12月6日の夜、広州市白雲区にある駐車場で突然大規模な火災が発生しました。夜空を赤く染めるほどの炎が一気に立ち上がり、十数回にも及ぶ爆発音が響き渡り、周辺一帯が揺れるほどの衝撃が走りました。現場を撮影した複数の動画には、炎が瞬時に高く跳ね上がり、爆発音が途切れることなく続き、人々が「まだ爆発している!」「また来た!」と叫ぶ様子が映っています。しかし、この混乱と恐怖に満ちた光景とは対照的に、中国当局の発表は驚くほど落ち着いたものでした。発表によると、燃えた面積は約27坪(約90平方メートル)、死傷者はなく、火は1時間後に鎮火したとしています。
現場の緊迫感と政府発表との大きなずれから、「なぜここまで火災が頻発するのか」が世論の中心話題となりました。さらに深刻なのは、この火災が中国各地で続発する火災問題の本質を再び浮き彫りにしたことです。急速に市場が拡大する電動車産業の影で、安全対策が追いついていないという、より根深い危険性が改めて示されたのです。
火災が続発する本当の原因
広州市の駐車場火災を、時間と地域の広い枠組みで見渡してみると、この出来事が決して単発の事故ではなく、相次ぐ火災の一例にすぎないことが分かります。
わずかこの1か月だけで、中国では大きな注目を集めた火災が少なくとも10件以上発生しています。
12月1日、広州市海珠区で大規模火災が発生し、多数の電動バイクが焼失
11月27日夜、広西チワン族自治区北海市(ほっかいし)の僑港(きょうこう)で漁船が燃え、周囲の8隻に延焼
11月21日未明、浙江省慈渓市(じけいし)の大学寮で火災が発生、廊下が黒煙で充満したが警報器は作動せず
11月21日、貴州省貴陽市の職業学院図書館で火災が発生、原因は老朽化した配線とみられる
10月26日、河北省邯鄲市(かんたんし)の小規模託児施設で火災が発生し、27人の生徒が室内に閉じ込められる
さらに最も衝撃的だったのは、11月26日に香港の宏福苑で起きた大火災です。中国当局は159人の死亡を確認したものの、市民の間では実際の犠牲者数ははるかに多いのではないかの疑念が広がっています。
これらの火災は、住宅、学校、道路、港湾、公共施設など、あらゆる都市空間で発生しています。表向きの原因は老朽化した電気配線、燃料漏れ、ガス爆発、不適切な操作などそれぞれですが、これほど短期間に類似の事故が立て続けに起きれば、果たして単なる偶然なのか、それとも社会全体が抱える構造的な危険が同時に悪化しているのかと疑わざるを得ません。
浙江省慈渓市の大学寮火災では、黒煙が建物内に充満しているにもかかわらず、消防警報器はまったく作動しませんでした。邯鄲市の火災では、20人以上の子どもが狭い部屋に押し込まれ、しかもドアは内側から施錠されていました。これらは単なるミスではなく、長年にわたり安全対策が軽視されてきた結果です。
都市の発展に伴い、大量の可燃物や危険物が特定の区域に集中するようになりました。特に電動スクーターの急速な普及によって、街中の可燃物の密度は急激に高まっています。電池の劣化、粗悪な充電機器、無秩序な保管環境など、本来は生活を便利にするはずの新エネルギー製品が、むしろ火種になりやすい状況を生み出しているのです。
今回の広州火災について、当局はガスボンベを積んだピックアップトラックが爆発したと説明していますが、現場の目撃者は電動バイクが出火源だったと証言しています。実際、ここ数年の中国都市部で最も多い爆発・火災の原因は、まさに電動車のバッテリーです。
充電バッテリーが都市火災の新たな中心リスクに
全国で大規模な火災が相次ぐなか、ある問題が急速に注目を集めています。それは、電動スクーターバッテリーの品質低下と、メーカーによる安全軽視が進んだ結果、都市そのものが移動式の火薬庫のような状態にしているという問題が急浮上しています。
12月1日に広州市海珠区で起きた火災では、事故の関係者が、衝突で漏れた燃料に引火した車が道路沿いに並んでいた電動スクーターを次々と燃やし、わずかな時間で大量の電動スクーターが焼け落ちたと証言しています。ネット上では、燃え広がる火の様子を見て「新エネルギー車は危険すぎる」とか、「劣化したバッテリーを処分しない限りすべてが爆発物だ」といった声が相次ぎました。
では、なぜ中国の電動スクーターはこれほど火災を引き起こしやすいのでしょうか。問題は単なる製品の老朽化だけではなく、産業構造そのものに長年残された深刻な欠陥があります。
中国の新エネルギー市場は競争が激しく、各メーカーは極端な低価格でシェアを奪い合っています。電動スクーターに使われるリチウム電池は車両全体の3割から4割を占めるほど高コスト部品であるため、バッテリー費用をいかに削るかが企業の生き残りを左右します。その結果、品質の低いバッテリーが大量に市場へ流れました。
生産台数は急増しているにもかかわらず、国家基準や安全規制は追いついていません。中には安全性の検証が不十分なまま出荷するメーカーもあり、そもそもバッテリーの安全試験体制を整えていないブランドも存在します。
さらに深刻なのは、事故が起きてもメーカーが責任回避を優先し、安全性向上に取り組まないケースが多いことです。
加えて、中国では使用済みバッテリーを適切に回収する仕組みが未整備のため、多くの劣化したバッテリーが宅配用バイク、フードデリバリー車両、シェア電動自転車などで使われ続けています。これらの車両は長期間・高負荷で運用されるため、バッテリーの発熱や劣化が進みやすく、火災を引き起こすリスクがさらに高まります。
都市の中を数十万台もの移動式の火種が走り回る状況では、軽い衝突、過充電、小さなショートでも大規模火災へと発展する可能性があります。
火災頻発が示す重大な警告
繰り返される大規模火災は、単なる安全問題ではなく、都市のガバナンス能力の低下や、現在の発展モデルが抱える行き詰まりを浮き彫りにしています。
広州市の火災、漁港で8隻が焼失した事故、香港宏福苑の大火などに共通しているのは、都市が突発的災害に対応する力を徐々に失っていることです。消防通路の占拠、故障した警報設備、過密な居住環境、老朽化した配線の放置など、本来最も基本であるべき安全体制が、経済的な圧力や当局の怠慢によって次々と崩れつつあります。
中国は今や世界最大の電動車市場となりましたが、その安全規制は大幅に遅れています。バッテリー品質の厳格な基準作り、強制的な回収制度の整備、事故原因と責任の透明化などは、都市の安全を守るために不可欠です。こうした対策が整わないまま電動車がさらに増え続ければ、今後、都市部ではより頻繁で、より制御が難しい大規模火災が発生する恐れがあります。
(翻訳・藍彧)
