今年に入り、中国経済の冷え込みは統計上の数字だけにとどまらず、すでに一般市民の生活にも広く影響を及ぼし始めています。中でも真っ先にその影響が表れたのが、伝統的な製造業の大幅な落ち込みです。中国税関総署が公表した最新データによると、今年1〜11月の間、かばんや靴、玩具、照明器具などの労働集約型産業の輸出が軒並み減少し、多くの品目で10パーセントを超える下落となりました。携帯電話の輸出も11パーセント以上減っています。中国の外需を長年支えてきた衣料品産業も深刻な打撃を受けており、業界団体は、生産や輸出、利益など主要な指標が複合的に悪化し、経営環境は「かつてないほど厳しい」と指摘しています。

 国際市場の需要低迷や米国の関税政策の不透明さ、国内消費の伸び悩みは、伝統製造業にとって長期的な重荷となっています。さらに人民元相場の変動、競争の激化、原材料や物流コストの上昇が続き、外需が弱い状況下で企業が利益を維持することは一段と難しくなっています。

 こうした環境の中で、深刻な影響を受けているのは輸出データだけではありません。多くの製造企業が静かに海外への移転を進めており、その代表格が東南アジア、特にベトナムです。珠江デルタ地域の工場労働者の月給はおよそ13万2千〜15万4千円なのに対し、ベトナムでは同様の仕事が約6万6千円前後にとどまります。この十年で中国国内の工業用地の賃料は三倍に上昇し、環境規制も年々厳しくなる中、中小規模の製造業にとって中国での操業はますます負担の大きいものになっています。一方でベトナムなどは大規模な税制優遇措置や固定資産の輸入税免除、さらには多数の自由貿易協定の締結など、企業にとって魅力的な条件を整えており、米欧への輸出時の関税面でも優位性が高まっています。こうした「コストの低さ」「政策的な後押し」「貿易面での利便性」が重なり、中国の中低価格帯製造業が東南アジアへ流出する動きは加速しています。

 企業の移転が始まったとき、最も大きな痛手を受けるのは資本ではなく労働者です。広東省恵州市で29年間操業してきたソニー精密が今年撤退を決めた際には、三万人以上の労働者が一瞬で職を失い、周辺の商店街も急速に活気を失いました。大規模工場の撤退は雇用を奪うだけでなく、地方都市の経済循環そのものを揺るがすものです。こうした製造業の流出は雇用の急減を招き、今年は例年よりもはるかに早い段階で帰郷ラッシュが発生する結果となりました。

 広州市の海珠区にある康楽村と鷺江村は、中国最大規模の「製衣村」として知られます。例年であれば長時間の残業が常態化し、日雇い市場では求人が途切れることはありませんでした。しかし今年は状況が一変し、仕事を探す人々で市場はぎゅうぎゅう詰めになる一方、求人はほとんど出てきません。多くの労働者が仕事を得られず、家賃の支払いすら難しくなっています。テントで寝泊まりする人、橋の下で夜を明かす人、帰りの交通費すらなく徒歩で故郷を目指す人までいます。ある縫製工は「地元の仲間はもう限界です。家賃も払えず、仕事もなく、どうすればいいのか分からない」と語ります。別の労働者も「湖北出身の服飾工が多いが、今は帰郷にも手続きが必要で、どこにも動けなくなっている」と打ち明けます。

 今年の帰郷ラッシュでは、例年にない光景が広がっています。旧正月を迎える前にもかかわらず、多くの駅では大きな荷物を抱えた中高年の男性やスーツケースを引く若者で溢れています。一部の研究機関は、今年はおよそ一千五百万人が帰郷後、再び都市部へ戻らない可能性があると推計しており、その中には都市での定着を目指してきた大学卒業者も少なくありません。帰郷が意味するのは「年越しのため」ではなく「都市での生活が成り立たない」という現実です。

 多くの労働者にとって、いま直面している困難は「働くのが大変」というレベルではなく、「そもそも働く場所がない」ということです。ある男性は三ヶ月間失業し、毎月約15万4千円の住宅ローン、約11万円の生活費、約2万2千円の水道光熱・ネット代が重くのしかかり、「今年は本当に誰もお金がなくて、服も買えない。生活用品も節約するしかない」と語ります。都市部では出費を抑えるため、橋の下や廃屋、簡易テントで生活する人が増えており、その中にはデリバリー配達員、大企業をリストラされた人、工場での職を失った人など、社会を支えてきた普通の市民が含まれています。本来、都市の基盤を担ってきた人々が、いまは都市の影の部分へ追いやられているのです。

(翻訳・吉原木子)