中国では、出稼ぎ労働者である農民工に対する賃金未払い問題が、20年以上にわたって根本的に解決されないまま続いています。年末を迎える中、ここ2週間ほどの間に、中国各地で農民工による賃金支払いを求める抗議行動が相次いで発生しました。中央企業や国家級の大型インフラ建設プロジェクトにおいても賃金が滞っているとする映像が拡散し、社会的な関心を集めています。

 聯合早報は12月17日、直近1週間だけで中国各地における賃金未払いをめぐる抗議事例が10件以上確認されたと報じました。抗議の手段は、道路や施設の出入口を封鎖する行為、工事の停止、動画や投稿を通じたネット上での告発など、多岐にわたっています。

 同紙が引用したネット上の映像によると、12月15日、広西チワン族自治区百色市の高速道路建設現場では、10人余りの労働者が賃金の支払いを求めて道路を封鎖しました。また、12月13日には湖北省漢川市の衣料品工場において、数十人の労働者が度重なる交渉にも進展がなかったとして、同様に道路を塞いで抗議行動を行いました。

 不動産市場の低迷が続く中、建設業界は賃金未払い問題が最も顕在化している分野の一つとなっています。黒竜江省大慶市の建設現場では、数人の労働者が未払い賃金を求め、12月14日から15日にかけてタワークレーンのブーム部分に登り、2日1夜にわたって留まり続ける様子が確認されました。

 また、建設業に従事するとみられる人物が17日にSNSへ投稿し、中央直属の建設企業が長期間にわたり工事代金を支払っておらず、「生活が成り立たない」と訴えました。コメント欄には、「2021年分の賃金すら受け取れていない」といった声も寄せられています。

 賃金未払いは建設業に限った問題ではありません。製造業の一部企業では、生産を維持しながらも、労働時間の削減や手当の引き下げといった形でコスト削減が進められ、労働者の不満が表面化しています。深圳市のあるテクノロジー企業では、今月に入り1週間以上にわたる大規模なストライキが発生し、数千人規模の労働者が、週5日・1日8時間労働制度の適用が実質的な収入減につながるとして抗議行動に踏み切りました。

 南洋理工大学の社会学副教授である占少華氏は、《聯合早報》の取材に対し、地方政府の財政圧迫と工事件数の減少という二つの要因が、農民工の賃金未払い問題を一層深刻化させていると指摘しています。政府が発注者となる案件が多い中、工事代金の支払いが滞れば、そのリスクは下請け企業や農民工へと直接転嫁されます。さらに就業機会の減少により、不利な条件を受け入れざるを得ない労働者が増え、契約未締結のまま働くケースも少なくありません。

 占氏は、「政府は複数の政策文書を打ち出してきましたが、経済全体の下振れがもたらす構造的な圧力の下で、農民工が自らの権利を守ることは、以前にも増して困難になっています」と述べています。

 さらに注目されるのは、賃金未払いが中小の民間企業にとどまらず、中央企業や国家級プロジェクトにまで及んでいる点です。12月1日、広州市に本社を置く中交第四航務工程局有限公司が、労働者への賃金を滞納しているとする映像が拡散されました。同社は1951年創立で、中国交通建設股份有限公司の全額出資子会社です。

 同日、西渝高速鉄道の四川省大竹区間でも賃金未払いが発生したとされ、労働者が工事用車両を道路に停めて抗議する様子が確認されました。ある男性は、「高速鉄道の工事現場で働いても金がもらえない」と語っています。

 また、中交不動産北京城市公司も12月1日、天津市河東区で賃金未払いを起こしたとされ、複数の労働者が会社の門前に横たわって抗議しました。同社は中国交通建設グループ傘下の総合不動産企業で、本社は北京にあります。

 賃金問題は公式な宣伝・放送機関にも及んでいます。12月18日に拡散された映像によると、中国共産党の放送システムに属する河南省新郷有線テレビネットワークグループの内部職員が、ネット上で賃金未払いの実態を告発しました。給与は1年間支払われておらず、社会保険料は4年間未納状態が続いているといいます。2018年以降、収入は年々減少し、2025年の帳簿上の月給は1000元、2024年の年間収入は6426元にとどまり、最も低い時期には月給が500元にまで落ち込んだとされています。

 こうした状況に対し、ネット上では次のような声も上がっています。
 「橋を架け、鉄道を敷き、高層ビルを建ててきた人々が、中国の都市のスカイラインを支えてきた。それにもかかわらず、最低限の賃金すら受け取れない。彼らは騒ぎを起こしているのではなく、命をつなぐための金、生きるための金、血と汗の代価を取り戻そうとしているだけだ。経済が下振れする2025年、中国全土で賃金未払いは制御不能な段階に入りつつある。」