感のためには、しっかりとした形の外皮が欠かせないため、「小籠包のひだの数で職人の技量が分かる」と言われるほど、その丁寧な作り方は多くの食卓の話題となっています。一般的に、ひだは12~18本が理想的だとされ、見た目の美しさだけでなくしっかりと皮を閉じ、スープの漏れ出しを防ぐためでもあります。絶妙なコシと粘りを持たせた生地を操る手先の器用さが、至高の一口を生み出すのです。

四、西安の語らいに欠かせない「羊肉泡饃」

 「泡饃(パオモー)を食べないと、本当に西安(シーアン、Xi’an)を訪れたとは言えない」という言葉があるほど、中国西北地方を代表する料理「羊肉泡饃」。「饃(モー)」とは、発酵させない小麦粉生地を焼いた硬いパンのような麺食です。これを細かくちぎり、羊肉や牛肉に豚骨と香辛料を加えて煮込んだ濃厚なスープにを入れ、柔らかくなるまで煮込んで出来上がる料理は「羊肉泡饃」です。

羊肉泡饃(No machine-readable author provided. Pubuhan assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 面白いのはその伝統的な食べ方です。店主から「自分で掰(ちぎ)りますか」と尋ねてきます。客は「自分で掰る」と言うと、一枚の饃とボウルが渡されます。饃を好みの大きさにちぎってボウルに入れて、店主に返して調理してもらいます。これをめんどくさがって、機械でちぎる店も増えましたが、友達と語らいながらゆっくりと饃をちぎる時間は、西安ならではの豊かで文化的な体験と言えるでしょう。

 今回ご紹介した4つの料理は、広大な麺食文化のほんの一部に過ぎません。皆さんも中華料理を味わう際は、その美味しさの背景にある歴史や文化の深さを、ぜひ一緒に噛み締めてみてください。

 (文・斯玟/翻訳・慎吾)