中国では、若者の働き口が急速に消えています。
表向きには「失業率17.7%から改善」と発表されていますが、実際の現場はまったく違います。仕事が見つからず、日雇いを奪い合い、駅で寝泊まりする若者まで現れているのです。
数字では見えない働けない現実が、静かに広がっています。
なぜここまで追い詰められているのか、若者たちが語る声から、中国経済の深刻な変化が浮かび上がります。
江蘇省蘇州市昆山で日雇いの短期労働をしている29歳の馮明さん(仮名)は記者にこう語りました。「以前は公園で寝ていたが、今は公園での宿泊が禁止された。今は駅の2階入り口付近で寝ている。あそこは横になれるスペースがあり、公園のように人の迷惑にならない。公園だと朝に散歩やランニングをする人が多いので、自分が寝ていると相手も気まずいだろう。駅で寝ている人は本当に多い。みんな仕事が見つからず、家賃も払えないから、節約のために外で寝るしかない。冬は寒いが、みんな布団を買って寒さをしのいでいる」
「駅で寝泊まりする生活をすでに数年続けているが、最近は仕事が見つかりにくく、たまに日雇いの短期間労働をしている。しかし今は日雇いの仕事も取り合いになり、報酬もどんどん下がっている。かつて商売で8000万円(400万元)以上を失い、結婚もしていない。もう十年以上、実家には帰っていないし、とっくに連絡も取っていない。俺一人が食べられればいいんだ」
代行運転をする人が酒飲みより多い
江蘇省蘇州市で営業職として働く楊さんは、昼は本業、夜は代行運転のアルバイトをしています。楊さんは記者にこう話しました。
「今は本当に稼ぎにくい。代行運転も大変で、夜7時から11時まで働いても、せいぜい約800円〜約1000円(40~50元)しか稼げない。今の状況がどれほど厳しいか分かるだろう。代行運転をする人の方が、酒を飲む人より多いくらいだ」
「私の周りの代行ドライバーには教師や医者、料理人など、昼は普通の仕事をしている人ばかりだ。生活のために夜は外に出て稼ぐのだが、今はこんな苦労してもまともに稼げない。本当に大変だよ」
楊さんは、「代行ドライバーの仕事は世間から見下されがちで、客の機嫌も窺わなければならないし、酔っ払いの状態は様々だ。それでも今の状況では体裁なんか気にしていられない。お金を稼げて家族を養えることが大事だ」と語りました。
「昼はフードデリバリー、夜は代行運転。今日は新規登録したばかり、代行運転がどんな感じか試してみる。車がなくても働ける代行ドライバーの出動だ。何だかんだ言っても、昔は軍隊にいた時に師団長の運転をしていたこともあるからね」
「人生初の代行運転の仕事が終わった。今日の客はいい人で、いいタバコまで一本くれた。今はバスに乗って帰るところだ。目の前がバス停で、どの路線に乗っても家の近くまで行ける」
「もうすぐ家に着く。さっきの代行の1件は5.2キロで約600円(30元)稼げた。今日が初めての代行だったが、代行の方がフードデリバリーよりずっと楽だと感じた。楽々と600円稼げるなら悪くない。明日も続けて頑張るつもりだ」
職を失うことを恐れる現役社員
広西省に住む30歳手前の若者・剛さん(仮名)は記者にこう語りました。
「今は多くの人が将来にまったく希望を持てなくなっている。友人もずっと自分の未来を心配している。2019年当時は、皆の目に輝きがあり、失業も仕事が見つからないことも全く恐れていなかったが、今は違う。友人はひどく不安で、会社の同僚も同じだ。いつリストラされるか、いつ失業するかと怯えながら、必死で働いている」
「友人は週末も休まず働いている。会社が強制的に残業をさせているわけではない。むしろ業績が良い部類の企業で、多くの社員が自ら残業を選んでいる。友人は毎日くたくたになるまで働き、同僚たちも同じ状態だ。深夜まで残業し、半年近く休みを取っていない人もいる。それほどまでに頑張る理由はただ一つ、仕事を失うのが怖いからだ」
「友人の同級生の多くは仕事を見つけられずにいる。今働けていること自体が本当に貴重だ。だからこそ必死に働いて会社に残ろうとする。誰も脱落したくないのだ」
仕事探しの悩み
「仕事を探しに出ないと諦めきれないが、いざ探し始めると死にたい気持ちになる。まともな会社は35歳を過ぎると相手にしてくれない。私は38歳という微妙な年齢だ。一体どこで仕事を探せばいいんだ?夜勤は体がもたないからできない。給料が安い仕事はやりたくないし、給料が高い仕事は採用してくれない。どうすればいいのか、本当に分からない」
広東省で大学を卒業したばかりの陳さんは、専攻は機械電子工学だといいます。
彼は海外メディアにこう語りました。
「今は新卒が仕事を探すのが本当に大変だ。多くの企業は経験者を求めるが、新人に経験なんてあるわけがないし、経験を積む機会すら与えてくれない。応募者は多く、競争も激しい。条件の良い仕事を見つけるのは本当に難しい状況だ」
湖南省出身の新卒大学生・苹さん(仮名)は、もともと長沙市の大学に通っていたが、現在は深セン市でプログラマーの仕事を探しています。
「仕事は本当に見つからない。多くの企業がリストラしていて、採用どころではない。一か月以上探し続けているが、今は全国どこも同じような状況だ」
「今は大学3年の段階で将来の仕事を計画し、4年生の実習期間には正社員登用の可能性があるポジションを狙うのが一般的だ。私も卒業証書を受け取る前から働き始め、5月から10月末まで勤務した後に辞職した。辞めてからは実家に帰る勇気がなくて、親にも言えない。ずっと『働いているよ』と嘘をついている」
「AI関連など良い会社もあるが、そういう会社に入るのは簡単ではない。ほとんどが大手企業で経験を積んだ人を採用するからだ」
「今も履歴書を出し続けているが、どれも条件に合わないと言われ、卒業したばかりで経験がないという理由で断られている。数えきれないほど応募したが、本当に卒業と同時に失業状態だ。とても不安で、今は『仕事』という文字を見るだけで吐き気がする」
将来への期待について問われると、苹さんはこう答えました。
「今は失業手当もない。失業保険は一年以上納めないともらえない。政府からの支援はほとんどない」
2022年以降、中国の大学卒業者数は毎年1000万人を超えています。
2022年は1076万人、前年比167万人増。
2023年は1158万人、前年比82万人増。
2024年は1179万人、前年比21万人増。
2025年は1222万人、前年比43万人増。
今年11月20日、中国の官製メディアは、中国の2026年卒業予定者数が過去最高を更新する見通しで、1270万人に達し、前年比48万人の増加と報じています。
清華大学法学院の博士で、インフルエンサー「鹤鹤博士THU」は「この人数だと、学生たちのプレッシャーが本当に大きすぎて、見ていてこちらまで怖くなるよ」と述べました。
(翻訳・藍彧)
