本来なら家族団らんや親戚訪問で賑わうべき中国の旧正月、今年は驚くほど静かでした。特に河南省では、SNSに上がった2本の動画が、その異様さをはっきり映しています。
河南省商丘市(しょうきゅうし)の街では、花火や爆竹の音がまったく聞こえません。通りは普段の日と変わらず閑散としており、立ち止まって話す人の輪もなく、祝祭らしい熱気が見当たりません。
今年、久しぶりに帰省して年を越した。村の端から端まで見渡しても、ひっそりしていて、ほとんど人影がない。たまに車が数台通っても、みんな急ぎ足で通り過ぎるだけだ。子どもの頃の旧正月は、村中がにぎやかで、人であふれていた。しかし今は若い人がみんな外に出て働いていて、帰ってきても数日でまた出ていく。村に残るのは年寄りばかりだ。年の雰囲気が消えたのではない。一緒に年を越すはずの人たちが、散り散りになったのだ。あの頃のにぎわいは、もう二度と戻らない。
これらの動画が伝えているのは、旧正月なのに普段の日と変わらないほど静まり返った河南省の姿です。公式メディアは旧正月の消費ムードを盛り上げようと、さまざまな文化観光イベントや灯籠祭り、観光系のフェスを打ち出して「消費」や「旧正月の雰囲気」を呼び戻そうとしています。しかし、そうした公式演出のにぎわいと、実際の街の冷え込みには、はっきりした落差があります。
大紀元の記者は、河南省禹州市出身で、現在は河南省鄭州市で働く暁明さんに話を聞きました。2月17日、暁明さんは故郷で新年を過ごした感想をこう語りました。
「今年は、旧正月らしさがまったくない。街に人がいない。昔の旧正月なら、地元の若い人も年配の人も大通りに出てきて、あいさつして回っていた。子どもたちも大勢で爆竹を鳴らしたり、燃え残りを拾ったりしていた。でも今年はそれがない。見渡しても静かで、冷え切っている」
「河南だけではない。朝、東北のハルビン市の友人と電話したところ、向こうも旧正月の雰囲気が全くなかった」
「みんな、ここ数年より生活がずっと苦しくなっている。仕事の機会も減って、収入も思うようにいかない。旧正月すら、まともに迎えられない」
暁明さんは、村に帰省する人が少ないのは、主に「お金がない」ためだと考えています。旧正月に帰省するとなれば、親戚の家を回ったり、手土産を用意したり、外食や買い物も含めて出費が増えます。ところが多くの人は収入が低く、日々の生活で手一杯で、わざわざ帰る気になれないと言います。
「家族に、どうしても会わなきゃいけない大事な人がいなければ、帰らない人が多いのだ」
暁明さんによると、2025年は「もがく」という言葉で言い表せる一年で、2026年は「先が見えない感じ」が強いと言います。
「いまの若い人は、外に出たところで何をすればいいのか分からない。仕事がないし、はっきりした目標を持っている若者も本当に少ない。希望が見えない。チャンスが少なすぎるから。数年前なら起業するとか、何かを始めるとか、みんなに勢いがあった。でも今は違う。今は何に投資しても損をするだけだ」
仕事が見つからない、機会が少ない、収入が物価上昇に追いつかない。これは多くの一般市民がぶつかっている現実です。政府が出す統計では、国全体の雇用情勢は安定しているように見えますが、その「安定」は、現場で働く人たちの苦しさをそのまま映しているとは言いにくい状況です。
暁明さんは、農村経済の冷え込みについても語りました。地元では、若い人の多くが室内リフォームなどの仕事をしています。ところが不動産市場が沈んでいるため、家を買う人が減り、多くの現場が工事中断や未完成のまま放置される状態になっています。安定した収入がある人でも、今は貯金できないといいます。
「いまは一年ずっと働いても、月給が約7万円から12万円(3000元から5000元)くらいの人が多い。物価の上昇が速いためお金が残らない」
さらに、雇用が不安定になることで、社会の底のほうで別の悪い現象も生まれているといいます。暁明さんによると、村では十数人が通信詐欺に関わったとして逮捕されました。
「中には悪人で、他人を害し自らも害する者もいる。しかし、ほかに道がなくて、こういう筋の悪い仕事に流れていく人がいる」
経済の苦しさだけでなく、暁明さんは政治体制にも自分の見方があります。「いま多くの人の不満は、もう生活や景気だけにとどまらない。政治の腐敗はみんなが知っている。みんな不満を噴出させている。最高指導者から最下層の村役人まで、話題に上れば必ず腐敗の話が出る」
暁明さんは、友人から聞いた話として、入党には賄賂が必要だという話題にも触れました。「普通の人にとって入党は、理想や信念の問題ではなく、権力や利益を得るための道具になっている」
彼はまた、当局による社会統制が年々厳しくなっているとも語りました。農村でも都市でも、いわゆる「網格化管理」が進み、人々の行動は細かく見張られ、ほぼ記録されるような感覚があると言います。こうした管理と、当局が行う宣伝や教育が、人々の間に妬みや差別を生み、社会の冷たさと無力感をいっそう強めています。
将来について、暁明さんは、「みんな、何かが起きる気がしているが、具体的に何なのかは誰も説明できない。中国国民は我慢強いとはいえ、いまはバネを限界まで押しつぶしている状態に近い。いずれ避けようがなく、大きく跳ね返ることになるのではないか」と語りました。
この感覚は、暁明さんだけのものではありません。最近、他地域から来たブロガーが河南省の各地を歩いて取材した際、鄭州市のネット通販企業で働く女性社員の話からも、不景気の現実がはっきり見えてきました。
男ブロガー:さっきからずっと鄭州市では稼げないって言ってるよね。今日だけでも何度もその話をしているね。
女性社員:だって、本当に稼げないから。
男ブロガー:君だけじゃないだよね?周りの友だちも同じ感覚?
女性社員:みんなそうだよ!
男ブロガー:鄭州市って、一線都市だよね?
女性社員:友だちは基本みんなそういう感じ。私の友だちにもネット通販をやってる人がいる。社長が「来てくれ」って頼んだんだよ。知り合い同士でもあるしね。月給は約12万円(5000元)って条件だったのに、毎月ちゃんと払われない。毎月、半分しか出ないんだ。未払い分を催促すると、社長が「友だちだろ」とほのめかしてくる。
男ブロガー:話を聞いてると、鄭州市の雇用環境って、正直そこまで良くない感じだね。
女性社員:実際、良くない。
男ブロガー:本当に?
女性社員:本当だよ。
中国経済の大省である河南省は、公式データでは経済発展が著しいとされています。これは一般市民の実感とは大きくかけ離れています。
河南省もそろそろ道路を整備すべきじゃないでしょうか。穴だらけでデコボコの土道を見た瞬間、20年前に一気に戻された気分になりました。河南省の経済規模は全国で6位です。自分の目で見なければ、こんな路面状況が河南省の農村にあるなんて、絶対に信じられません。
(翻訳・藍彧)
