12月4日以降、深センの易力声科技有限公司で大規模な集団抗議が発生しました。およそ3000人のライン工が一斉にストライキを行い、会社が強制的に「残業なし」の制度を続け、長期間にわたって「週5日・1日8時間」の固定勤務を続けているため、収入が大幅に減少し、生活が成り立たなくなったことに抗議しています。ストライキはすでに2日間続き、社会的な注目を集めています。

 中国のSNSに投稿された動画には、4日の朝、青い作業服を着た数千人の労働者が工場の正門付近に集まり、ストライキを行う様子が映っています。労働者たちは搬出トラックを止め、「補償を」「最後まで続ける」と声を上げ、会社側に対応を迫りました。

 労働者の要求は単純で明確です。生活維持に必要な収入を確保するために残業を再開するか、あるいは勤続年数に応じた法定基準の補償を行うことのどちらかを求めています。

 抗議の最中には警備員との衝突も発生しました。警察が労働者の一人を連行しようとした際、周囲の労働者が警察を取り囲む場面も確認されています。12月5日の朝までストライキは続き、当局は多数の武装警察を現場に派遣して対応にあたりました。

 今回の事態のきっかけとなったのは、易力声が3日に発表した社内公告です。公告によれば、海外需要の低迷で注文が約20パーセント減少しており、今後数か月にわたって「週5日・1日8時間勤務」を継続し、残業は行わないと通知しました。

 会社が提示した補填策は、12月に残業がない従業員に対し、約4,400円(200元)〜約6,600円(300元) の生活補助を一度だけ支給するというものでした。

 しかし、労働者が「週5日8時間勤務」を強く拒否している理由は、「休みたくない」からではありません。複数の従業員によると、10月以降、残業が完全に取り消されたことで、月収は基本給で 約44,000円(2000元)以下 に落ち込み、社会保険料を差し引くと約22,000円台(1000元台) しか残らず、深セン市の最低賃金である約55,440円(2520元) を大きく下回る状況になっているといいます。

 「深センで月給約44,000円(2000元)では一人暮らしすらできない。まして家族を養うことなど不可能だ」。労働者にとって残業代は生活そのものを支える唯一の収入源となっています。

 多くの労働者は、会社が説明する「注文減少」は口実にすぎず、実際にはベトナムなど他地域の工場に注文が移されていると考えています。会社が残業を禁止し「週5日8時間勤務」を続ける本当の目的は、給与を限界まで低く抑え、労働者が自発的に辞めるよう誘導し、法律で定められた「N+1」の退職補償を支払わずに済ませるためだと疑っています。

 SNS上には次のような従業員の投稿が相次いでいます。
 「注文がないわけではない。私はここの従業員だ。江西、恵州、ベトナムにも工場がある。今は別の会社に買収されたが、人員削減が目的で、補償金を払いたくないだけだ」
 「仕事が減ったのではなく、以前は11時間で2000個を生産していたのに、今は8時間で5000個を求められている。これは辞めさせるためだ」
 「週5日8時間で消耗させ、自分から辞職するのを待っているだけだ」

 こうした抗議を受け、易力声は4日の午後、新たな通知を出しました。会社によれば「一部の従業員代表」と協議した結果、今後数か月間の補助金を約8,800円(400元)〜約11,000円(500元) に増額し、12月と翌1月には週末の残業を「一部」再開するとしています。同時に、全従業員に対し5日の午前8時までに復帰するよう求め、従わない場合は無断欠勤として処理すると通告しました。

 しかし、この提案は労働者から即座に拒否されました。数百元(数千円)の補助では生活改善には程遠く、会社の「残業再開」という約束自体を信用できないとする声が強いからです。さらに労働者によれば、会社が協議したという「従業員代表」は、実際には社員による選挙で選ばれた人物ではなく、会社側が任意に決めたもので信頼できないとされています。

 そのため労働者たちは引き続き、残業を再開して最低限の収入を確保すること、または勤続年数に基づく合法的な補償を行うことを求め続けています。

 3000人規模のストライキは大きな反響を呼び、ネット上には次のようなコメントが次々と投稿されています。
 「これが中国の普通の労働者の給与だ。経済大国と言われても実態はこれだ」
 「最低賃金は2000元台、つまり 約44,000円台(2000元台) なのに、社会保険の賦課基準は 約154,000円(7000元)。本当に不可解な国だ」
「労働者はよく分かっている。残業があれば 約66,000円(3000元) 多く稼げるが、基本給を上げたら工場がもたない」
「彼らが基本給の引き上げではなく『残業させてくれ』と訴えるのは、労働者が愚かだからではなく、賃金制度が巧妙に設計されているからだ」

 中には「中国は混乱に向かっている。早めに備えたほうがいい」と不安を示す声もあります。

 今回のストライキは、現在の中国製造業が抱える構造的な問題を象徴しています。労働者の基本給は極めて低く、生活は長時間の残業によってようやく支えられています。残業がなくなれば生活基盤そのものが崩れてしまうという深刻な矛盾が存在しています。制度上は「週5日8時間」が標準であっても、現実の労働環境ではそれが生活破綻を意味してしまうのです。

 易力声の事例は一企業の問題にとどまらず、中国製造業全体に共通する課題を浮き彫りにしたと言えます。

(翻訳・吉原木子)