12月1日正午ごろ、広州市海珠区の工業大道北で大規模な火災が発生し、周辺一帯が一気に炎に包まれました。火勢は瞬く間に広がり、黒煙が街の上空を渦を巻くように立ちのぼり、道路沿いには赤い火の帯が走りました。現場の目撃者によりますと、衝突した車両から漏れたガソリンが地面をつたって延焼し、路肩に密集して停められていた電動バイクの列に次々と燃え移ったといいます。また、「車が突然爆発した」という証言もネット上で出ていますが、詳しい原因は確認されていません。人々が駆けつけた時には十数台の電動バイクが鉄の骨組みだけを残して焼け落ちており、広東省のネットユーザーの一人は「一日働いて戻ったら、愛車が灰になっていた」と嘆きました。
SNSに投稿された映像では、地下鉄の出口付近で一台のトラックの車底から突然炎が吹き出し、数秒のうちに火勢が急激に強まり、膝ほどの高さまで燃え上がる様子が写っています。車のドアは開いたままで、乗員はすでに避難したとみられますが、現場では誰も火を抑えることができませんでした。炎はまずトラックを包み込み、次に隣に停められていた白い乗用車にも延焼。さらに、道路脇に密集して並んでいた電動バイクに次々と火が移り、火の帯となって広がり、数十メートルの区間が一面炎に包まれました。
現場では炎が通り全体を赤く照らし、黒煙が空いっぱいに立ちこめ、多くの通行人が突然の熱風に驚いて走って逃げました。付近の商店主によりますと、午後1時40分ごろ最初の電動バイクが燃え始め、わずかな時間で列全体が次々と破裂するような音を立てて燃え広がったといいます。消防車が到着し、明火がほぼ鎮圧されたのは午後2時10分ごろでしたが、その後も一部のバッテリーから煙が上がり続けました。また、現場近くには電動バイク用のバッテリーストッカーが設置されており、高温下ではリチウム電池が二次的な反応を起こしやすいため、消火活動が難航したと指摘されています。
中国の自媒体「熱搜散歩人」は、こうした事故について「物理的要因と化学的要因が重なる形で連鎖的に発生する」と分析しています。物理的には、燃料漏れが初期火源となり、道路脇に密集する電動バイクが可燃物として連続的に並んでいることが延焼を助長します。化学的には、リチウム電池が衝撃や高温、損傷を受けて“熱暴走”に入ると、温度が数秒で200℃以上に上昇し、大量の可燃性ガスが放出されるため、爆燃が連続して発生しやすくなります。こうした特性から、電動バイクの火災はガソリン車より消火が難しく、複数台が連続して燃え始めると短時間での制御が極めて困難になります。
今回の広州の火災は、決して単発の出来事ではありません。わずか2か月前の10月5日には、福建省寧徳市三沙鎮の海辺の駐車場で、新エネルギー車「アヴィータ06」が停止中に突然車底から煙を上げ、約1分で車全体が爆燃する事故が起きました。使用開始から2か月足らず、走行距離約1066キロの車でした。強風と車両の密集も相まって火は周囲に広がり、少なくとも7台が焼損、その中には高級車も含まれていました。車主は「3分で車が空っぽになった。何もできなかった」と話しています。
複数の統計によりますと、2024年に全国で発生した電動自転車火災は2万件を超え、7割が充電中または駐輪中に起きています。湖北省恩施では、暴走したリチウム電池が42台の電動バイクを連鎖的に燃やし、福建省莆田でも18台が焼失する事故が起きています。これらの数字は、火災が「遠いリスク」ではなく、都市のあちこちに潜む日常的な危険であることを示しています。
広州の火災後、SNSには「一日働いて帰ろうとしたら、通勤用のバイクが灰になっていた」「まるでドミノ式の延焼だ」といった声や、「なぜトラックの運転手は車を動かさなかったのか。保険が関係しているのでは」という憶測も寄せられました。そこにはユーモアもあれば、生活の重圧に対する庶民の無力感もにじんでいます。電動バイクで通勤する都市の労働者にとって、こうした突然の火災は、一日の努力が一瞬で失われる現実であり、都市の便利さの陰に潜む危険を改めて認識させる出来事となりました。
今回の2件の火災は、現代の交通手段が高密度の都市空間でいかに脆弱であるかを示しています。鉄筋コンクリートに囲まれた都市では、わずかな火種が多くの生活を揺るがす可能性があります。そして何より重要なのは、こうした危険が今、静かに、しかし確実に日常化しつつあるという現実です。
(翻訳・吉原木子)
