12月17日の正午ごろ、山東省済南市で、静かな街の空気が突如として轟音と立ち込める水蒸気に切り裂かれました。暖房用配管が破裂し、地中から噴き出した大量の熱湯が瞬く間に周辺の路面を覆い尽くしたのです。現場には濃い白煙が立ち込め、行き交う車や歩行者の視界を完全に遮りました。この突然の事故により、周辺の複数の住宅団地で暖房供給がストップしました。事故後、当局による緊急補修工事が始まり、復旧作業は翌18日の深夜まで続く見通しとなりました。幸いなことに、現時点でこの事故による死傷者の報告は入っていません。

 厳しい寒さの中で起きたこうした事故は、中国では決して珍しいことではありません。わずか半月ほど前の12月1日には、遼寧省大連市でも暖房用配管が破裂し、1人が死亡、1人が負傷するという痛ましい事態となりました。また、2024年12月14日には安徽省淮南市で配管が局部的に破損し、通りかかった4人が負傷、衝撃で周辺ビルの窓ガラスが割れるといった被害も報告されています。さらに2024年1月には天津市でも大規模な破裂事故が起き、数千世帯がマイナス10度近い極寒の中で、復旧を待ちながら震える夜を過ごしました。冬の街角で突如として熱力が噴き出すこうした光景は、日本人にとっては少しイメージしにくいものかもしれません。

 日本の冬の暖房といえば、エアコンや石油ファンヒーターなどが一般的ですが、中国の北方地域には「集中供暖(セントラルヒーティング)」と呼ばれる巨大な社会インフラが存在します。このシステムは、いわば都市の「血液循環」のようなものです。街のどこかにある大型の熱電併給所が「心臓」の役割を果たし、水を高温・高圧の状態に加熱します。その熱湯が、道路の下に張り巡らされた太い鋼鉄製の「主血管」を通って各家庭へと送られます。家の中に設置された放熱器(ラジエーター)を熱湯が流れることで部屋が暖まる仕組みです。この方式は非常に効率的ですが、一方で配管が一度破裂すれば、影響は一世帯にとどまらず、街区全体や数万人の住民にまで及ぶリスクを孕んでいます。

 実のところ、日本にも「地域熱供給」という形で同様のシステムが存在します。新宿副都心や横浜みなとみらい21などのエリアがその代表例です。技術面で見れば、日中間には深い繋がりがあります。日本のメーカーが基幹設備で高い技術を持つ一方で、現在のグローバルなサプライチェーンにおいて、中国製の工業部品は不可欠な存在となっています。日本のインフラ整備においても、断熱配管やバルブ、熱交換器のパーツなど、中国で製造された製品が一定程度使われているとされています。また近年では脱炭素の流れを受け、ハイアール(海爾)やミデア(美的)といった中国の大手メーカーと技術提携や部品調達を行う日本企業も増えています。

 しかし、中国国内で頻発するこれらの事故は、日本にとっても決して「対岸の火事」とは言い切れない課題を突きつけています。中国製品の品質に対する懸念は以前から指摘されていますが、真に警戒すべきは、日本のインフラの奥深くに潜むサプライチェーンのリスクです。もし日本の熱供給システムや次世代インフラが、品質管理に不安を抱える背景を持つ部品や技術に過度に依存し、かつメンテナンスの体制が不十分なまま運用されれば、将来的に日本でも同様のトラブルが露呈する可能性は否定できません。

 目覚ましい発展を遂げた都市の舞台裏で、地中の「毛細血管」は今、確実に老朽化のピークを迎えています。済南、大連、天津、淮南で起きた事故の多くは、配管の疲労とメンテナンスの遅れを示唆しています。成熟社会へと歩みを進める中国の都市が直面している「インフラの更新」という難題は、そのまま日本が自らの足元を見つめ直すべき材料でもあるはずです。「大いなる建設」の時代が過ぎ去った今、見えない地中のリスクにどう備えるべきか。中国で噴き出す熱水と白煙は、日本に対しても、事態が悪化する前に万全の備えを整えることの重要性を静かに問いかけています。

(翻訳・吉原木子)